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「マイヤーリンク(うたかたの恋)」第1幕はどう展開していく?
初心者でも楽しめる?
見どころは?

人間の暗い部分に焦点があたっているバレエが「マイヤーリンク」です。暗いテーマだからこそわかる人生の尊さ。醜いはずなのに、美しく感じてしまうバレエです。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。

kazu

今回は「マイヤーリンク」の第1幕のあらすじと見どころポイントです。

※3分ほどで読み終わる記事です。

第1幕:ルドルフの孤独

作品全体に関してはこちらの記事で紹介しています。

登場人物

ルドルフ皇太子:オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子。フランツ・ヨーゼフ皇帝の嫡子
マリー・ヴェッツェラ:ルドルフの最後の愛人で心中時は17才。男爵令嬢ではあるが普段宮殿に出入りは許されていなかった

ステファニー皇妃:ルドルフ皇太子の妻。ベルギー王家の出身
フランツ・ヨーゼフ1世皇帝:オーストリア=ハンガリー帝国の皇帝。ルドルフの父
エリーザベト皇后:フランツ・ヨーゼフ皇帝の妻。ルドルフの母

ラリッシュ伯爵夫人:ルドルフの前愛人(史実では従姉妹)。ルドルフとマリーの仲を取り持つ
ヘレーネ・ヴェッツェラ夫人:マリーの母。コンスタンチノープルの銀行家の娘。上流階級に食い込もうと必死

ブラットフィッシュ:ルドルフのお気に入りの御者
ミッツィー・カスパール:女優(高級娼婦ともいわれる)。ルドルフの一番お気に入りの愛人
”ベイ”・ミドルトン大佐:英国の騎兵将校。エリーザベト皇后の愛人
ハンガリーの4人の高官:ドルフがハンガリーに傾倒していることの象徴

ルドルフとは?

ハプスブルク家の跡継ぎとして期待されていたルドルフ。幼少期の教育は祖母ゾフィーの保守的な考えにそって軍人的なスパルタ教育がほどこされます。教育に関しては祖母が全権を握っていたため、母であるエリザベートは口を出すことができませんでした。ゾフィとエリザベートの関係は悪く、幼少期エリザベートは育児・公務を放棄し旅に出ることが多くありました。

しかしスパルタ教育が虐待にいたるまでにいってしまい、エリザベートが止めに入ります。母から引き離され、かろうじて一緒に成長していた姉とも離され、ルドルフは精神的にまいってしまいます。このときたったの7歳でした。

スパルタ教育の数々

・鞭打ち
・冷水にルドルフの首を入れ、長時間息を止める訓練
・夜の動物園に置き去りにする
・馬の鞍に縛りつけ走らせる

そしてようやくエリザベートに養育権が法的に認められたころルドルフは8歳になっていました。エリザベートとルドルフは、8年間ほぼ会っていなかったため、お互いにどう接していいかわからず、その後の関係にも影響します。

新たな教育では平和を重んじるような自由な教育がほどこされます。ただし、これが父親ヨーゼフ1世との対立を生んでしまいます。保守的な父と、自由なルドルフ。父がルドルフを政治の世界から遠ざけてしまい、ルドルフはやることがなくどんどん孤独を深めていくことになります。

ここからはバレエ「マイヤーリンク」のストーリーとともに第1幕(40分)の見どころポイントを紹介していきます。

プロローグ

1889年1月31日の夜明け前、マイヤーリンクの近くにあるハイリンゲンクロイツの墓地。誰かのひつぎが雨の中ひっそりと地中に納められる。立ち会うのはブラットフィッシュひとりだけ…。

ポイント

ブラットフィッシュの悲痛な表情が非常に印象的なシーンです。

ホーフブルク宮殿の舞踏会の間

1881年、ウィーンのホーフブルク宮殿では皇太子ルドルフとステファニーの婚礼を祝う舞踏会が開かれる。ルドルフはステファニーそっちのけで、ステファニーの姉ルイーズにちょっかいをだしてしまい、場が凍りつく。

父であるヨーゼフ1世皇帝、母であるエリザベート皇后も息子の行動に冷ややかな態度を示す。自暴自棄のフランツは孤立を深めていく。

ポイント

音楽のテンポが速いです。「うたかたの恋」は音楽同様、ストーリーもテンポよく進んでいきます。そして、全てのキャストの衣装が細かい部分まで豪華です。

史実

この頃すでにルドルフは、父ヨーゼフ1世と確執がありました。史実によると、この頃のルドルフは生きることに限界を感じていて自殺の相手を探していた、と考えられているようです。また、梅毒にかかっていたとされています。

