マクミラン版「ロミオとジュリエット」第3幕のストーリーは?
ジュリエットの視点で物語が進んでいく?
見どころポイントは?
踊りより演劇的な要素が強くなるバレエ版「ロミオとジュリエット」の第3幕。
最後はすれ違うふたりの悲しい別れによって、とても静かに、とても重く、幕が閉じていきます。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります
今回はケネス・マクミラン版「ロミオとジュリエット」第3幕のストーリーと見どころポイントについてです。
※3分ほどで読み終わります。
第3幕
第3幕は、ロミオとジュリエットが出会ってから3日目~5日目まで描かれます。
物語はクライマックスへと向かいます。
第2幕に関してはこちらをどうぞ。
ロミオとジュリエットが出会って2日目に結婚を勝手にしてしまう。そして、マキューシオとティボルトが決闘の末、死んでしまう。第2幕のあらすじとポイントをご紹介します。
主なキャラクター
ジュリエット
ティボルト:ジュリエットのいとこ
パリス:ジュリエットの婚約者
キャピュレット卿:ジュリエットの父
キャピュレット夫人:ジュリエットの母
乳母:ジュリエットを支える存在
ロザライン:ロミオが一目惚れする
ロミオ
マキューシオ:ロミオの友人
ベンヴォーリオ:ロミオのいとこ
三人の娼婦:ロミオと仲がいい
ローレンス神父:結婚をとりしきり、毒を手配する
エスカラス(ヴェローナ大公):ヴェローナを統治
第3幕は4つのシーンに分かれていて、40分ほどあります。
第3幕 第1場:ジュリエットの寝室
夜明け前、ジュリエットと一夜を過ごしたロミオがひとり目を覚ます。
ジュリエットに何も告げずに部屋を出ていこうとするロミオ。
ふとジュリエットが起き、ロミオと一緒に踊る。
そして朝日が昇り始めるとロミオは出ていってしまう。
ポイント
このシーンは2人にとって最後の時間です。2人が別れたあと、お互いに生きている状態で会うことはありません。
音楽はバルコニーシーンの旋律が使われつつ、時にマイナーな音が入ります。
ヤスミン・ナグディによるジュリエット、マシュー・ボールによるロミオです。
この後、ロミオは最後のシーンまで登場しません。
ジュリエットの心の動き
ジュリエットが1人になってからは、ジュリエットの視点で描かれていきます。
ジュリエットがロミオを見送る
→パリスと無理やり結婚させられそうになり全力で拒否
→ローレンス神父に相談し、仮死状態の薬を手に入れる
→パリスとの結婚を承諾したかのようにみせる
→仮死状態になる薬を飲む
この一連の流れは、踊りを超え、まるで演劇を観ているかのようになります。
第3幕 第1場:ジュリエットの寝室の続き(パリス登場)
何も知らないジュリエットの両親が婚約者のパリスを連れてくる。
勝手に結婚を決めてしまう両親たち。しかしジュリエットにその気はない。
とはいえ両親はジュリエットのわがままを許さない。言うことを聞かない娘に腹を立てる両親。
立場上かばいきれない乳母。
最後にお父さんが娘の頬をたたき、みんなが部屋から出ていってしまう。
ポイント
このシーンではジュリエットがパリスと踊ります。ですが、ジュリエットはまったく踊る気がありません。
死んだように踊るジュリエットとそれをサポートするパリス。
踊る女優と呼ばれたアレッサンドラ・フェリによるジュリエット。
直前のロミオとのシーンとのギャップがすごいシーンです。
第3幕 第1場:ジュリエットの寝室の続き(ひとり残される)
部屋に取り残されたジュリエット。
ここでこれからどうするか、14歳の少女がひとりで考える。
ポイント
このシーンでジュリエットがただベッドに腰掛け舞台正面を見続けるシーンがあります。
その時間は40秒ほど。
ベッドに座り、ただ正面を見続けます。ジュリエットの表情が注目ポイントです。

