ルルベ徹底解説:床反力とMP関節(バランスのコツとトレーニング方法)
jazz

ルルベとは?
床反力とMP関節とは?
足裏を正しく使う方法は?

ルルベ上達のためのポイント「床反力ゆかはんりょく」。

身体の動力源となり、ダンスに欠かせません。

体重を床に押し付けることによって得られる反発力で、身体を軽く動かすできるようになります。

記事を書いているのは……

元劇団四季、テーマパークダンサー。30分のショーから2時間の舞台まで出演回数は5,000回以上。ダンス、ヨガ(RYT200取得)、ピラティス、ジムにも20年ほど通っています。

kazu

今回は「ルルベの原理とコツ」についてです。

※3分ほどで読み終わります。

ルルベ

ルルベ ( releve ):フランス語で「持ち上げる」「引き上げる」

ダンスではつま先立ちになることを意味します。

伝説のダンサー、シルヴィ・ギエムのルルベです。

シルヴィ・ギエムに関してはこちらで詳しく解説しています。

鋼のバレエダンサー「シルヴィ・ギエム」体型の基準を厳しくしたダンサー

ルルベでは、つま先だけで体重を支えなければいけません。

足裏への負担

バレエダンサーの足裏トレーニングの種類はかなり豊富で、ほかのスポーツと比べ物にならないくらい足裏を徹底的に鍛えていきます。

足裏は、身体の表面積のうちのたった2%しかありません。わずか2%の表面積で身体全体を支えなければいけません。

足裏の使い方が上手い人ほど、身体への負担が軽減されていきます。

よくあるアドバイス

「上から糸を釣られているように伸びる」

こうしたアドバイスを受けることが多いと思います。

ただ、ルルベは上に伸びていくイメージが強いのですが、実は床を押しつける力がポイントです。

床反力で身体が軽くなる

自分の筋肉だけでなく、地面からの反発(床反力)を使って動けるようになると軽い状態で身体を動かすことができるようになります。

運動において「跳ぶ」「走る」といった動作は、地面からの反発力を使うとスムーズに重心移動させることができます。

走るという動作では、体重をうまく地面に伝えることで 2つの力を得ることができます。

1:反発力から体重を持ち上げる力
2:前に進むための推進力

床反力を効率的に使っている馬の動画をどうぞ。

接地時間が短いと床反力のパワーが上がります。

床反力とは

床反力ゆかはんりょく

床からカラダにかかる力( カラダにかかる力 = 体重 )

体重 70kg の人物について考えてみます。自然に立っているとき、70kg の体重が床方向にかかっていると同時に、床から 70kg の力が上方向に向かい、バランスが保たれています。

床反力(体重と重力の関係)

体重計を想像するとさらにわかりやすくなります。体重計に乗るのではなく、両手で 70kg 押すことを想像してみてください。手で 70kg 押すのは大変です。

動きの中での床反力

床反力は動きが加わると、身体にかかる負荷がアップします。下の動画では短距離走の選手と、長距離走の選手の床反力をはかっています。

動画をまとめます。

それぞれの床反力

短距離走:体重の 5倍 の床反力
長距離走:体重の 3倍 の床反力

動きが加わると、体重以上の力が身体にかかります。

ダンスにおける床反力

ダンスもスポーツ同様、床反力は欠かせません。

ルルベに動きが加わると、つま先の負担が強くなるので、それに合わせて鍛えていく必要があります。

片足、つま先立ち、どのポジションでも床を押し付けることで、安定したパフォーマンスにつながります。

「MP関節」と「かかと」に力を入れるべし

床反力をうまく使うためには、足の裏をフルで使う必要があります。

そのとき使うのが「MP関節」と「かかと」です。

「MP関節」とは「趾骨しこつ」と「中足骨」をつなぐ関節のことです。

足指を床に押し付けると皮膚表面に骨がうっすらと見えます。これが MP関節 です。

土踏まずが上がると、足裏に「縦アーチ」と「横アーチ」ができます。

足裏に必要な縦アーチと横アーチ

「シルヴィア・オンラインストア」より

アーチは「縦アーチ」と「横アーチ」の2方向ではなく、実は3方向あります。

足裏の3つのアーチと3つの支点

というのも横アーチは中心部分が浮いているので、縦のアーチは親指側の「内側ないそく縦アーチ」と、小指側の「外側がいそく縦アーチ」の2種類に分かれます。そのため、上記のように 3つのアーチがあります。

MP関節とかかとを床方向に押すと自然と土踏まずが上がります。MP関節に関してはこちらでさらに詳しく解説しています。

上に伸びるために下に押す

ダンスではよく「引き上げる」という言葉を使います。引き上げることで身体を大きくみせることができます。

引き上げるということは上方向への力を想像しがちですが、引き上げるためには逆です。

プリエ上達のコツ

床方向に押し付けることで、引き上げることができるようになります。(上半身の腹部は上方向に伸ばします)

そのための力が床反力です。

足指を伸ばす

足裏トレーニングはかなり繊細なので気をつけてください。とくに指の使い方が難しいです。

ルルベをすると足指が浮きやすくなります。

ルルベで足が浮かないように注意

左の人は、指が丸まってしまっています。理想は足指が伸びたままピタッと床にくっつくことです。

真ん中の人はルルベの高さが少し足りません。また、小指が短いためギリギリ床についた状態です。本来、小指の骨は3つありますが、8割ほどの日本人は骨が 2つしかないと言われています。つまり、小指の短い人が多いです。自分に合った状態で小指を使えるようにしましょう。

