エミー賞で大きな話題となり、あまりにも豪華な俳優陣が集結していることでずっと気になっていた作品『Big Little Lies』(ビッグ・リトル・ライズ)。
本作は、ハイクオリティなドラマ制作で知られるプレミアムチャンネル「HBO」の作品ということもあり、放送コードに縛られない大胆で過激な描写と、非常に重厚な脚本が特徴の、なかなかの問題作です。
今回は、本作のあらすじや豪華なキャスト陣の魅力、そして僕自身の経験を交えた考察や作品の背景にあるメッセージをじっくりと紐解いていきます。
元劇団四季、テーマパークダンサー。社割を使えたときは週2回 映画館へ行っていました。最近はネットで映画をたっぷり。
※ 3分ほどで読み終わります。
『Big Little Lies』(ビッグ・リトル・ライズ):作品概要
1話50分、全7話(シーズン1)という構成のため、かなり観やすいボリュームです。7話の時点で一定の答えが出るため、視聴後の納得感が強いのも魅力です。
8,500円前後です。
『ビッグ・リトル・ライズ』作品情報
本作を語る上で外せないのが、制作を手がけているのがアメリカのプレミアム有料チャンネル「HBO」であるという点です。
海外ドラマファンならこの名前を見ただけで期待値が跳ね上がると思いますが、HBOは『ゲーム・オブ・スローンズ』や『セックス・アンド・ザ・シティ』など、数々の歴史的名作を世に送り出してきた制作会社です。民放とは違ってスポンサーの制約を一切受けないため、予算や表現の限界にとらわれない、映画クオリティの重厚な脚本を作れるのが強みです。
芸術性の高い過激で大胆な描写、そして妥協のないリアルな人間模様。これらは、HBO制作だからこそ実現できたクオリティです。
また、選曲が素晴らしく、挿入されているすべての曲に意味が込められているかのように作品の世界観へハマっています。
あらすじ:ママたちの嘘と裏の顔
舞台はカリフォルニア州モントレーの高級住宅街。立ち並ぶ豪邸、ビジネスで成功を収める人々、そして可愛い子どもたち。すべてが完璧に見えるセレブライフ。
そんなある日、子どもたちの通う小学校で不思議な事件が起こります。
子どもたちの些細なトラブルをきっかけに、親たちのトラブルへ発展。嘘、ウワサ、嫉妬が絡み合い、問題はどんどん深刻化していきます。
あぶり出される偽りと、ママたちの裏の顔。子育て、不倫、DV、離婚など、夫婦間における女性たちの悩み。誰もが加害者になることもあれば、被害者になることもある――。
果たして、子どもたちのトラブル、そしてママたちのトラブルを解決することはできるのか。
豪華なスタッフ・キャスト
製作総指揮・脚本を務めるのはデヴィッド・E・ケリー。僕がかつて大好きだったドラマ『アリー my Love』を手がけた人物です(ちなみに彼はミシェル・ファイファーと結婚しています)。彼は弁護士ドラマの神様とも呼ばれるヒットメーカーですが、本作でも複雑に絡み合う法的な問題や女性たちの心理をスリリングに描き出す手腕はさすがの一言です。
また、監督陣の布陣も映画ファンなら唸るほど豪華です。
シーズン1の全話を監督したのはジャン=マルク・ヴァレ。映画『ダラス・バイヤーズクラブ』などで知られ、音楽と映像をシンクロさせる独自の美しい演出が本作の妖艶な空気感を作っています。
そしてシーズン2の監督を務めるのはアンドレア・アーノルド。カンヌ国際映画祭で何度も審査員賞を受賞しているイギリスの至宝であり、彼女の持ち味であるドキュメンタリーのようなリアルさが、物語のドロドロとした人間模様をさらに生々しく引き立てています。
何より役者陣のハマり役っぷりが凄まじいです。主要キャストに並ぶ実力派たち。
主要キャスト
リース・ウィザースプーンのパワフルな「どすこい母ちゃん」っぷりは見ていて本当に楽しいですし、ニコール・キッドマンのそこはかとなく漂う暗さは役柄に完璧にマッチしています。
※ 注意点として、ニコール・キッドマンの露出シーンや大人向けの色気シーンが多いため、家族での視聴はあまりお勧めしません。