マリーとの出会い

ルドルフはラリッシュ伯爵夫人から、ヴェッツェラ男爵夫人とその娘でまだ幼い少女のマリーを紹介される。マリーは幼いながらもルドルフに一目惚れしてしまう。

ポイント

ここで女性ダンサーの主役であるマリー・ヴェッツェラが初登場します。主役でありながらマリーは全体を通しそこまで登場するわけではありません。第1幕ではこのシーンのみの登場のため、ここでどれだけ印象づけられるかがポイントです。

マリーはこの段階では少女です。演技力がとても要求されるため、キャリアの中間のダンサーが配役されやすいです。初々しさと同時にルドルフを操るような妖艶さも必要とされる難役です。

ハンガリーの4人の高官

ルドルフがハンガリー勢力に加担していく様子が描かれる。ルドルフの友人であるハンガリーの高官4人が、ハンガリーの分離派運動についてルドルフに熱く語る。少し高圧的な高官。オーストリアとハンガリーの狭間で揺れるルドルフ。

ポイント

ハンガリーの高官4人の踊りが非常にスピーディーかつアクロバティックです。テクニックだけでなく、ルドルフの心情を表す役割を持っているため演技力も必要です。また、その中でもひとりメインのダンサーがいて、高いテクニックが要求される役です。嵐が吹き荒れるような音楽も特徴的です。

そして、政治的な色が濃いのも「うたかたの恋」の特徴です。

史実

史実によると、ルドルフは頭脳明晰だったそうです。知識があるゆえ、リベラルな方向に傾倒していくことになります。ちなみに、ルドルフの母のエリザベートも語学の才能がすごかったという話です。

ラリッシュ伯爵夫人との「パ・ド・ドゥ(ふたりの踊り)」

ルドルフの愛人のひとりであったラリッシュ伯爵夫人。ラリッシュ伯爵夫人がルドルフとよりを戻そうとする。最後にキスをする二人、と同時にエリザベート皇后やヨーゼフ皇帝が登場。一気に場が白ける。ここで幕が一度閉じ、舞台が転換する。ハンガリーの4人の高官がここでもルドルフとなにやら秘密裏に話をしている。

史実

ラリッシュ伯爵夫人は物語の中で、ルドルフの味方であり続ける存在です。ラリッシュ伯爵夫人はルドルフとは同い年で、エリザベート皇后の兄の娘のため、いとこにあたります。

ホーフブルク宮殿の皇后エリーザベトの部屋

舞踏会が終わり、エリザベート皇后はお気に入りの女官たちと楽しく過ごしている。そこにルドルフが登場し空気が一変。エリザベート皇后は、愛がほしいルドルフを突き放し続ける。

ポイント

侍女たちの踊りがコケティッシュでかわいいシーンです。重いテーマが続く中、少し心が休まるシーンです。

親子の難しさが表れている場面です。ルドルフはエリザベートの同情を引こうとしますが、エリザベートは気にも留めません。エリザベートはとにかくルドルフに冷たいです。これがのちの悲劇につながります。

ホーフブルク宮殿のルドルフの部屋

ルドルフは拳銃とガイコツの頭を持ち自室に戻ってくる…。ルドルフは結婚したばかりのステファニー王女をレイプまがいに襲う。ステファニーに銃をつきたり、銃で空を打ったり…。ルドルフは決して暴力的な人物ではないが、満たされない思いを妻にぶつけてしまう。

ルドルフの狂気性が印象づけられ、かなり後味が悪い状態で第1幕が終わる。

1994年、ロイヤル・バレエ団より。ルドルフ役がイレク・ムハメドフ、ジェーン・バーンがステファニー王女です。

ポイント

非常に恐ろしい場面です。バレエでここまで生々しいシーンがあるのは珍しく、実際にルドルフは銃を発砲します。

史実

ステファニーは宮殿の生活が大好きで、ルドルフはリベラルなインテリ階級と街で騒ぐのが好きなタイプです。ふたりはまったく合いません。二人の間にはエリザベートという女の子も誕生します。ですが、その後、ステファニーはルドルフから性病を移されてしまい妊娠できなくなった、といわれています。華々しい宮殿とその裏にあるドロドロした世界…。

ハプスブルク家が滅亡するのは当然の流れだったかもしれない、と思ってしまうのでした…。

とはいえ、バレエだからこそ残虐性にフィルターもかかります。たぶん演劇や映画だと目を覆ってしまうシーンです。残虐なストーリーなのに、振付はアクロバティックで美しい。すごい矛盾です。

映像作品

英国ロイヤル・バレエ団より。はまり役であるエドワード・ワトソン主演です。

たぶんあらすじを知っていないとなかなかすべてを理解するのは難しいと思います。ただし、ここで書いたあらすじよりももっと単純にストーリーは進んでいくので安心してください。

kazu

今回は「マイヤーリンクの詳しいストーリー」のご紹介でした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。