アシュトン版「シンデレラ」はどんなストーリー?
特徴は?
見どころは?
ストーリーに入り込みやすい「シンデレラ」がアシュトン版です。
バレエ版「シンデレラ」の王道です。
数多くある「シンデレラ」のうちでも、最初にオススメしたい作品です。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります
今回はフレデリック・アシュトン版「シンデレラ」の作品解説です。
※3分ほどで読み終わります。
フレデリック・アシュトン版
1948年イギリスで発表されたフレデリック・アシュトン版「シンデレラ」。
ちょうど第2次世界大戦が終わって間もないころ。戦争後の世相を反映しています。
イギリス:ロイヤル・オペラ・ハウス(英国ロイヤル・バレエ団の前身であるサドラーズ・ ウェルズ・バレエ団が公演)
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
原作:シャルル・ペロー、グリム兄弟
アシュトン版の特徴
アシュトン版「シンデレラ」は、照明、音楽、演出によって舞台に入り込みやすい作りになっています。
また、フレデリック・アシュトンは、音楽をオリジナル版からカットしています。特に第3幕をスッキリさせることで、最後の印象を強く残すバージョンとなっています。
シンデレラ
王子様
義理の姉たち:シンデレラをいじめる
父親:シンデレラを守ってあげられない
仙女:シンデレラを魔法で助ける
春の精、夏の精、秋の精、冬の精:仙女とともにシンデレラを助ける
道化:舞踏会を盛り上げる
王子の友人たち
アシュトン版では継母が登場しません。代わりにの義理の姉たちが継母を兼ねていて、男性ダンサーが演じます。男性が演じることで陰湿さよりコミカルさが出ています。
そして父親が登場します。お父さんはシンデレラを心配しているのですが、極めて気の弱い人物として描かれています。
第1幕:45分
第2幕:40分
第3幕:25分
休憩を入れると2時間20分ほどになりますが、バレエとしてはコンパクトな公演時間なのでバレエ鑑賞初心者の人にもオススメです。
ここからはストーリーと見どころを全編紹介します。
第1幕:ストーリー
とあるヨーロッパの王国。
王子の結婚相手を探す舞踏会が開かれることになり、国中の未婚女性が招待されることになる。
しかし、シンデレラが行くことを義理の姉たちは許さない。シンデレラは、義理の姉2人にいつもいじめられている。
舞踏会に行くことを諦めていたシンデレラ。そこに魔法使いの仙女が登場し、シンデレラが舞踏会に行けるよう魔法で準備する。シンデレラのために美しいドレス、ガラスの靴、かぼちゃの馬車を用意し、御者たち、お付きの妖精たちもやってくる。
12時になると魔法が解けてしまうので、12時までには帰ってくるよう注意を与える。そしてシンデレラは舞踏会に出発する。
第1幕:見どころ
第1幕は、前半部分の家のシーンと、後半部分の仙女と妖精たちのシーンに分かれます。
家のシーンでは照明も暗めに設定され、物語に焦点があたっています。あらすじを読まずとも内容がわかると思います。義理のお姉さんたちがコミカルに話を進行していきます。
後半部分は仙女が登場し、ここから踊りがたくさん登場します。仙女が登場すると舞台の空間が一気に広がります。これがシンデレラの心を解放しているかのような演出です。
そして、仙女、春の精、夏の精、秋の精、冬の精の5人はソリスト級のダンサーが登場します。
妖精たちの踊りのフィナーレからかぼちゃの馬車
妖精たちがソロを踊り終えると、最後に5人の妖精たちが一緒に踊ります。この曲が大好きで、このシーンにくると毎回ウキウキしてしまいます。そして群舞である星の精たちが登場します。群舞のダンサーの数は時計の文字盤と同じ12人となっています。
そして、シンデレラの変身へと続きます。
英国ロイヤル・バレエ団、1969年の映像。
第2幕:ストーリー
王宮では舞踏会が開かれている。そこにシンデレラが遅れて登場する。
王子はシンデレラに一目惚れ。ふたりで楽しい時間を過ごす。とそのとき、時計台から12時の鐘が鳴り響く。長居しすぎてしまったシンデレラ。魔法が解けたシンデレラは急いで逃げる。そのとき階段にガラスの靴を落としてしまう。
第2幕:見どころ
シンデレラの登場シーンに注目です。
シンデレラはトウシューズでつま先立ちのまま王子様に手を引かれ階段を降りてきます。このときシンデレラは絶対に下を向きません。これは宝塚のフィナーレの大階段を下を見ずに降りてくるのと同じです。夢見心地のシンデレラが宙に浮いているかのように見えるシーンです。
英国ロイヤル・バレエ団より。アントワネット・シブレーとアンソニー・ダウエルによる名演。1969年の映像です。アントワネット・シブリーはこの後足のケガにより引退してしまいます。貴重な映像です。
パ・ド・ドゥ
シンデレラと王子様のダンスはキラメキにあふれています。音楽も美しいです。シンデレラのソロ、王子様のソロもあります。
英国ロイヤル・バレエ団、2013年の映像。アリーナ・コジョカルとヨハン・コボー。実生活でも夫婦のふたり。
そして、最後のシーンでは、第1幕のフィナーレと同じ曲から発展し、時計のシーンへとつながります。このときの音楽の盛り上がりに気分も上がります。
第3幕:ストーリー
王子様は、ガラスの靴を手がかりにシンデレラを捜す。シンデレラの落とした靴は誰にも合わない。無理やり履こうとする義理の姉のところにかけよるシンデレラ。するとポケットからもう一足のガラスの靴が滑り落ちる。
こうしてシンデレラは妃として迎えられることになる。
第3幕:見どころ
最初の15分は靴探しの物語。最後の10分がシンデレラと王子様の踊りです。
アシュトン版ではシンデレラが義理のお姉さんたちを許し、ハッピーエンドを迎えます。
最後の踊りのシーンでは星の精たちが光る杖を持っていて、幻想的な雰囲気です。
そこからシンデレラと王子様のパ・ド・ドゥでしっとりと幕が閉じます。
映像があまり残っていません
アシュトン版「シンデレラ」の映像は多く発売されているわけではありません。
さきほどシンデレラの登場シーンで紹介したアントワネット・シブレーとアンソニー・ダウエルによる名演。1969年の映像です。振付のフレデリック・アシュトンが義理のお姉さん役で登場している貴重な映像です。
2,700円ほど。今みても素晴らしい映像です。
日本では新国立劇場バレエ団が、隔年で「くるみ割り人形」とアシュトン版「シンデレラ」を上演し続けています。そのため直接見るチャンスもたくさんあります。ぜひ一度舞台に足を運んでみてください。

以上、初心者のためのアシュトン版バレエ「シンデレラ」でした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。