ミュージカル『ホリデイ・イン』(2017年)ミュージカルの教科書的作品
jazz

『ホリデイ・イン』( 2017年)の内容は?
特徴は?
見どころは?

ブロードウェイの舞台を映像化した作品『ホリデイ・イン』。

2017年の作品が、2023年日本で公開されています。

ミュージカルの定番シーンを詰め込んだような作品で、『ホワイト・クリスマス』のようなスタンダードナンバー(定番曲)が使われるので見やすいです。

歌・ダンスたっぷりで、コメディ感の強い楽しい作品です。

記事を書いているのは……

元劇団四季、テーマパークダンサー。社割を使えたときは週2回 映画館へ行っていました。最近はネットで映画をたっぷり。

kazu

今回は、『ホリデイ・イン』( 2017年)の内容・感想・特徴についてです。

※ 3分ほどで読み終わります。

内容

ショー・ビジネスの世界でトリオとして活躍するジム、親友のテッド、恋人のルイーズ。

キャリアは順調だが、ジムはルイーズとの結婚を考え引退。コネティカット州の農場で暮らすことに。

しかし、ショービズ界を離れられないルイーズに振られてしまう。農場もうまくいかない。

そんな中、ビジネスを思いつく。

農場をホテルに改築し、アメリカの祝日のみに営業。売りは本場仕込みのショー。

このホテルの名前が「ホリデイ・イン」。

リンダという魅力的な学校教師と出会いショーの仲間に引き入れる。

しかし、ジムの親友テッドが現れ、ダンスパートナーとしてリンダに目を付ける。リンダには女優になる夢を諦めた過去があり、ハリウッド行きを持ちかけられ心が揺れ動く。

ジムの新たな恋はどうなるのか……。

数々の名曲

『ホワイト・クリスマス』だけでなく、現在もスタンダード・ナンバーとして歌い継がれる曲のオンパレードです。

『ハッピー・ホリデイ』
『チーク・トゥー・チーク』
『ステッピング・アウト・ウィズ・マイ・ベイビー』
『イースターパレード』などなど

他の映画でもその後使用されています。

スタッフ

演出・脚本:ゴードン・グリーンバーグ
脚本:チャド・ホッジ
音楽・作詞:アーヴィング・バーリン
振付:デニス・ジョーンズ

アーヴィング・バーリン( 1888年 – 1989年 )

生涯で1,000曲以上を制作し、劇中歌の『ホワイト・クリスマス』はアカデミー賞(1942年)を受賞。
『ゴッド・ブレス・アメリカ』の作曲者としても有名です。1968年にグラミーの功労賞も受賞しています。

原作『スイング・ホテル』

1942年のミュージカル映画が原作となっています。日本では原題の『ホリデイ・イン(Holiday Inn)』ではなく『スイング・ホテル』という邦題で公開されました。