ジュリエットを何十年も踊り続けた吉田都さんがとても重要なシーン、と語っていました。
第3幕 第2場:教会
ローレンス神父に助けを求めるジュリエット。神父がある作戦を思いつく。
「ジュリエットが仮死状態になり、葬儀を行う。その後ロミオと合流し、一緒に逃げろ」というもの。
最初は怖がるジュリエットだったが、この方法しかないと思い仮死状態になる薬を手に入れる。
ポイント
本当なら神父がロミオにこの作戦を伝えるはずでしたが、うまく伝わることはありません。結果としてロミオに情報が届かず、ふたりとも死んでしまいます。

ローレンス神父は何をやってんだか、という…。
ロミオとジュリエットが死ぬことでキャピュレット家とモンタギュー家は和解への道を進むのか…。
もし二人がハッピーエンドになっていたら両家はもっと仲が悪くなったのか…。いろいろと想像してしまうシーンです。
第3幕 第2場:教会の続き(薬を飲む)
ジュリエットの両親、パリス、乳母が部屋に入ってくる。ついにジュリエットはパリスとの結婚を受け入れる。
もちろん、パリスとの結婚の約束はただやり過ごすためだけのもの。
ひとり部屋に残るジュリエットが薬を飲む決心をする。「仮死状態になりロミオと再出発する」
とはいえ、すんなり薬を飲めるはずもなく、葛藤するジュリエット。
そして苦しみながら仮死状態に入っていく。
第3幕 第3場:ジュリエットの寝室
ジュリエットの友人たちが結婚の準備にやってくる。ウキウキしていた6人だがジュリエットの様子がおかしいことに気づく。
そこに嬉しそうな乳母が登場。
すぐに異変に気づき、ジュリエットに駆け寄る。
そしてジュリエットの死を悟る…。部屋に入ってきた両親が、ジュリエットの死を理解する。
ポイント
ジュリエットの友人たちが登場します。ジュリエット以外にトウシューズ履くダンサーはこの6人のみです。
この6人は1幕の舞踏会のシーンでも登場します。
英国ロイヤル・バレエ団でのリハーサル映像です。

乳母に関して、毎回謎に思います。というのも乳母はロミオとジュリエットの結婚を見ていたのに、パリスとの結婚の準備をウキウキしています…。どういう心境なんでしょうか……。
第3幕 第4場:キャピュレット家の地下霊廟
ジュリエットの葬儀が終わり、パリスだけがジュリエットのそばに残る。
そこに何も知らないロミオが入ってくる。
ロミオがあっという間にパリスを殺してしまう。
仮死状態のジュリエットと踊るロミオ。
ロミオはジュリエットの死を聞き、毒薬を持参していた。そして、ロミオは毒薬で自害してしまう。
その直後、息を吹き返すジュリエット。霊廟にいることに驚き、まわりを動き回る。するとそこにはパリスの死体が……。
後ずさると、そこにはロミオの死体が……。
すべてを悟ったジュリエット。ロミオが残した短剣で自分を刺す。
そして、ロミオのそばで最期をむかえるのだった。
ポイント
パリスが気の毒でしかたないんですが、物語上しかたないです…。
最後の「パ・ド・ドゥ」は、ジュリエットがまるで死体のようです。
ジュリエットを演じるのはアレッサンドラ・フェリ、ロミオ役はアンヘル・コレーラです。
2通りの終わり方
最後ジュリエットはロミオのそばで死を迎えます。
このときダンサーによって2種類の表現があります。
1:ロミオに身体の一部を付けて死ぬ
2:ロミオに触れることなく死ぬ
僕は2番目の身体に寄り添うことなく死を迎えるジュリエットの方が好みです。
ジュリエットがロミオに触れて終わるダンサーもいますが、これだと不幸感が薄まるように感じています。
多くの人を傷つけた2人は、現世で結ばれることはない、という終わり方に納得してしまいます。
映画版「ロミオとジュリエット」
ケネス・マクミラン版「ロミオとジュリエット」を映画版が2020年に制作されました。
舞台版よりも短く90分の作品でとても見やすいので予習にピッタリです。
DVDは通常版、ブルーレイ版ともに4,000円ほどで、1時間の特典映像がついています。

今回はケネス・マクミラン版「ロミオとジュリエット」第3幕のあらすじと見どころポイントでした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。