「マイヤーリンク(うたかたの恋)」第2幕のストーリーは?
なぜ盛り上がる?
見どころは?
第1幕から不穏な空気が流れていた「マイヤーリンク」。
第2幕ではキャバレーのシーンが登場し、華やかな踊りもたくさん出てきます。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります
今回は「マイヤーリンク」第2幕のストーリーと見どころポイントです。
※3分ほどで読み終わります。
自殺が現実的に…
「マイヤーリンク」の第2幕はキャバレーのような華やかなシーンが多くなっています。第1幕の王宮のカッチリとしたシーンと対称的に、とても退廃的な雰囲気です。
第1幕に関してはこちらで紹介しているので、ぜひご覧ください。
ルドルフ皇太子とマリー・ヴェッツェラの自殺が起こったマイヤーリンク事件を題材にしたケネス・マクミラン振付のバレエです。ストーリー、登場人物が複雑なのでかなり詳しく解説しています。
ルドルフ皇太子:オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子。フランツ・ヨーゼフ皇帝の嫡子
マリー・ヴェッツェラ:ルドルフの最後の愛人で心中時は17才。男爵令嬢ではあるが普段宮殿に出入りは許されていなかった
ステファニー皇妃:ルドルフ皇太子の妻。ベルギー王家の出身
フランツ・ヨーゼフ皇帝:オーストリア・ハンガリー帝国の皇帝。ルドルフの父
エリーザベト皇后:フランツ・ヨーゼフ皇帝の妻。ルドルフの母
ラリッシュ伯爵夫人:ルドルフの前愛人(史実では従姉妹)。ルドルフとマリーの仲を取り持つ
ヘレーネ・ヴェッツェラ夫人:マリーの母。コンスタンチノープルの銀行家の娘。上流階級に食い込もうと必死
ブラットフィッシュ:ルドルフのお気に入りの御者
ミッツィー・カスパール:女優(高級娼婦ともいわれる)。ルドルフの一番お気に入りの愛人
”ベイ”・ミドルトン大佐:英国の騎兵将校。エリーザベト皇后の愛人
ハンガリーの4人の高官:ドルフがハンガリーに傾倒していることの象徴
第2幕は52分です。
詳しいストーリーと見どころポイントを紹介していきます。
第2幕 第1場:悪評の高い居酒屋
第1幕から数年後。
ルドルフがステファニーを居酒屋(高級娼館)に連れてくる。大騒ぎする人々…。
ルドルフの従者であるブラットフィッシュがステファニーを楽しませようとするが、ステファニーは場に馴染めず出て行ってしまう。
ルドルフの情婦である女優のミッツィ・カスパーがここにいる。ミッツィと酔っ払いながら楽しく過ごすルドルフ。
しかし、警察が突然居酒屋に入ってきて中にいた人々を捕まえる。全員が散り散りになる中、フランツとミッツィはうまく隠れることができる。
第2幕 第1場:ポイント
ここでルドルフの本命である女優(高級娼婦)のミッツィ・カスパーが登場します。
このシーンは華やかで踊りが満載の楽しいシーンです。
居酒屋というよりキャバレーという感じで、実態は娼館です。下着に鼓笛隊の帽子のようなものを被った娼婦の踊りや、男性客の群舞もあります。
ルドルフが新婚旅行でステファニーを娼館に連れて行ったと記録されています……
ミッツィ・カスパーと4人の高官の踊りが見どころです。リフトも初めて見るようなものばかりで40年前に作られたとは思えないくらい古びてないです。
英国ロイヤル・バレエ団より。ミッツィ・カスパーをマラヤ・マグリが演じています。
ブラットフィッシュのソロ、ルドルフのソロ、群舞も含め、超がつくほどのスピード感です。
第2幕 第2場:居酒屋の外
居酒屋に取り残されたルドルフは自殺しようと頭に銃をかまえる。それを止めるミッツィー。
ルドルフはミッツィーに自殺を持ちかける。
しかし、ミッツィーにはその気がまったくない……。
誰かが入ってくる気配を感じミッツィーはルドルフを外に逃がす。
そこには首相のターフェ伯爵がいる。ミッツィーはターフェ伯爵にビラを渡し、腕を組み去っていってしまう。
第2幕 第2場:ポイント
ルドルフが本当に気に入っていたのはマリーではなく、ミッツィといわれています。
このシーンの最後は少しわかりにくいのですが、後のシーンにつながる重要なモノが登場します。
ミッツィーがターフェ伯爵に渡した「ビラ」です。この「ビラ」にはハンガリー独立を支持するルドルフの考えが載っています。この考えは父ヨーゼフ1世とまっこうから対立します。
ミッツィーはルドルフの行動を首相にリークしてしまい、ルドルフが追い詰められていくことになります。
第2幕 第3場:ヴェッツェラ家
居酒屋から逃れたルドルフ。