ミュージカル界のレジェンドである、ビング・クロスビーとフレッド・アステアが主演です。

ジム:ビング・クロスビー
テッド:フレッド・アステア
リンダ:マージョリー・レイノルズ
ライラ:ヴァージニア・デール

ビング・クロスビーが歌を担当し、フレッド・アステアが踊りを担当します。

マージョリー・レイノルズは、フレッド・アステアのダンス・パートナーとしての堂々たる踊り。歌は吹替でマーサ・ミアーズが歌います。

ヴァージニア・デールも見事なダンスを披露しています。

物語はかなりスピーディーに展開し、歌に踊りにてんこ盛りで、とても好きな作品です。

ただ、気になるシーンもあります。黒人の少女の仮装が上半身見えてしまっていたり、黒人のお手伝いさんの描写が大げさだったり。

悪名高いミンストレル・ショーも登場します。ミンストレル・ショーとは白人が黒塗りをして大げさに黒人を演じるショーです。詳しくはこちらをどうぞ。

ジャズダンスの歴史(1840年代~1900年)ジッグダンス、ソフトシューダンスの発展

カットされていないからこそ当時の空気を感じることができる作品です。

500円ほど。

2017年版は、原作とほぼ同じストーリーです。

圧巻の踊り

2017年版に話を戻します。

振付のデニス・ジョーンズは、トニー賞最優秀振付賞にノミネートされています。

タップ、バレエ、シアターダンス、レビューショー、ラテン、社交ダンスなどが作品につまっています。

映画と違いアンサンブルのダンサーが多く登場します。パフォーマンスの熱量が高く、かなり見応えがありました。

衣装もとても豪華で、踊りとの相性もバツグンでした。

出演者

役名:俳優

ジム:ブライス・ピンカム
テッド:コービン・ブルー
リンダ:ローラ・リー・ゲイヤー
ライラ:ミーガン・シコラ

ジムを演じるブライス・ピンカムがどことなくビング・クロスビーに似ています。

そして注目は、テッド役のコービン・ブルーです。

『ハイスクール・ミュージカル』シリーズでチャドを演じていました。ボンバーヘッドが、コービン・ブルーです。

このコービンが貫禄のある姿に。爆竹ダンスです。

ダンスも存在感も見事でした。

ちなみにレジェンド、フレッド・アステア版はこちら。

圧巻。

感想(ネタバレあり)

場面場面は素晴らしいですが、全体の流れがちぐはぐしている印象でした。

映画版は作曲のアーヴィング・バーリンが作曲した『祝日の歌』に合わせ脚本が構成されています。シーズンごとにショーがあり、次々と見せることが目的のひとつになっています。

映画版はかなりスピーディーに物語が進行していくのに対し、2017年版は上演時間が 30分ほど長くなっているので、間延び感があり、ただつなげている感じがありました。

キャラクターの変化

映画版は、ジム、テッド、リンダ、ライラが人間的に描かれます。どのキャラクターもズルい部分があります。

ですが、2017年版ではジムとリンダの小狡こずるい部分が漂白され、リンダはかなり保守的な人物になっています。特にリンダの設定変更が、あまり効果的でないように思います。

演出

舞台なのでしょうがないですが、演技に熱が入りすぎていてお腹いっぱいになってしまいました。

それに反し、不思議な演技もあります。

例えば、ジムがピアノを弾くのですが、弾いているように見えない。このような演技がところどころにあるので、入り込めないことも多かったです。

舞台を映像で録画しているので、観客の反応もそのまま入っています。海外ドラマ『フルハウス』や『フレンズ』のように観客の笑い声がかなり入っているのですが、そこまで笑えるかな、と置いていかれてしまいました。

また、お手伝いさんのルイーズを演じるミーガン・ローレンスがなんとも不気味でした。

かなり保守的(最大級のネタバレ注意)

リンダが保守的になったと同様、内容もかなり保守的です。その割に、キスシーンは濃厚……。

リンダは最後、結婚か仕事かを迫られます。

映画版において、リンダはハリウッド行きを断ろうとしていました。ですが、信頼するジムの妨害にあい、ハリウッドに行ってしまいます。

2017年版でも妨害されるのですが、邪魔するのはお手伝いさんです。それでもリンダは自分の意志でハリウッドに行ってしまいます。この変更でリンダの心の動きがよくわからなくなっていました。

しかもリンダは覚悟を決めて行ったはずなのに、ジムが迎えに来ると撮影を放り出し、ジムの元へ帰ります。

映画でもジムが撮影所に乗り込んでくるのですが、その後放り出したのか、撮影は続けたのかの描写はありません。

2017年版では投げ出してしまっているので、なんとも後味の悪い感じです。

仕事を諦め、家庭に入る。映画版よりもかなり保守的な内容になっています。

ほんのちょっとした脚本の違いです。それが大きな違いになっていました。

現実のブロードウェイ

アメリカに留学していた頃も感じましたが、アメリカは思いのほか保守的です。

ニューヨークのブロードウェイはアメリカ人の中でも観光名所です。

大型観光バスに乗り、ミュージカルを見に行くツアーがあります。『マンマ・ミーア』や『ジャージー・ボーイズ』などの作品が選ばれることが多いです。

上記 2作品は保守的でありつつも新たな価値観を提供しますが、『ホリデイ・イン』はかなり保守的な印象です。

ブロードウェイでは新たな試みが日々行われているので、正直、この作品が 2017年に上演されたことがショックでした。

DVD

現在、DVDの販売や配信はありません。

オリジナル版はこちら。

アマゾンプライムで配信中です。(変更の可能性あり)

動画配信サイトを使えばお得に見ることができます。

無料期間などでぜひ試してみてください。

kazu

今回は、『ホリデイ・イン』( 2017年)についてでした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。

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