速水渉悟さん主役デビュー「ドン・キホーテ」新国立劇場バレエ団の感想
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新国立劇場の「ドン・キホーテ」は楽しかった?
感想は?
見どころは?

主役デビューの日は一生に一度。そんな記念すべき公演で拍手をおくれたことが幸せでした。

観に来た人全員が、速水渉悟さんに好感をもったんじゃないか、と思います。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります

kazu

今回は「米沢唯さんと速水渉悟さん主演のドン・キホーテ」の感想です。

※3分ほどで読み終わります。

速水渉悟さん堂々の主役デビュー

新国立劇場バレエ団に刺激的なペア誕生です。主役を踊った米沢唯さんと、速水渉悟さんは技術力がとにかく高くて、見ていて圧倒されました。

新型コロナウィルスで劇場がずっと閉鎖されている中、そして吉田都さんが芸術監督に就任してからの新シーズンということもあり、かなり盛り上がっていました。客席も満席で、ふたりには割れんばかりの拍手が送られていました。

今まで新国立劇場バレエ団の公演は、主演の女性ダンサーが舞台を引っ張っていく印象が強かったのですが、今回は速水渉悟さんが舞台を引っ張っていました。速水さんは踊りがとにかく華やかなので、ぜひ一度見ていただきたいです。

ちょうど「ワールド・バレエ・デイ 2020」で、今回の公演日のキャストで「ドン・キホーテ」のリハーサルが公開されていました。(映像は11/2までの限定公開でした。)

映像でみるよりも踊りが伸びやかで、腕を肩甲骨からかなり広く使っているので、腕の軌道がすごくキレイでした。そしてジャンプが高い。ザンレール(空中で2回転)も余裕の着地です。米沢さんと速水さんの最後の回転合戦は本番でもすごかったです。

10/31(土)18:30~のキャスト

改定振付:アレクセイ・ファジェーチェフ
振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー
音楽:レオン・ミンクス

キャスト

キトリ: 米沢 唯
バジル:速水渉悟

ドン・キホーテ:貝川鐵夫
サンチョ・パンサ:福田圭吾
ガマーシュ:奥村康祐

ジュアニッタ:奥田花純
ピッキリア:飯野萌子
エスパーダ:木下嘉人
街の踊り子:柴山紗帆
メルセデス:渡辺与布
カスタネットの踊り:細田千晶
ジプシーの頭目:中家正博
二人のジプシー:井澤 諒/宇賀大将

森の女王:木村優里
キューピッド:五月女遥

ボレロ:川口 藍/渡邊峻郁
第1ヴァリエーション:奥田花純
第2ヴァリエーション:池田理沙子

指揮:冨田実里
東京フィルハーモニー交響楽団

「ドン・キホーテ」のあらすじ

舞台はスペインのバルセロナ。

妄想癖のあるドン・キホーテと、おつきのサンチョ・パンサ。そして若い恋人のキトリとバジル。キトリを金持ちのガマーシュと結婚させたがっている父ロレンツォ。

ギラつく太陽と、明るい街人によるハッピーな物語です。詳しい内容に関してはこちらをどうぞ。

キャストが多い?

ファジェーチェフ版は一般的な「ドン・キホーテ」と流れが入れ替わっています。「ドン・キホーテ」という作品は、実際にドン・キホーテが登場するのですが、主役ではありません。主役は、キトリとバジルです。ですが、ファジェーチェフ版ではドン・キホーテを軸に物語が展開していきます。

ただ、ドン・キホーテを主役にしちゃうと、本来の主役であるキトリとバジルの不在時間が長くなってしまいます。

ファジェーチェフ版の流れ

第1幕:バルセロナの街
第2幕:バジルの狂言自殺→ロマの野営地→ドン・キホーテの夢
第3幕:キトリとバジルの結婚式」

ファジェーチェフ版では、キトリとバジルのストーリーは第2幕の序盤で終わってしまいます。バジルはこのシーンが終わると、第3幕の結婚式まで登場しません。主役がいないので、ちょっと舞台に締まりがないように思います。

久しぶりに見たので混乱したのですが、通常メルセデスひとりで踊る役を、メルセデス、街の踊り子、カスタネットの踊りと3人で踊り分けています。3人登場しちゃうので、誰が誰だかわからず…。メルセデスが全員分踊ったほうがいいように思いました。

キトリの友人であるジュアニッタ、ピッキリアも第3幕に登場しません。通常キトリの友人が第3幕でも踊りますが、ファジェーチェフ版では別人が踊るので、観客としては親近感が持てず置いてきぼりな感覚になりました。これは「ボレロ」役のふたりも同じです。このボレロもエスパーダとメルセデスが踊ったほうがいいと思います。

第3幕にエスパーダ、メルセデス、キトリの友人が登場しないのでカーテンコールに登場しないのも、なんか寂しかったです。

ちなみに第3幕にはお父さんやガマーシュも登場しないです。これもなんか寂しいです。

そして、ガマーシュを奥村さん、第2ヴァリエーションを池田さんが演じていました。僕は夜公演を見たのですが、このふたりは昼公演で主役を踊っていました。昼に主役を踊ったふたりを夜に出演させるのはちょっと酷なんじゃないか、と感じました。

ナイフが刺さらない?