ラリッシュ伯爵夫人がルドルフを待っている。そばには美しく成長したマリーが…。
その後ラリッシュ伯爵夫人がヴェッツェラ男爵夫人の家を訪れる。そしてルドルフにアタックするようマリーをけしかける。その気になったマリーはルドルフにあてた熱い手紙をラリッシュ伯爵夫人に託す。
第2幕 第3場:ポイント
ここでようやくマリー・ヴェッツェラがストーリーに絡みはじめます。
史実では、ラリッシュ伯爵夫人はエリザベート皇后の兄と女優の娘で、宮廷への出入りも許されない生まれでした。ただ、皇后エリザベートから可愛がられていたおかげで、宮殿に出入りすることができ、ルドルフと幼なじみだったそうです。この出自から、宮殿に気軽に入れないマリーに思うところがあったのかもしれません。
ラリッシュ伯爵夫人がこのシーンで「いかさま占い」をやります。
このいかさま占いの結果を信じたマリー。ルドルフへのアプローチを加速していきます。
英国ロイヤル・バレエ団より。ヴィヴィアナ・デュランテがマリー、レスリー・コリアがラリッシュ伯爵夫人です。
第2幕 第4場:ホーフブルク宮殿(フランツ・ヨーゼフ皇帝の誕生祝い)
宮殿では皇帝の誕生祝いが開かれている。ターフェ伯爵がハンガリー独立のビラの話をする。気分を害するヨーゼフ皇帝…。
お祝いの席にはフランツ皇帝が思いを寄せる歌手のカタリーナ・シュラット、フランツの祖母にあたりエリザベート皇后と不仲の皇太后ゾフィ、エリザベート皇后の不倫相手であるミドルトン大佐も出席している。
エリザベート皇后はお祝いのプレゼントとしてカタリーナ・シュラットの肖像画をプレゼントする。すると花火が上がりバルコニーに皆集まる。そんな中エリザベート皇后とミドルトン大佐が親密に踊っている。
ルドルフは母の女の顔を見て孤独感に心を痛める。そんな姿を見たラリッシュ伯爵夫人がルドルフを気づかう。
花火が終わり、歌手であるカタリーナ・シュラットが歌う。
「出会いと別れはこの世のならい 再びの出会いはなく 別れは重なっていく 最後にあるのは 別れのみ 今こそ別れのとき…」
多くの人が複雑な表情でシュラットの歌を聞いている…。
人々が席をたつと、ラリッシュ伯爵夫人がルドルフにマリーからの手紙を手渡す。
第2幕 第4場:ポイント
このシーンからハプスブルク家の虚構がみてとれます。皆が政略で動いていて、行動と心が伴っていません。
そんな環境で育ったルドルフに同情してしまいます。ルドルフが革命分子に傾倒していく気持ちもわかります…。
ここは複雑な場面です。
ルドルフと父親であるヨーゼフ皇帝との政治的な意見の相違が
カタリーナ・シュラットという歌手が登場します。公演ではオペラ歌手が配役され、悲しげに「我は別れゆく」を歌います。本物の歌手が歌っていて、バレエとオペラが融合している場面です。
カタリーナ・シュラットは、エリザベートが自分の身代わりに皇帝にあてがった愛人です。カタリーナ・シュラットは好人物でその後、家族公認の仲になります。とくに子どもたちにとって不思議な関係となっていきました。
第2幕 第5場:ホーフブルク宮殿 ルドルフの部屋
ブラットフィッシュに連れられて入ってくるマリー。
ルドルフとマリーが密会し、結ばれる。
第2幕 第5場:ポイント
内容は過激です。
同じ
この時マリーは17歳。たぶんルドルフはマリーに対して愛はありません。
ですが、いいタイミングにマリーが現れ、死への
英国ロイヤル・バレエ団より。ナターリヤ・オシポワと平野亮一さんです。
小鳥がさえずるような音楽だったり、穏やかな曲もあいだに挟まれ、逆に不穏です。
映像作品
英国ロイヤル・バレエ団から年代の違う3つのDVDがリリースされています。
1994年版
狂気に満ち野性味あふれたイレク・ムハメドフ。ハマり役のヴィヴィアナ・デュランテ。スター性あふれるレスリー・コリアとダーシー・バッセルの共演で今も素晴らしいDVDです。
2010年版
エドワード・ワトソン主演です。ハマり役で、登場から顔色の悪さが不穏な空気でオススメです。
2018年版
スティーヴン・マックレー主演です。普段の明るいイメージと真逆でびっくりします。テクニックの高さ、表現力の深さが光る作品です。この公演に関しては感想をこちらで紹介しているので、ぜひご覧ください。
スティーヴン・マックレーとサラ・ラムが主演したバレエ「マイヤーリンク(うたかたの恋)」の感想です。エリザベートの息子であるルドルフ皇太子とマリー・ヴェツェラの関係をえがく、ドロドロと人間臭いバレエです。

今回は「マイヤーリンク」第2幕についてでした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。