「ラ・バヤデール」の第1幕は?
見どころは?
バッチバチの演技が見られる?
インドの雰囲気が漂う古典バレエ「ラ・バヤデール」。
第1幕は昼ドラのようなドロドロとした展開になっていきます…。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。
今回は、バレエ「ラ・バヤデール」第1幕の見どころポイントに関してです。
※3分ほどで読み終わります。
自分の運命は自分で決める
「ラ・バヤデールは」1877年が初演で、この時代の新しい女性像を反映したような内容になっていると言われます。
勇敢なはずの戦士ソロルが運命に逆らうことができず、弱々しく見えるニキヤが意思を貫く。
現代にも通じるテーマです。
ヒロインのニキヤはひそかに戦士ソロルと愛し合っています。ですが、厳格なカースト制が2人を邪魔します。
ソロルは領主に従い、領主の娘との結婚を受け入れます。
それに対し、ニキヤはソロルと別れるよう命令されても受け入れず、自らの死をもって運命を決めていきます。
登場人物
バヤデールとは、寺院に仕える踊り子のことです。
ニキヤ:神殿の舞姫(バヤデール)
ソロル:戦士
ガムザッティ:ラジャの娘
ハイ・ブラーミン:大僧正
ラジャ:国王
マグダヴェーヤ:苦行僧の長
アヤ:ガムザッティの召使
ソロルの友人
第1幕 第1場:ストーリー
古代インド。
勇敢な戦士ソロルが虎狩りに向かう。出発前、ソロルは苦行僧の1人に舞姫ニキヤを呼んでくるよう頼む。しかし、大僧正と僧たちが寺院から出てきてしまいソロルは身を隠す。
僧侶たちは聖なる炎に祈りを捧げる。そこにバヤデール(踊り子)たちも加わる。ひときわ目立つのがニキヤで、大僧正は美しさに魅せられている。ニキヤに言い寄る大僧正。しかし、ニキヤには愛を誓うソロルがいるため拒否をする。
祈りが終わるとバヤデールたちは苦行僧に聖なる水を差し出す。そのとき苦行僧がニキヤにソロルがいることを伝える。
祈りを終えた一同は、寺院の中に戻っていく。しかし、すぐにニキヤは寺院の外に出てくる。そこで再会するニキヤとソロル。2人で愛を確かめ合う。それを物陰から見る大僧正。嫉妬の感情が燃え上がり、どうにかしてやろうと誓うのであった。
唯一の愛あふれるシーン
ニキヤは大僧正の前では高貴に踊りますが、ソロルの前では自由に踊ります。最初のニキヤとソロルのシーンは「ラ・バヤデール」で唯一の愛にあふれるシーンです。
「ラ・バヤデール」では女性ダンサーが背中を柔軟に使います。クラシックバレエのポジションよりもグーッと反ることでインドのエキゾチックな雰囲気が増し、色気を出しています。
インドを連想させるような振付がたくさん入っているのが特徴です。
ミラノ・スカラ座バレエ団より、スヴェトラーノフとロベルト・ボッレ。マカロワ版です。ニキヤがソロルを探し、2人で踊るシーンです。
第1幕 第2場:ストーリー
ラジャの宮殿。
ラジャは娘のガムザッティに戦士ソロルと結婚するよう伝える。肖像画を気に入ったムザッティは快く受け入れる。
ソロルが呼ばれ、ラジャからガムザッティと結婚するよう告げられる。ニキヤを愛しているソロルは困惑するものの、ラジャの命令に逆らうことができない。なによりガムザッティの美しさを否定することはできなかった……。
ラジャに呼び出されるガムザッティとソロル。2人の結婚が正式に決定する。
大僧正が呼ばれ、ラジャと話をしている。「ソロルにはニキヤという恋人がいる」とラジャに密告する大僧正。ソロルに嫉妬した大僧正の発言から、ニキヤはラジャの怒りを買ってしまう。そして、この話をガムザッティが聞いてしまう…。
ガムザッティがニキヤを呼び出す。宝石を与え、ソロルを諦めるよう詰め寄る。
断るニキヤ。プライドを捨て懇願するガムザッティ。
言うことをどうしてもきかないニキヤに激怒するガムザッティ。もみ合ううち、ニキヤが短剣でガムザッティに襲いかかってしまう。
かろうじて侍女が止めに入り、ニキヤはとんでもないことをしたことに気づき逃げていく。
ガムザッティはニキヤを亡き者にすることを誓うのであった。
バチバチの戦い
最大の見せ場はニキヤとガムザッティの直接対決です。
ニキヤはベテランダンサーが配されることが多く、ガムザッティは若手が入ることも多いです。ですが、そんな状況でも遠慮なくバチバチと演技合戦があると、舞台がどんどんおもしろくなります。
パリオペラ座・バレエ団、オーレリ・デュポンとリュドミラ・パリエロ。ヌレエフ版です。
マイムが多用されていますが、マイムの意味を知らずともわかるような展開になっています。インド風の挨拶も特徴です。
乳母:「舞姫を呼んできました」
ガムザッティ:「連れて来なさい」
・うやうやしく挨拶するニキヤ
ガムザッティ:「そばに来なさい」
・ニキヤの美しさに戸惑ってしまうガムザッティ
ガムザッティ:「宮殿を案内しましょう」
・ニキヤにソロルの肖像画を見せる
ガムザッティ:「このヴェールはソロルと私が結婚する証。この美しい宮殿は私のもの。それに比べてあなたは?ただの舞姫でしかない」
ニキヤ:「お待ちになってください。ソロルは私と神に永遠の愛を誓いました」
ガムザッティ:「別れてちょうだい」
・ニキヤに手をあげるガムザッティ
ガムザッティ:「宝石をあげるから。受け取りなさい」
・ナイフを振り上げるニキヤ
・我に返るニキヤ
ガムザッティ:「絶対にニキヤを殺してやる」
第2場はさまざまなバージョンがあります。ガムザッティとソロルの結婚が決まったとき、ニキヤが呼ばれるバージョンもあります。このときソロルはそっと隠れ、何も知らないニキヤは踊りを披露、ガムザッティも喜びます。さらにドラマチックな展開になっています。
フルバージョンでオススメはこちら
グリゴローヴィチ版、ヌレエフ版、マカロワ版の3つのバージョンがおススメです。
ボリショイ・バレエ団(グリゴローヴィチ版)
スヴェトラーナ・ザハロワ、マリア・アレクサンドロワ、ウラディスラフ・ラントラートフ主演。ニキヤとガムザッティがとにかく豪華です。
パリ・オペラ座バレエ団(ヌレエフ版)
ルドルフ・ヌレエフの遺作となった「ラ・バヤデール」。このDVDは初演版です。1994年に収録されたバージョンですが、現在も発売され続けています。
イザベル・ゲラン、ローラン・イレール、エリザベート・プラテルが素晴らしいです。若き日のアニエス・ルテステュも登場しています。
英国ロイヤル・バレエ団(マカロワ版)
マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ、ナタリア・オシポワ主演。
ナターリヤ・オシポワの演技がとくに素晴らしく、初めてガムザッティに同情しました。プリンシパルであるヤスミン・ナグディ、高田茜さんが「影の王国」のソリストとして登場していて豪華です。

「ラ・バヤデール」第1幕のあらすじと見どころ解説でした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。