バレエ『コッペリア』の歴史:最後のロマンティック・バレエと機械文明
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バレエ作品『コッペリア』の歴史は?
特徴は?
見どころは?

バレエの歴史において重要な作品『コッペリア』。

初演は、1870年です。

当時の様子はこのように記録されています。

・ナポレオン3世が観劇
・第3幕は一部カット
・男性主人公を女性が踊っていた

記事を書いているのは……

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。

kazu

今回は、『コッペリア』の歴史や背景の解説です。

※ 3分ほどで読み終わります。

最後のロマンティック・バレエ

1830年代 ~ 1840年代に大ヒットしたバレエ『ラ・シルフィード』と『ジゼル』 。妖精をテーマにしています。

この 2作品は「ロマンティック・バレエ」と呼ばれます。

ロマンティック・バレエ

理想の世界、幻想の世界を視覚化したバレエ

1870年に発表された『コッペリア』もロマンティック・バレエです。

機械人形をテーマにしたロマンティックなストーリーです。

詳しい物語はこちらからどうぞ。

プティパ原振付:バレエ『コッペリア』ストーリー・見どころ解説

『コッペリア』が上演されたころ、絵画の世界では「写実主義」が広がっていました。

写実主義:現実をそのまま捉える芸術様式

ロマンティック・バレエが飽きられはじめ、バレエの中心地であるパリ・オペラ座バレエ団が下火になっていました。

バレエに変化が求められます。

『コッペリア』はロマンティック・バレエに分類されますが、新たなコンセプトが取り入れられています。

大きな影響を与えたのが、機械文明です。

1867年:第2回パリ万国博覧会

この時代、機械文明が急速に発展していきます。

1867年、「パリの万国博覧会」では機械の展示がたくさんありました。

作中で機械人形のコッペリアは等身大、かつアイディア豊富な動きをします。

この時代の人たちが描いた未来の人形を見ることができるのは、なんともロマンティックです。

英国ロイヤル・バレエ団より。コッペリアを演じるのは、マリアネラ・ヌニュスです。

コッペリアとは、コッペリウス博士がつくった機械仕掛けの等身大の人形です。モデルになっているのが、作中のヒロインであるスワニルダです。

このシーンでは、スワニルダがコッペリアになりきっています。

ダンサーが人形に

特に、ダンサーが人形を演じるというアイディアが大好評でした。

『ラ・シルフィード』や『ジゼル』は妖精や精霊がたくさん登場します。まるで宙に浮いているような浮遊感のあるダンスが話題になりました。

ただし、あまりに流行りすぎたため飽きられてしまいます。

対して、コッペリアの人形の動きはカクカクとした直線的な動きです。

妖精や精霊の動きと真逆でありながら、ロマンティックバレエに分類されています。

初演は大成功

初演:1870年5月25日

パリ・オペラ座バレエ団(フランス)

振付:アルテュール・サン・レオン
音楽:レオ・ドリーブ:フランスのバレエ音楽の父。アドルフ・アダン( 『ジゼル』作曲)の弟子。バレエ作品『泉』の一部を担当したり、『海賊』にも協力。『シルヴィア』でも知られる。
原作:E.T.A.ホフマン『砂男』

初演は、ウェーバー作のオペラ『魔弾の射手』と一緒に上演されました。

そしてナポレオン3世が観劇したため、時間の制限がありました。

当時の上演は、オペラとバレエがセットになっていました。フルで上演すると、公演が長すぎます。

そのため『コッペリア』の第3幕の一部をカットし、公演が行われました。

プティパ版

1870年 7月、フランスがプロイセンに宣戦布告します。

緊急事態となり、パリ・オペラ座が閉鎖されます。フランスは食糧不足になり、ダンサーたちも被害を受けます。

主役スワニルダを演じたジュゼッピーナ・ボツァッキも亡くなります。このときわずか 17歳でした。

1871年、パリ・オペラ座は再開しますが、かつての人気を取り戻すことができませんでした。

フランスで生まれたバレエですが、バレエの中心はロシアに移動します。

現在上演されている『コッペリア』のほとんどはサン・レオン版ではなく、1884年 ロシアのペテルブルクで上演されたマリウス・プティパ版をもとにしています。

フランツ(男性)を女性が踊る

スワニルダの恋人であるフランツ(男性)を女性が踊っていました。

そのため、リフトや、ソロはカットされていました。

この時期、女性が男性の役を踊ることが珍しいことではありませんでした。

バレエの人気が落ちていたため、男性ダンサーが不足していました。

ちなみにパリ・オペラ座バレエ団では伝統を引き継ぎ、1958年までフランツを女性が踊っていました。

多様なダンス

最後に『コッペリア』には民族舞踊がたくさん登場します。

・ポーランド:マズルカ
・ハンガリー:チャルダッシュ
・スペイン:ボレロ
・スコットランド:ジーグ

ひとつの舞台で世界のさまざまな踊りをみることができます。

ジーグ:18世紀にフランスで流行。アイルランドに由来、タップダンスの原型

スペインの踊り

ボリショイ・バレエ団より。ナターリヤ・オシポワです。

スコットランド

同じく、ナターリヤ・オシポワです。

オススメDVD

『コッペリア』は全幕作品の中でもあまり映像が発売されていません。

最新の映像として英国ロイヤル・バレエ団のDVDを紹介します。

4,000円ほど。

映像作品としては一番オススメです。

kazu

今回は、バレエ『コッペリア』の歴史についてでした。
ありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめています。ぜひご覧ください。