ジョージ・バランシン振付『セレナーデ』ストーリー、歴史、作品解説
jazz

バレエ『セレナーデ』の内容は?
特徴は?
見どころは?

チャイコフスキー作曲の『セレナーデ』 。

この曲は、日本人にも馴染みがあると思います。

どちらかというと、コミカルな印象が強いかもしれません。

記事を書いているのは……

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。

kazu

今回は、ジョージ・バランシン振付『セレナーデ』の作品解説です。

※ 3分ほどで読み終わります。

コミカルな曲じゃないの?

ジョージ・バランシンが初めてアメリカで発表したバレエ作品、『セレナーデ』。

17人の女性ダンサーが天窓の日差しを眩しそうに手でさえぎるような動きからはじまります。

そして、いっせいにつま先を横にバッと開きます。

パシフィック・ノース・ウエスト・バレエ団より。

日本では、この曲にコミカルな印象を与えた CM があります。

それが、こちら。

「オー人事」の CM です。

バレエ作品よりも CM を先に知っている人は、コミカルなイメージが先行しています。

流れているのは、第1楽章冒頭の、たった 4小節ほど。

たった数秒なのに、強烈にフレーズが頭に残ります。

ジョージ・バランシン振付『セレナーデ』

世界中のバレエ団で上演されている作品です。

日本では新国立劇場バレエ団、東京バレエ団、NBAバレエ団が上演権を持っています。

1935年 3月1日:初演

アメリカン・バレエ(ニューヨーク・シティ・バレエ団の前身):ニューヨーク・アデルフィ劇場

振付:ジョージ・バランシン
美術:ガストン・ロンシャン
衣装:ジャン・リュルサ

上演時間:33分

初演は 1935年です。

その前年の 1934年、バレエ学校(スクール・オブ・アメリカン・バレエ)の生徒たちが最初に踊りました。

ジョージ・バランシン:バレエからテーマをなくした偉大な振付家

バランシンはソ連から亡命し、ヨーロッパに渡ります。その後、ヨーロッパからアメリカに移り住みます。

この時代のアメリカにおいて、メジャーとは言えないバレエ。

バランシンはまずバレエダンサーを育てることから始めます。

ダンサー候補を集めるときも「動きを見ることなく、写真だけで選んだ」そうです。そうしなければいけないほど、バレエは知られていませんでした。

ネオクラシック

『セレナーデ』は 4つのパートに分かれています。

3つ目のパートの終盤、長い髪の毛をほどいた女性ダンサーが登場します。

髪をほどくということは、当時かなりの挑戦でした。

型を破っていくバレエスタイルは、「ネオクラシック(新しいクラシック)」というジャンルに分類されます。

バレエに馴染みのないアメリカだったからこそできた挑戦、と言われています。

あらすじ

バランシンはバレエの概念を変えました。

具体的なストーリーをなくし、踊りで音楽を表現する方法を追求していきます。

『セレナーデ』にも具体的な物語はありません。

出演人数

26人

名前のある役
・ロシアン・ガール
・ワルツ・ガール
・ダーク・エンジェル

具体的な物語はないものの、「希望が込められた作品」と解釈されています。

もしいま「自分は何も持っていない、教養がない、外見に自信がない、と感じていても、いつでも変えることができる」。

このようなメッセージが込められています。

裏話

『セレナーデ』は、女性ダンサーの入れ替わりが多い作品です。

サンフランシスコバレエ団より。

こんな理由があったと伝えられています。

ニューヨークに到着したばかりのバランシン。作品を発表するために、お金を援助してくれるパトロンのような存在が必要です。

出演するダンサーは、パトロンの娘というパターンが多かったようです。お金持ちである彼女たちはいろいろな習い事をしています。

バレエもその 1つでした。

バランシンは彼女たちを出演させる代わりに、資金の援助を受けていたそうです。

ただ、彼女たちは忙しく、リハーサルに参加できないこともありました。

1回目のリハーサルには 17人が参加。

2回目になると 9人、3回目は 6人という状況。

バランシンは、穴を埋めることなく、参加人数に合わせ振付を行います。

そのため、『セレナーデ』はお嬢様たちに合わせ、ダンサーの出入りの激しい作品となっています。

かなりストイックなイメージのあるバランシン。

「こんな状況を許していたのか」と、とても意外なエピソードです。

初演時

現在上演されている『セレナーデ』は高度なテクニックがたくさん入っていますが、初演時はバランシンの振付を踊りこなせるダンサーがいなかったため、ソロの役、男性とペアの踊り(パ・ド・ドゥ)がありませんでした。

その後、ソロの振付が追加されました。

このソロがのちに 5人に分けられ、最終的に今のかたちである「ワルツ・ガール」「ロシアン・ガール」「ダーク・エンジェル」の 3人となりました。

『セレナーデ』は何度も何度も改訂されています。

振付だけでなく、舞台装置、衣装が何度も変更されています。

セットが組まれたり、ダンサーが帽子をかぶっていたこともありました。

かなりの試行錯誤をくり返し、現在の形になっています。

曲順が変わっている

『セレナーデ』は、チャイコフスキーが 1880年に作曲しました。

4楽章の構成

第1楽章:ソナチネ(9:31)
第2楽章:ワルツ(3:54)
第3楽章:ロシアン・ガール(7:51)
第4楽章:エレジー(9:11)

第1楽章冒頭。重い始まりは「チャイコフスキーの内的衝動を強く表現している」とされます。音楽が進んでいくと、穏やかな曲に変化します。

バランシンは、第3楽章と第4楽章を入れ替えて使用しています。

そのため本来は「第3楽章:ロシアン・ガール」が 4曲目になります。

第3楽章に第1楽章冒頭の印象的なフレーズが入っていて一度おさまります。

その後「第4楽章:エレジー」で余韻のある終わりになっています。

映像作品

『セレナーデ』の映像作品はかなり少ないです。

少し古い動画の紹介です。

バランシン最後のミューズであるダーシー・キスラー主演です。

16歳でニューヨーク・シティ・バレエ団に入団し、18歳でプリンシパルになった実力の持ち主です。

kazu

今回は、『セレナーデ』についてでした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめています。ぜひご覧ください。