
ローラン・プティ版「コッペリア」はどんなストーリー?
特徴は?
見どころは?
「コッペリア」はバレエでよく上演される有名な作品です。
ただ、僕はあまり得意ではありませんでした。
ですが、ローラン・プティ版「コッペリア」を観たとき、印象がガラッと変わりました。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります
今回はローラン・プティ版「コッペリア」の作品解説です。
※3分ほどで読み終わります。
粋(いき)なバレエ
ポーランドの田舎からフランスに舞台を移動し、洗練された衣装、コミカルな振付が特徴のローラン・プティ版「コッペリア」。
最大の特徴はコッペリウス博士の心情によりそう内容になっていて、コッペリウス博士に自然と感情移入してしまう点です。
・コッペリウスがヨレヨレの変わり者でなく、パリッとした紳士
・コッペリアはスワニルダに似せて作られている
・第3幕が15分程度に短縮
・舞台セットがシンプル
通常版「コッペリア」の作品についてはこちらをご覧ください。
コッペリアが主役ではなく、スワニルダとフランツが主役のバレエです。あらすじ、ストーリーの解説と見どころポイントを動画も含め紹介しています。
プティ版は、通常版とストーリーの流れは同じです。
ローラン・プティ版「コッペリア」
マルセイユ・バレエ団
振付:ローラン・プティ
音楽:レオ・ドリーブ
舞台美術・衣裳:エツィオ・フリジェーリオ
原作:E.T.A.ホフマン「砂男」
ローラン・プティに関しては「若者と死」という作品も紹介しているので、ぜひご覧ください。
ローラン・プティ振付、ジャン・コクトーの台本です。ミハイル・バリシニコフ、ニコラ・ル・リッシュの映像もご紹介しています。
作品に関して
プティ版「コッペリア」の舞台は、フランスのパリかマルセイユの裏町です。
19世紀末から第一次世界大戦勃発(1914年)までの、パリが繁栄した華やかな時代となっています。初演では振付のローラン・プティがコッペリウスを演じ話題となりました。
スワニルダ:活発で美しい街の女性
フランツ:スワニルダの恋人。伊達男
コッペリウス:初老の紳士。スワニルダに恋をしている
コッペリア:スワニルダそっくりの等身大の人形。コッペリウス博士がつくった
プティはミュージック・ホールの作品を手掛けていたことがあります。
プティ版「コッペリア」はクラシック・バレエという感じではなく、ミュージカルやレビューの雰囲気があります。
機械人形の動きを含め、マジックの要素も入っていて楽しいです。
第1幕
街では衛兵や街の娘がお互いに意識しながら楽しく過ごしている。
広場に面したバルコニーに、美しい娘コッペリアが街を見下ろしている。スワニルダとフランツを中心に楽しく過ごす若者たち。スワニルダはフランツにアタックするが、フランツはコッペリアが気になって仕方がない。
しばらくするとコッペリウスがコッペリアの家から出てくる。スワニルダに熱い視線をおくるコッペリウス。フランツに思いをよせるスワニルダ。コッペリアの家から出てきたコッペリウスが気になるフランツ。
するとコッペリウスがカギを落としてしまう。カギをひろったスワニルダはコッペリウスの家に友達と侵入してしまう。
一方のフランツはコッペリアに会うためにバルコニーを登っていく。
大人びたバージョン
フランツは登場シーンでタバコを吸っていたり、街の女の子たちの衣装がスラーっとしていたり、と少し大人びた印象の「コッペリア」です。
こちらの映像はスワニルダとコッペリアの出会いのシーン。
通常版のプティパ版はコンクールで人気のバリエーションです。スワニルダは自分を無視するコッペリアに対し、プティパ版ではムッとするシーン。ですが、プティパ版ではフランス流のおしゃれな対応となっています。
ルシア・ラカッラが新国立劇場バレエ団にゲスト出演している際の映像です(ちょっと映像と音がズレています)。
僕がはじめてプティ版を見たのがルシア・ラカッラによるコッペリアでした。踊るサイボーグとも言われ、スタイルの良さ、身体のしなりが素晴らしいダンサーです。
この時代、シルヴィ・ギエム、アリシア・アマトリアン(シュツットガルト・バレエ団)、ルシア・ラカッラ(ミュンヘン・バレエ団)がズバ抜けて身体能力の高いダンサーでした。
第2幕
コッペリウスの家。
スワニルダたちは家を探索していると、コッペリアを見つける。最初は人間かと思っていたが、よく見るとからくり人形だと気づく。
しかも顔がスワニルダそっくり。
そこにコッペリウスが帰宅する。驚くスワニルダと友人たち。スワニルダは逃げ遅れて、物陰に隠れてしまう。コッペリウスはコッペリアを丁寧にあつかい、一緒に食事をとる。
そんなときフランツが家に侵入してくる。すぐにコッペリウスに捕まってしまう。コッペリウスは酒を使い眠らせてしまう。そして魔法を使い、フランツの魂をコッペリウスに移動させようとする。
実は逃げ遅れたスワニルダがコッペリアのフリをしている。
コッペリウスをだませたことに気を良くしたスワニルダ。好き勝手にして、家をめちゃめちゃにしてしまう。
そしてスワニルダのキスで眠りからさめるフランツ。コッペリアに恋をしていたフランツは、コッペリアがスワニルダと気づき2人は逃げていく。
去った後の家には服を脱がされたコッペリアが残される。
コッペリウスは、コッペリアの人形を大事そうに抱えるのだった……。
3人劇
通常、コッペリウスの家のシーンは人形に扮したダンサーがたくさん登場します。しかし、プティ版の人形はコッペリアのみ。
スワニルダの友人がいなくなると、ほぼコッペリウスとスワニルダの2人劇になります。観客をどれだけ舞台にのめり込ませるか、力が試されるシーンです。
そしてコッペリウスのソロの踊りが見どころです。こちらはローラン・プティが50歳のころの踊りです。
今でも名演として名高いです。
フィナーレ
仲直りしたスワニルダとフランツが楽しく過ごしている。気落ちしているコッペリウスがコッペリアを抱えて歩いている。
心配するスワニルダだがフランツに止められまたみんなの輪に戻っていく。
最後、コッペリアが壊れてしまう……。
頭が取れたコッペリア……。
嘆くコッペリウスで幕が閉じる。
ポイント
プティ版には第3幕がありません。通常版の第3幕が、プティ版では第2幕の最後にくっついています。
フィナーレはかなり切なくなる演出で、老紳士の孤独感がかなり強調されています。
勝手に恋をして、フランツに薬を盛る…。だけど、家をめちゃめちゃにし、コッペリアを壊すスワニルダとフランツ。
なんとも言えない気持ちになります…。
通常版の「コッペリア」はストーリーがあまり重要視されていないので、正直内容が薄いと感じてしまうことがあります。
プティ版ではストーリーがしっかりと構築されているので、僕は大好きな作品です。
最後切ないとはいえ、ダンサーがおしゃれに魅力的に踊ってくれるので、笑ってみることができる作品です。
映像
国立モスクワ音楽劇場バレエによる30分のダイジェスト版がyoutubeにアップされています。
バレエ界の異端児セルゲイ・ポルーニンとクリスティーナ・シャプラン、エリカ・ミキルティチェワ主演。
実は昔【25:02】のリフトで失敗した瞬間を観劇したことがあります。そのためこのシーンを見るといまだにビクビクしてしまいます……。

以上、ローラン・プティ版「コッペリア」でした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめています。ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。