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ジャズダンスとは?
定義は?
歴史は?
ジャズダンスは一見「ジャズミュージックに合わせて踊るダンス」と捉えられがちです。正解なのですが、現在ではさら多様な文化・歴史が吸収されその枠からかなりはみ出しています。
元劇団四季、テーマパークダンサー。出演回数は5,000回以上。ダンス歴は20年以上ですが、まだまだジャズダンスを勉強中。
今回は、『起源~1840年代|ジャズダンスの歴史』を紹介します。
※ 3分ほどで読み終わります。私自身の実体験とリサーチに基づいた内容です。どうぞお楽しみください!
ジャズダンスとは?
ジャズダンスの誕生は1917年とされています。当初は「ジャズミュージックに合わせて踊るダンス」として定着しましたが、今日ではその定義は大きく広がり、さまざまなダンスジャンルの要素を取り込みながら、あらゆるダンスをつなぐ存在となっています。アメリカ文化の多様性や歴史、流行した音楽の影響が、ジャズダンスの進化を促します。
実は、1917年まではジャズダンスとジャズミュージックはほぼ同じルーツをたどっていました。
起源:ジャズダンスを支える2つの要素
ジャズダンスの根底には、次の2つの重要な要素があります。
- アフリカ大陸から連れてこられた黒人奴隷たち
- アメリカに逃れたアイルランド人たち
アフリカの影響とアフリカンダンス
黒人奴隷の歴史と影響
1600年代、黒人奴隷は家族や部族、言語を奪われ、無理やりアメリカへ連れてこられました。
- 独立宣言時(1774年)には約75万人、奴隷解放(1865年)時には約400万人が存在。
- 奴隷船での死亡率は8~25%とされ、推定1200万〜2000万人が大西洋を渡りました。
特にサハラ以南・西部の地域からは、若い男性が多く連れてこられ、その中で伝統のアフリカンダンスが持ち込まれました。
アフリカンダンスの特徴
各部族ごとに独自の動きを持つアフリカンダンスは、「リズム」を核としています。足をはだしで大地を感じながら踊る様子は、まるで身体全体から太鼓のリズムが鳴り響くかのようです。主な踊りの地域はガンビア、マリ、シエラレオネ、セネガルで、儀式やコミュニケーション、歴史伝承、さらには日常の喜びとして継承されてきました。
主な4つの特徴:
- 大地を踏み鳴らす
- 低い重心で踊る
- 膝をしっかり曲げる
- 身体を激しく動かす
さらに、専門家ジョフリー・ゴアールは、以下の6つの特徴でアフリカンダンスを定義しています。
- 足の裏を完全に接地する
- かがんだ姿勢を保つ
- 動物の動きを模倣する
- 自由で即興な踊り
- 腕は肩、足はヒップからエネルギッシュに動かす
- 勢いあるリズムを刻む
当時、ヨーロッパではこれらの踊りが「野蛮」と評されましたが、そのエネルギーこそが後のジャズダンスの原点です。
1740年代:禁止条例とストンプの誕生
1740年代、黒人奴隷によるドラム演奏とアフリカンダンスは禁止されました。特にドラムは音量も大きく、人々を集める効果、一体感を作る効果があります。しかし、奴隷たちの「踊りたい」という情熱は衰えず、禁止に触れない方法として「ストンプ」が生まれました。
ストンプは、足踏みや手拍子を用いてリズムを刻むダンスです。禁止されたドラムの代替として、奴隷たちの一体感や情報伝達の手段ともなりました。
1817年:ニューオリンズで解放された自由な踊り
1817年、ルイジアナ州ニューオリンズでは、黒人奴隷が道路(コンゴ広場)で自由に踊ることが許可されました。
これにより、アフリカンダンスのセクシーな腰振りなどの動きが発展し、場所を変えることでダンスはさらなる進化を遂げました。
ヨーロッパからの影響:アイルランドとジッグダンス
アイルランドの歴史的背景
1700年代、イングランドから追放されたアイルランド人がアメリカ大陸に渡ります。特に1845年~1849年の大飢饉を経験した後、アイルランド国民の20%が餓死したといわれます。生き残った人々の20%ほどが経済的に苦しみ国外に脱出する人が急増します。1850年代からの70年間ほどで3,500万人が移民としてアメリカに根付いていきました。
ジッグダンスの進化
ジッグダンスは、ケルト文化を背景に、木靴を履いて床を踏み鳴らす踊りとして始まりました。数百年かけて技術が洗練され、革靴が普及すると、革靴の先に硬貨を取り付けて音を出すタップダンスへと進化。省エネのため上半身を抑える特徴も、寒冷な気候の中で自然に定着しました。さらに、この伝統は洗練され、後のアイリッシュダンス(例:リバーダンス)へと発展していきました。
アメリカの伝統舞踊とジャズダンスの誕生
アメリカでは、「ヴァナキュラーダンス」と呼ばれる伝統舞踊が、黒人奴隷の踊りとジッグダンスの融合により形作られました。ヴァナキュラー(vernacular)とは「土着の」「その土地固有の」という意味です。
ジャズダンスの誕生(1830年代)
「ジャズ」という言葉がいつ登場して、誰が言いはじめたのかは謎のままです。1830年代に登場したとされ、ジャズのつづりは「Jass」でした。
ジャズの定義:足のリズム、手のリズム、歌のリズム、3つの要素を組み合わせたもの
1917年、オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドが「 Jazz 」と使いはじめ浸透します。そのためジャズダンスの正式な誕生は、1917年という場合もあります。
1840年代:ソフトシューダンスの誕生
ソフトシューダンスは、ジッグダンスから新たに生まれたムーブメントです。
その特徴は、音を立てずにしなやかに踊ること。足の裏を地面にしっかり吸着させながら、跳ねることなく優雅に動くスタイルは、従来のタップダンスとは一線を画します。
また、木靴や硬い靴を使わないことから「ソフトシュー」とも呼ばれ、後にマイケル・ジャクソンのムーンウォークにも影響を与えました。
ジャズダンスの定義と進化
最終的に、ジャズダンスはその時代ごとの流行や文化を取り込みながら、常に進化し続けるダイナミックな表現形式となりました。
- ヒップホップが誕生し、ジャズダンスの枠を超えた新たなジャンルが生まれるなど、多様なスタイルが展開しています。
- ジャズヒップホップやヒップホップジャズといった、各要素が強調されたスタイルも存在し、自由な表現が可能です。
この多様性こそが、ジャズダンスの大きな魅力であり、あなた自身のスタイルを追求する自由を提供します。
ジャズダンスは様々なダンスをつなぐ架け橋であり、表現の自由度が非常に高いジャンルです。技術力だけでなく、ストーリーや音楽の情感、そして自分自身の個性をいかに表現するかが評価されるため、定義にこだわりすぎず、自由に自分らしいダンスを追求できるのが魅力です。
今回は、「起源~1840年代のジャズダンスの歴史:ジャズダンスの登場とその定義」について解説しました。伝統的なルーツと時代の流れを取り入れたジャズダンスの進化は、技術だけでなく表現力の幅広さが大きな魅力となっています。
次回の記事「1840年代~1900年代のジャズダンスの歴史」では、さらに深い視点からジャズダンスの変遷をご紹介します。どうぞご期待ください!
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