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「椿姫」の詳しいストーリーは?
どの音楽が使われている?
見どころは?

ジョン・ノイマイヤーの傑作といわれるバレエ「椿姫」です。主役のマルグリットは円熟期を迎えた女性ダンサーが演じ、青くささが残る青年は若手の男性ダンサーが演じます。今まで15回以上観ていますが、どの公演も本当に素晴らしく、記憶にしっかりと残っています。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり。

kazu

今回はノイマイヤー版「椿姫」詳しい作品解説です。

※3分ほどで読み終わる記事です。

作品について

作品全体の解説はこちらで紹介しています。

今回は内容をかなり詳しく紹介していきたいと思います。曲名も一緒に載せています。

プロローグ

19世紀のパリ。

音楽

「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58より第3楽章ラルゴ」

ある住まいで遺品の競売が行われている。家の持ち主は高級娼婦のマルグリット・ゴーティエといい、結核が原因で亡くなってしまった。そこに飛び込んでくるひとりの青年。青年の名前はアルマン・デュヴァル。貴族の出身で、マルグリットと深い仲であった。

アルマンはマルグリットとのヴァリティエ座という劇場での出会いから回想をはじめる。

第1幕

音楽

「ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21」

美しく奔放な高級娼婦のマルグリットのまわりは金持ちの男性たちであふれている。心配なのは時々おそってくる咳の発作である。経験豊富なマルグリットと対象的な青臭あおくさいアルマン。出会った時からお互いになんとなく惹かれ始めるマルグリットとアルマン。

上演後、マルグリットは友人のプリュダンスとガストンに頼みアルマンを自宅に招待する。最初はアルマンのまぶしすぎる純愛をからかっていたマルグリット。しかし、ついにマルグリットもアルマンを受け入れるようになる。ふたりの関係は深くなっていくものの、マルグリットが生活を変えることはない。パトロンと相変わらず豪華な生活を続けている。

そんなときパトロンである老公爵がマルグリットの健康を心配し、田舎の別荘を用意してくれることになる。仲間を引き連れ田舎に静養しに行くマルグリットにアルマンもついていく。

青のパ・ド・ドゥ

第1幕の大きなみどころはマルグリットがアルマンに心を許すパ・ド・ドゥです。最初は身体をこわばらせていたマルグリットが後半になるとアルマンに身体をあずけるリフトへとつながっていきます。

シュツットガルト・バレエ団よりマリア・アイシュバルトとフリーデマン・フォーゲル。

第2幕

音楽

「ワルツ第2番『華麗なるワルツ』変イ長調 作品34の1」
「『3つのエコセーズ』作品72の3」
「ワルツ第4番『華麗なるワルツ』ヘ長調 作品34の3」
「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58より第3楽章ラルゴ」
「24のプレリュードより 第2番 イ短調 作品28の2」
「24のプレリュードより 第17番 変イ長調 作品28の17」
「24のプレリュードより 第15番 変ニ長調 作品28の15」
「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58より第3楽章ラルゴ」
「24のプレリュードより 第2番 イ短調 作品28の2」
「24のプレリュードより 第24番 ニ短調 作品28の24」

別荘で相変わらず豪華な生活を続けるマルグリット。そのそばにはいつもアルマンがいる。幸せな時間を過ごす、マルグリットとアルマンと仲間たち。しかし、そんなマルグリットをこころよく思わない老公爵がアルマンを追い出そうとする。

そんなとき、マルグリットがアルマンの肩を持ち、アルマンを愛していることをみんなの前で告げる。アルマンとの愛を公表したことで誰からの援助もなくなったマルグリット。それでもマルグリットは幸せだった。

ここでマルグリットに手紙が届く。ふたりのことを知ったアルマンの父デュヴァル氏からだった。アルマンが外出中に訪ねてきたデュヴァル氏。貴族の息子と高級娼婦の愛を認めるわけにはいかないため、息子の将来の邪魔をしないようマルグリットを説得する。マルグリットは自分の愛を優先することでアルマンの人生をつぶすことはできないと悟る。アルマンへの愛ゆえにマルグリットはふたりの関係を終わらせることを決意するのだった。

最後にアルマンと幸せな時間を過ごすマルグリット。アルマンを乗馬に送り出すと、そっと荷物をまとめパリに戻ってしまうのであった。戻ってきたアルマンはマルグリットからの手紙を受け取る。そこには高級娼婦に戻ることが書かれている。急いでパリに戻るアルマン。到着したアルマンは客をとるマルグリットを見つけてしまうのだった。