リースとニコールの執念:『#MeToo』に賛同したプロデューサーとしての知性
実は、主演のリース・ウィザースプーンとニコール・キッドマンは、本作の製作総指揮(プロデューサー)を兼任しています。
自ら前線に立ってこの作品をコントロールしていたという事実こそが、本作の持つ最大の意義です。
ハリウッドの限界に抗ったリースの知性と戦略
リース・ウィザースプーンは、ハリウッドにおいて理知的で聡明なビジネスパーソンとして知られています。彼女はかつて、数々のインタビューや雑誌の対談で、自身のキャリアにおける強い危機感をこのように語っていました。
「ハリウッドから送られてくる脚本は、どれも信じられないほど退屈なものばかりだった。女性キャラクターはいつも誰かの妻や母親、あるいは単なる飾りで、物語を主体的に動かす役割を与えられていなかった。有能で素晴らしい女優たちがたくさんいるのに、彼女たちが輝ける『複雑で、不完全で、リアルな女性の役割』が圧倒的に不足していたの」
引用元:米『Entertainment Weekly』誌インタビューなど
この現状に絶望したリースは、「誰も作らないなら、自分が女性のための新しい物語を作る会社(Hello Sunshine)を立ち上げればいい」と行動を起こします。そうして彼女が目をつけ、自ら映像化権を買い取った原作小説こそが、この『ビッグ・リトル・ライズ』でした。
リースはこの企画を抱え、親友であり同志でもあるニコール・キッドマンのもとを訪れます。二人は「女性たちの手で、女性たちのための、最高峰のドラマを作ろう」と誓い合い、HBOを巻き込んでこのプロジェクトを成功へと導きました。
ゴールデングローブ賞での熱弁と『#MeToo』の完全シンクロ
2018年のゴールデングローブ賞での出来事です。本作が作品賞を獲得した際、リース・ウィザースプーンが壇上で行った受賞スピーチは大きな話題となりました。
リースのスピーチの完全対訳がこちらです。
今年、沈黙を破り、虐待やハラスメントについて声を上げたすべての人々に感謝を捧げます。皆さんは本当に勇敢です。そして願わくば、このような作品が――これまで影に隠された場所で起きていた出来事を扱う作品が、もっとたくさん作られることを願っています。
声を上げる勇気を持った人々のおかげで、これらの問題に今、光があたり始めました。そして、今この瞬間も声を上げられない人々、虐待やハラスメント、差別に苦しんでいる人々、『自分には居場所がない』『誰も自分の声を聞いてくれない』と感じているすべての人々へ――私たちはあなたを見ています。あなたの声を聞き、私たちがあなたの物語を伝えていきます。
この2018年の授賞式は、ハリウッドの大物プロデューサー・ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ告発を発端とした「#MeToo」運動の真っ只中でした。女優たちがセクハラや性的虐待に対して「見て見ぬ振りをしない」という抗議の意を表し、黒いドレスを身にまとって出席しました。
自ら道を切り拓いてきたリースのスピーチは、単なる受賞の喜びではなく、業界への宣言でもありました。現実の社会運動と、ドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』が描くテーマはシンクロしています。
ちなみに、リースは声がよく通り、発音も明瞭なので、英語を第2言語として話す人にとっても非常にありがたい存在です。彼女の理知的な言葉選びも含めて、ぜひ字幕や映像で体感してほしいポイントです。
考察:アメリカ留学で知った世界共通の悩み
現代の問題を掘り下げている本作ですが、描かれるトラブルの数々は決して遠い国の話ではありません。
僕はアメリカに留学する前、「アメリカ人はみんな自分の意見をはっきり言って、思うままに生きている」という誤解をしていました。それこそリースの大ヒット作『キューティー・ブロンド』のような、自由奔放なキャラクターが登場する作品ばかり観ていたせいだと思います。
