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グレアム・マーフィー版「白鳥の湖」はどんなストーリー?
初心者でも楽しめる?
見どころは?

「白鳥の湖」はおとぎ話だけでなく、現代的な解釈版も多く登場しています。中でもかなり現代的なバージョンがグレアム・マーフィー版「白鳥の湖」です。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。

kazu

今回はグレアム・マーフィー版「白鳥の湖」の作品解説です。

※3分ほどで読み終わる記事です。

グレアム・マーフィー版「白鳥の湖」 あらすじと作品解説(→現在の記事)
第1幕・第2幕の見どころポイント
第3幕・第4幕の見どころポイント

ダイアナ妃をテーマにした「白鳥の湖」

グレアム・マーフィー版「白鳥の湖」はダイアナ妃、チャールズ皇太子、カミラ夫人(現皇太子妃)としか思えない人物が登場します。

kazu

僕もダイアナ妃のストーリーということに惹かれて観に行きました。

未だに人気のあるイギリス王室の故ダイアナ妃(1961-1997:享年36歳)。

グレアム・マーフィー版「白鳥の湖」は結婚式のシーンから始まります。25フィート(約7.6メートル)の長さのウェディング・ドレス。このドレスはダイアナ妃が実際に結婚式で着ていたドレスを彷彿ほうふつとさせます。

実際に観た感想は…、

めがね

度肝を抜かれてしまいました。

おとぎ話である「白鳥の湖」がここまでリアルな人間物語になるのか…、と感じたのを覚えています。愛情、希望、失意、孤独、喪失などさまざまな感情を思い起こす「白鳥の湖」です。

ちなみに当時のオーストラリア・バレエ団の芸術監督であったデヴィッド・マカリスターはダイアナ妃と対面したことがあります。そのときダイアナ妃はこう語ったそうです。「チャールズ皇太子のためにバレエ公演を企画したが、喜んでもらえなかった…。」

制作

初演:2002年9月17日

オーストラリア:ビクトリア・アート・センター州立劇場(オーストラリア・バレエ団)

振付:グレアム・マーフィー
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
台本:グレアム・マーフィー、ジャネット・ヴァーノン、クリスティアン・フレドリクソン
装置・衣装:クリスティアン・フレドリクソン
照明:ダミアン・クーパー

基本的な「白鳥の湖」のストーリーに関してはこちらをどうぞ。

通常の「白鳥の湖」は、第1幕と第3幕に主役のオデットは登場しません。ですが、マーフィー版は第1幕~第4幕の全編にわたりオデットが登場します。こうした理由もあり、通常の「白鳥の湖」より人物描写が深くなっています。

登場人物

オデット:イギリス王室の新たな一員でジークフリート王子の妻(ダイアナ妃がモデル)
ジークフリート王子:イギリス王室の皇太子(チャールズ皇太子がモデル)
ロットバルト男爵夫人:ジークフリート王子の不倫相手(カミラ夫人がモデル)

女王:ジークフリート王子の母
女王の夫
第一王女:ジークフリート王子の妹
第一王女の夫
公爵:貴族でジークフリート王子の友人
公爵の若い婚約者
伯爵:貴族でジークフリート王子の友人
伯爵の侍従
ロットバルト男爵夫人の夫
宮廷医:オデットの主治医

通常オデットとオディールは一人二役ですが、マーフィー版は2人で演じます。しかもオディールは通常版のロットバルトをかけ合わせ、ロットバルト男爵夫人という悪役として登場します。

オーストラリア・バレエ団創立40周年の作品

マーフィー版「白鳥の湖」はオーストラリア・バレエ団創立40年に合わせて制作されました。グレアム・マーフィーとオーストラリア・バレエ団の関係は深く、かなり個性的な「くるみ割り人形」の振付ですでに大成功していした。

グレアム・マーフィーは「白鳥の湖」にドラマ性をプラスしたいと感じていました。とくに第3幕はただ踊りをつなぎ合わているだけで内容が薄いと思っていました。

チャイコフスキーの音楽をリセット

グレアム・マーフィーはまず曲順にこだわります。現在踊られている「白鳥の湖」の多くはマリウス・プティパ版がもとになっています。プティパ版ではチャイコフスキーの音楽の曲順をかなり入れ替えています。

グレアム・マーフィーは原典版に帰り、チャイコフスキーが想定した曲順に戻しました。

具体的に言うと、第3幕にあった「黒鳥のパ・ド・ドゥ」が第1幕に戻されました。同じく第3幕の「マズルカ」「ナポリ」「スペイン」が削除され、「チャルダッシュ(ハンガリー)」が第1幕に移動し、あまり使われることがない「ロシア」が第3幕に追加されました。

休憩時間

休憩時間にも特徴があります。

通常版

第1幕、第2幕 → 休憩 → 第3幕 → 休憩 → 第4幕

マーフィー版

第1幕 →  休憩 → 第2幕 → 休憩 → 第3幕、第4幕

どのバージョンでも第3幕が一番盛り上がります。本来ならそのまま第4幕に行きたいところですが、主役であるオデット/オディールが一人二役のため衣装替えの時間が必要です。そのため第3幕と第4幕の間には休憩が入ります。

マーフィー版はオデットとオディールを別人が演じるため、第3幕で盛り上がったまま第4幕に突入します。観客の心が切れることなくフィナーレに向かうことができます。

グレアム・マーフィー版「白鳥の湖」のあらすじ

結婚式前夜。ジークフリート王子の寝室には愛人関係にあるロットバルト男爵夫人の姿が…。

結婚式当日。王室の人々がお祝いに駆けつける。オデットは厳格な王室に入ること、結婚に愛があるのか不安をかかえている。そんな中オデットは、王子がロットバルト男爵夫人と愛人関係にあることを知ってしまう…。実は王室の人々もふたりの関係を知っているのだが、しょうがないものとして扱っている。ゆがんだ世界を受け止められないオデットは発狂してしまう。そして、最後には湖に身を投げてしまう。

間一髪のところで助けられたオデット。精神病院に収容されてしまう。精神病院でも追いつめられるオデット。逃げ場は夢の中だけ…。夢の中のジークフリート王子は優しくなぐさめてくれるのであった。

数ヶ月後オデットはある決心をする。こっそり精神病院を抜け出し、王子に会いに行く。発狂したはずのオデットが自信にあふれた姿で王子の前に現れる。その姿に感動する王子。ロットバルト男爵夫人を捨て、オデットのもとに戻ってくるのであった。

しかし、一度壊れてしまったオデットの心が完全に戻ることはなかった。束の間の幸せを感じたオデットだったが、ゆがんだ世界に戻ることを拒み、今度こそ湖に身を投げ死んでしまう。残された王子はオデットを想い、障害独身をつらぬくのであった。

さらに詳しい内容は別ページで紹介しています。

DVD

グレアム・マーフィー版「白鳥の湖」は2008年にDVD化されています。

映像が少し見づらいこともありますが、オススメです。

またグレアム・マーフィー版「白鳥の湖」が入っているバレエ映画があります。

現在廃盤となっています。バレエ映画としてもおもしろく主演のツァオ・チー(当時バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)も魅力的です。

kazu

以上、グレアム・マーフィー版「白鳥の湖」でした。
ありがとうございました。