白のパ・ド・ドゥ

作品全体で一番幸せなシーンです。とくに結末を知りながらこのシーンを観ているととにかく悲しいシーンです。

パリ・オペラ座バレエ団よりイザベル・シアラヴォラとカール・パケット。

第3幕

音楽

「ポーランドの歌による大幻想曲 イ長調 作品13よりラルゴ・マ・ノン・トロッポ」
「ポーランドの歌による大幻想曲 イ長調 作品13よりアンダンティーノ」
「ポーランドの歌による大幻想曲 イ長調 作品13よりアレグレット」
「ポーランドの歌による大幻想曲 イ長調 作品13よりヴィヴァーチェ」
「バラード第1番 ト短調 作品23」
「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22」
「ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11より第2楽章」
「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58より第3楽章ラルゴ」

マルグリットとアルマンが別れてから時間がたった。マルグリットはすでに結核におかされ、死がせまっていることが見てとれる。マルグリットへの怒りがおさまらないアルマンは、わざとマルグリットの友人であるオリンピアと付き合っている。そんな時、マルグリットとアルマンはパリのシャンゼリゼの街角でたまたまた再会してしまう。

その状況に耐えられないマルグリットはアルマンに傷つけるのをやめてほしいと部屋まで頼みに行く。アルマンはやはりマルグリットを愛していることに気づく。アルマンを愛しているマルグリットは、また関係を持ってしまう。しかし、我に返ったマルグリットはまたもアルマンの元を去ってしまうのであった。

今度こそマルグリットを許すことのできなアルマン。社交場でふたりはまたも再会してしまう。その状況に耐えられないアルマンは酒で酔っ払っている。そしてマルグリットに封筒を手渡す。マルグリットは期待を込めてその封筒を開ける。しかし、封筒の中身は札束だった…。それは高級娼婦に対する報酬で、全員の前でマルグリットを侮辱ぶじょくする行為だった。

アルマンの回想はここで終わる…。

黒のパ・ド・ドゥ

マルグリットがアルマンの部屋に訪ねに行くシーンです。お互いを食い尽くすようなパ・ド・ドゥ…。身体は近くいのに、なぜか心が遠くにあるように感じてしまうふたりです…。

本家ハンブルク・バレエ団よりシルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコ。振付のノイマイヤーを芸術監督に持つハンブルク・バレエ団の「椿姫」は格別です。

マルグリットの日記

ふたたびオークション会場。するとそこにマルグリットの使用人が現れる…。そして、マルグリットの日記をアルマンに渡すのであった。

日記にはマルグリットの必死の思いが記されていた。マルグリットの願いはアルマンにもう一度会うこと。フラフラの身体でもアルマンと出会った劇場に出かけることもあった。身体が弱るにつれ、金銭的にも困窮こんきゅうしていくマルグリット。

日記には死への不安とアルマンへの想いが綴られていた。しかしマルグリットの想いが通じることはなく、孤独に死を迎えるのであった…。

残されたアルマンは日記をそっと閉じることしかできない。

劇中劇の「マノン」

「椿姫」には内容がかなり似ている「マノン・レスコー」という作品があります。主人公のマノンはマルグリットと同じく高級娼婦です。フランスが舞台の作品で、神学生であるハンサムなデ・グリューとマノンは恋に落ちます。

しかし、貧乏な生活に耐えられないマノンは高級娼婦としての道を選びます。マノンもマノンの兄もお金に対する執着が強すぎて、犯罪に手を染めます。その結果兄は殺され、マノンはアメリカに流刑るけいになってしまいます。

それでもデ・グリューはマノンから離れることはありません。デ・グリューはアメリカまでマノンを追っていきますが、マノンは疲れ切ってデ・グリューの手の中で息を引き取ります。

効果的なシーン

振付のジョン・ノイマイヤーはこの「マノン・レスコー」という作品を「椿姫」の中にところどころ挿入しています。このシーンが効果的にマルグリットの心情を表します。「マノン」では主役2人とも破滅してしまいます。

なぜマルグリットはアルマンの手に飛び込まなかったのか…。マルグリットはマノンほど自分勝手な選択をせず、冷静に判断をしていきます…。マルグリットとマノンが対比されることで、マルグリットの愛の深さを感じることができます。

オススメDVD

パリ・オペラ座バレエ団による2008年「椿姫」のDVD作品です。

アニエス・ルテステュによるマルグリットと、ステファン・ビュリオンによるアルマン。

2人ともハマり役というだけでなく、周りを固めるキャストも最高の布陣です。ちなみにアニエス・ルテステュは日本での最終公演でステファン・ビュリオンと一緒に「椿姫」を踊りました。僕も観に行きました。

kazu

以上、ノイマイヤー版「椿姫」の詳しい内容解説でした。
ありがとうございました。