右の写真の人は、指が使えています。

最初は意識的に指を使って伸ばしていきます。ですが、最終的に指はリラックスした状態で伸びているのが理想です。

ルルベのコツ

ルルベでは、親指側に体重がかかりすぎたり、小指側に体重がかかりすぎると足首が不安定になります。

小指側に体重がかかると捻挫や足をひねってしまう

捻挫につながりやすいです。

ルルベでグラグラしてしまう場合、体重のかけ方に改善が必要です。

ポイントは人差し指です。

人差し指付近のMP関節で床を押す意識で、安定感が得られます。

ルルベは人差し指に体重をかけ、指と甲の角度は90°が理想。かかと、MP関節を床方向に押す

理想は指と甲で90°つくることです。

また、かかとを浮かすため忘れがちですが、かかとを床方向に押す意識も重要です。

甲が柔軟な人を「 甲高こうだか 」と言います。とても美しい足のラインを作り出します。

甲高の人はくるぶしと MP関節 を結ぶ線が、指と垂直になるようにします。

甲高の人と通常の足の人のMP関節の使い方

甲高タイプは珍しいため、甲がフラットな場合、中足骨を垂直に立てていきます。

趾骨(しこつ)、MP関節、中足骨の位置は?

ルルベが高くできない場合

ヒザを伸ばした状態で指を90°曲げるのはかなり大変です。

そのため、ルルベは段階を踏んで高くしていきます。

指の柔軟性が足りない場合、ルルベをあえて少し低くしましょう。

安定感が増します。

とはいえ、この状態でトレーニングを続けていくと2つの問題が起きます。

ルルベが低いデメリット2点

1:重心がブレる
2:足、特にふくらはぎが太くなる

1点目。ルルベが低いと身体の軸が斜めになってしまい、バランスを取るのが難しくなり、ピルエットの回転軸もブレてしまいます。

ルルベが低いと軸がぶれやすくなってしまうので注意

2点目。軸をカバーするために足、特にふくらはぎの筋肉が余計に働きます。

結果、足が太くなってしまいます。

軸が垂直だと、足に余計な筋肉が付くことなく鍛えることができます。

トレーニング動画

ルルベはじっくり鍛えるしかありません。

ウォーミングアップとおすすめのトレーニング 4つご紹介します。

この中から自分に合うトレーニングを組み合わせてみてください。

ウォーミングアップ

まず有効なのが足首を回しです。先ほど映像で紹介したシルヴィ・ギエムは足首回しにかなり時間をかけていました。

足の指と手の指でがっちり握手しながら回すと、指と足首同時にストレッチすることができます。

足裏をほぐす

フットローラーでコロコロすると、足裏をほぐすことができます。

2,000円ほど。

「かっさプレート」もオススメです。プレートで足裏をこするだけです。足指の付け根など細かい部分までケアできます。

3,000円ほど。全身、顔にも使えます。

ウォーミングアップ2

重点的にやりたい場合は、こちらの動画を参考にしてください。

ドーミング

足の指を伸ばしたまま、土踏まずを浮かすトレーニングです。足の指が丸まらないように注意してください。

4:03~です。縦アーチ横アーチをクッと上げていくエクササイズです。

ローリングアップ、ローリングダウン

ローリングアップは、足を1番ポジションから「プリエ→ルルベ(ヒザを曲げたまま)→ヒザを伸ばす→1番ポジション」。

ロールダウンはその逆で「1番ポジション→ルルベ→プリエ(ルルベのまま)→かかとを下ろし1番プリエ→ひざを伸ばす」。

この動画の 5:44~ です。

10回×2セットがおすすめです。

指を上げるエクササイズ

足指をべったり床につけ、親指と小指を床につけたまま、人差し指・中指・薬指だけを持ち上げるエクササイズです。

難しい場合は、手で親指・小指を押さえてみてください。

10回×2セットです。

アンクルホップ

最後にジャンプ力にも直結する足裏のトレーニングの紹介です。

方法

・足を少し広げる
・足首をロック
・膝や股関節を使わずにジャンプ
・上半身の助けを借りて、肩甲骨を回しながら連続でジャンプ

負荷が高いのでまずは、5~10回を週2日ほどからはじめましょう。

ウォーミングアップからトレーニングまでの動画

トレーニング前のストレッチも入っている動画です。

足裏が温まり、可動域を広げることができます。

タオルとフットローラーを用意してください。

タオルギャザーの注意点

タオルギャザーは足指強化に役立ちます。

すごく有効ですが、指の丸まりやすい人がやってしまうとますます指が丸まってしまうことがあります。

矯正するのに時間がかかるので、まず足の指を伸ばすことを優先させましょう。足の指が伸びない人は、タオルギャザーではなく先ほど紹介したドーミングがオススメです。

ダンサー体型を目指す筋トレ・体幹トレ

ダンサーのような軽い身体、柔軟性、芯のある機能的な筋肉をつくる基本は、自体重トレーニング・体幹トレーニングです。ケガしづらく、自分の身体に合った筋肉がついていきます。

自体重トレーニングは、継続しやすいプリズナートレーニングがオススメです。

2,200円ほど。

オンラインレッスン

ルーティーンを作るためにプロを利用するのもオススメです。オンラインレッスンはコスパがかなりよく、一流の先生かつ、内容のクオリティが高いです。

業界大手のヨガスタジオ「LAVA」は月2,000円ほどでほぼ受け放題です。ヨガ・ピラティスでけでなくトレーニング・筋トレ・ストレッチなどヨガ以外のフィットネス動画も豊富です。

筋トレ・ストレッチ・ヨガ・ピラティスなどなど膨大なアーカイブを月3,000円ほどでほぼ受け放題できる「SOELU」。

身体づくりの知識をつけ、効率的かつ自分独自のメニューを作っていきましょう。

kazu

今回は「床反力とMP関節」についてでした。
ありがとうございました。

ダンサーのような身体を目指すトレーニング情報はこちらにまとめています。