第1幕のエスパーダのシーンでは、街の踊り子がトレアドール(闘牛士)たちが床に刺した剣をよけながら踊る見せ場があります。

この剣が、まー刺さらない。(笑)

ひどい時は8人いるトレアドールのうち、4本刺さらず床に転がっていました…。ここまで刺さらないんだったら、ほかの方法を考えたほうがいいんじゃないかと…。トレアドールにはベテランのダンサーもいましたが、その人も刺さってなかったので、ナイフに問題があるのかもしれません。

主役ふたりの存在感の強さ

ここまでちょっと気になる部分を書きましたが、ここからはガラッと変わります。

まずは主役のふたり。米沢さんと速水さんは踊りも演技も息が合っていました。リフトにうまく入れなかった部分も、速水さんが腕力でしっかりリカバリーしていました。

速水さんは力強く、男らしいダンサーです。日本人のダンサーは線の細い人が多いので、体格だけでも舞台映えしていました。化粧映えするし、顔は小さいし、髪型もイケてました。新国立劇場バレエ団のダンサーでは俺様タイプがいないので、「俺をみてくれ!」というパワーが客席にも伝わってきて、とても楽しい公演でした。演技面では速水さんがかなり引っ張っているように思いました。表情もコロコロ変わるし、ふつうに日本語を喋っていておもしろかったです。「もう1回!!」と言っていました。(笑)

このおもしろさ、というのはチャーミングという意味なので、僕はかなり好感を持ちました。

そして、米沢唯さん。テクニックの安定感が半端なかったです。ふたりともテクニックが強いのでお祭り感がありました。かなり盛り上がった「ドン・キホーテ」。この2人は全公演のベストペアなんじゃないか、と思います。

福田圭吾さん

今回はサンチョ・パンサだったので、そんなに踊らなかったので残念ですが、演技がとにかく達者で、動きで何を言っているのかすぐにわかります。福田さんの踊りが大好きなので、ぜひ主役を踊ってほしい、とずっと前から願っています。

サンチョ・パンサは街の人達にいじめられて、みんなから胴上げ状態にされるシーンがあります。普通このシーンではいじめられてる感があるんですが、福田さんのジャンプがスゴすぎて、客席も出演者も「スゴー」という雰囲気になっていました。(笑)

渡辺与布(あたう)さん

酒場でのシーン。メルセデスの踊りです。たぶん渡辺さんだと思うんですが、背中をぐぐぐーっと反る踊り。あそこまでぐーっと反ってくれるとみていてスカッとしました。音楽性も高く、とても素晴らしい踊りでした。

渡部義紀(わたべよしき)さん

ドン・キホーテは主役だけでなく周りのダンサーのわちゃわちゃ感があると楽しくなります。

このわちゃわちゃ感を主導していたのが渡部さんです。もしからしたら間違っているかもしれないですが、街のシーンの幕が開いた瞬間、一番最初に動き出すのが渡部さん。空気を壊さずに独自の演技をしていて、自然と目が行きました。笑顔が光ってました。

指揮の冨田実里さん

女性の指揮者はやっぱりカッコいい。バレエの指揮をやっている人はけっこうブスっとしている人もいるんですが、とても楽しんで指揮をしていてすごく好感を持ちました。笑顔が印象的。

音楽もイキイキしていて、厚みもあって、素晴らしかったです。

新国立劇場バレエ団版のDVD

新国立劇場版のDVDも発売されています。スヴェトラーナ・ザハーロワとアンドリ・ウヴァーロフのビッグネームによるキトリとバジルです。

新国立劇場のコロナ対策はどう?

政府から劇場の収容人数の緩和が発表されてから初めての公演でした。最初は座席をの間隔がある状態でチケットが販売されていましたが、会場にいくと満席でした。

新国立劇場の新型コロナウイルス対策

・最前列~3列目までは販売停止
・劇場内での軽食やドリンクの販売なし
・入場時、個人情報の提供
・マスク着用
・チケットのもぎりは自分で
・ブラボーなどの、かけ声の禁止
・劇場内、ホワイエでの歓談は避ける
・クロークの閉鎖
・オペラグラスやひざ掛けの貸出
・接触アプリココアをダウンロードシている場合はスマホはマナーモードに。それ以外は電源オフ。

さらに細かく決まっているのですが、重要な部分をピックアップしました。来場者カードの記入にたぶん一番時間がかかります。

新国立劇場オペラパレス来場者カード

ダウンロードしてから持っていくこともできるので、記入してから行くのがオススメです。対策はほぼしっかり守られているように思いました。いつもなら幕間で子どもたちがオーケストラピットをのぞいていたりするのですが、こうしたシーンはしばらくおあずけです。

新国立劇場のコロナ感染症対策(前3列はつぶし)

ですが、お客さん同士の会話はふつうの時とほとんど変わらなかったのと、結局ブラボーや指笛をしている人がいました。すごく盛り上がっていたので、しょうがなかったんですが、こういった点が気になる方はまだ行かないほうがいいかもしれないです。

トイレ内の新型コロナ対策
(トイレではこんな掲示もありました。)

めがね

プラス情報。座席にエアウィーヴ(air weave)のクッションがひとつずつ用意されていました。

DVD

4,000円ほど。

スヴェトラーナ・ザハーロワとアンドレイ・ウヴァーロフがゲストの新国立劇場バレエ団のDVDです。

このDVDではないですが、2人の「ドン・キホーテ」を観たことがあります。2人のパフォーマンスを生で見て圧倒されていました。ロシアスタイルの伝統をバシっと見せてくれるペアです。

この2人は新国立劇場バレエ団によく招かれていたこともあり、すごく安定したパフォーマンス、かつ人気がかなり高いペアでした。

今見てもまったく色褪せていないです。

kazu

今回は「米沢唯さんと速水渉悟さん主演のドン・キホーテ」のご紹介でした。
ありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。