しかし実際の生活(ピッツバーグやニューヨークなど)で知ったのは、アメリカ人も日本人と同じようにしっかり空気を読むし、理不尽なことに歯を食いしばっている人や気の小さい人もたくさんいるという現実でした。経済状況が似ていれば、日々の生活の悩みに大きな違いはないのだと実感させられました。
本作では不倫、家庭内暴力(DV)、ご近所トラブルなど様々な問題が噴出します。見ていて腹立たしくなるほど人物同士の関わり方が人間的で、そして愚かです。キャラクターが丁寧に描写されているからこそ、凄まじいリアリティがあります。
こうした問題は、よっぽどのことがない限り、親しい友人にさえ口にすることはありません。家庭内で起こる問題は、結局のところ当事者同士にしか分からず、周囲が気づくことは本当に難しい。だからこそ、当事者になってみないと自分がどう反応するかも分からない、という恐怖とリアルが、この作品に詰まっています。
さらに泥沼化するシーズン2:メリル・ストリープの参戦
シーズン1で一定の結論は出ますが、シーズン2も制作されています。
シーズン2の最重要人物として登場するのが、名女優メリル・ストリープです。超保守的な義母が物語に絡むことで、シーズン1で起きた問題がさらに激しく引っかき回されます。
シーズン2では新たに世代間の対立というテーマも浮上し、家庭内の問題に義母の生きてきた時代背景が複雑に絡み合っていきます。現代的な視点から見ると、メリル・ストリープ演じる義母の毒親ぶりに辟易とさせられますが、ドラマのサスペンスを加速させる最高のスパイスとして機能しています。
シーズン1で衝撃を受けた方は、さらに泥沼化するシーズン2も必見です。『ビッグ・リトル・ライズ』は、U-NEXTで見放題独占配信中です。初回無料トライアルを利用すれば、追加料金なしですぐに視聴を始めることができます。
リース・ウィザースプーンのおすすめ過去作3選
出始めの頃から一癖ある「しゃくれ系美人」として独自の存在感を放ち、僕も大好きなリース・ウィザースプーン。豪華なキャストに囲まれてもしっかりと主演を張り続ける、息の長いトップ女優です。名作ドラマ『フレンズ』にレイチェルの妹役でゲスト出演した際も素晴らしい存在感でした。
そんなリースのキャリアを語る上で、ぜひ合わせてチェックしてほしいおすすめの3作品をご紹介します。
『クルーエル・インテンションズ』
18世紀のフランス小説『危険な関係』を現代風にアレンジした、最高にスタイリッシュな作品です。リースが当時の夫であったライアン・フィリップ(現在は離婚)と共演した作品でもあり、僕が中学時代に観てめちゃくちゃ影響を受けたバイブル的な1本です。
廃盤に近いものの、販売が続いています。
『カラー・オブ・ハート』
何もかもが完璧に思える1950年代のモノクロテレビドラマの世界に、現代の兄妹が入り込んでしまう物語。彼らの登場によって白黒の世界が徐々に色づいていくのですが、多様性を描いた脚本がとにかく秀逸で、素敵な作品です。
こちらも廃盤に近いです。
『メラニーは行く!』
当時、能天気なラブコメ女王街道をひた走っていた頃の代表作です。この作品以降、彼女は社会派や重厚な路線へとシフトしていきますが、この頃のキュートで能天気なリース・ウィザースプーンの魅力は格別です。
2,000円前後です。
まとめ:重厚な人間ドラマ
コメディから社会派までをこなす頭脳派女優リース・ウィザースプーンが、並々ならぬ熱量でプロデュースと主演を務めた『ビッグ・リトル・ライズ』。
一見きらびやかなセレブたちの、誰にも言えない「ささやかで大きな嘘」の果てに何が待っているのか。現代社会の闇と人間の本質を鋭く描いたこの重厚な人間ドラマを、ぜひ体験してみてください。
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