マリアネラ・ヌニェスの『ジゼル』のリハーサル動画がある?
リハーサルの内容は?
どんなアドバイスを受けている?
「ワールド・バレエ・デイ2021」で英国ロイヤル・バレエ団の4時間30分のライブ配信がありました。
今回紹介するのは、英国ロイヤル・バレエ団を代表するプリンシパルのマリアネラ・ヌニェスと、元芸術監督のモニカ・メイソンによる質の高いリハーサルです。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。
今回は、マニエラ・ヌニェスの『ジゼル』ミルタ役のリハーサル映像と対訳を紹介します。
※ 3分ほどで読み終わります。
2021年「ワールド・バレエ・デイ」
10/19(木)にワールド・バレエ・デイがありました。ワールド・バレエ・デイは24時間、世界中のバレエ団をyoutubeやfacebookのライブ配信でつなぐ企画です。今年は51のバレエ団が参加しました。
英国ロイヤル・バレエ団はワールド・バレエ・デイの中でもメインのバレエ団で、4時間30分の中継が行われました。中継ではレッスン、リハーサル、パフォーマンスだけでなく社会貢献活動も紹介されています。
その中から20分ほどマリアネラ・ヌニェスとモニカ・メイソン(元芸術監督)による『ジゼル』ミルタ役のリハーサルがありました。
1982年3月23日アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ
3歳:バレエを習い始める
8歳:コロン劇場バレエ学校に入学
14歳:コロン劇場バレエ団に入団
15歳:初来日。第8回世界バレエフェスティバルにマキシミリアーノ・グエラとともに出演。英国ロイヤル・バレエ団に入団する前提で英国ロイヤル・バレエ学校に入学
16歳:英国ロイヤル・バレエ団に入団
18歳:ファースト・ソリストに昇格
20歳:プリンシパルに昇格
現在はイギリスに帰化しイギリス国籍
バレエ教育に関して
今回紹介する動画ではカットされていますが、リハーサルの前に「チャンス・トゥ・ダンス」プロジェクトが紹介されていました。
「チャンス・トゥ・ダンス」は子どもたちにダンス体験を提供するプロジェクトです。
このプロジェクトに対し2人がコメントしていました。
モニカ・メイソン:「英国ロイヤル・バレエ団のような大きなバレエ団にとって若いダンサー、次の世代のダンサーは欠かせません。バレエ団には毎年新しいダンサーが入団します。キャリアの長いダンサーが上演する演目の伝統を守りつつも、若いダンサーの踊りたい、という気持ちで作品が活性化されていきます。」
マリアネラ・ヌニェス:「2012年から無料のガラ公演を地元のアルゼンチンでスタートしました(地元の先生と一緒に)。いろいろな事情でバレエの公演を観に行くことが難しい人のためにはじめました。とくに私の地元を中心に、最初はスタジアムで4,000人の公演からはじめました。次の年には週末全部を使い、8,000人集めることができました。そして公立学校を招待したりと、年が経つごとにその輪がどんどん広がっています」
実際のガラ公演の様子はこちらです。
ダンス教育として大きな役割を果たしていることがわかります。
『ジゼル』ミルタ役のリハーサル
ここからミルタ役のリハーサルです。
ミルタは『ジゼル』第2幕に登場するウィリの女王で、とても冷たい妖精です。
貴公子アルブレヒトは貴族である身分を隠し村娘のジゼルと交際している。しかし、アルブレヒトに婚約者がいることを知ってしまったジゼル。もともと身体の弱かったジゼルはショックで死んでしまう。
結婚することができずに死んでしまった女性たちは妖精ウィリとなる。男に深い恨みを持つウィリたち。森に迷い込んできた男性を死ぬまで踊らせる。ジゼルの墓参りに来たアルブレヒトもウィリたちに捕まってしまう。そのときウィリになったはずのジゼルがアルブレヒトを助けるのだった。
まずマリアネラ・ヌニェスとモニカ・メイソンがお互いについて語る場面がありました。
マリアネラ・ヌニェス:『ジゼル』のミルタ役は技術的にも表現的にも難しい役です。モニカ・メイソンと一緒にリハーサルとすると多くのことを学ぶことができます。リハーサルでは素晴らしい瞬間があり、その現場を世界中の人に見てもらえることが嬉しいです。
モニカ・メイソン:マリアネラ・ヌニェスのことは20年以上知っています。群舞時代のまだ初々しかったマリアネラが世界を代表するバレエダンサーになりました。マリアネラと一緒にリハーサルをするのが毎回楽しみです。マリアネラはアドバイスを素直に受け止め、役を理解し、表現する力に長けています。バレエ団ではダンサーからダンサーに役が引き継がれていきます。私の知識をマリアネラに伝え、マリアネラが次の世代のダンサーに伝えていってほしいと思います。
リハーサル動画
ミルタは妖精の女王ですがエネルギーに溢れる振付がたくさん登場します。激しい振付でありながら、感情は冷静。とくに終盤のマリアネラ・ヌニェスを見るとかなり体力を使うことがわかります。
マリアネラ・ヌニェスのテクニックは文句のつけようがないので、基本的に振り付けについての指導はありません。とくに回転軸の安定感が抜群です。15分という短いリハーサルで、感情表現に関わる細かい動きの調整が行われていきます。
本当にちょっとしたことですが、印象がかなり変わります。ここから具体的なアドバイスを意訳しています。
具体的なアドバイスに関して
3:05~:視線についてアドバイスです。ミルタはウィリの女王でとても冷たく厳しいです。ミルタは最初ベールをつけたまま舞台を移動します。その後ミルタがベールをとって、初めて顔が見える登場シーン。このときの登場についてモニカ・メイソンからアドバイスです。顔を斜め上に向いたときに目線を少し落とすこと、そしてピタっと目線を定めることで威厳を出すように注意しています。そして腕を大きく使うのではなく、厳格にポジションを守ること。こうすることでミルタの持つ力と冷たさが演出されます。
6:10~:腕を柔らかく使いすぎないように注意しています。厳格さ、パワーが出る効果があります。
12:50~:ソデバスクで円を描いて回るときに左の背中を使うように、そして手が高くなりすぎないよう注意しています。
本番映像
2021年の公演映像が公開されています。
モニカ・メイソンのミルタ
今回コーチであるモニカ・メイソンによるミルタが映像化されています。
1979年にイギリスのテレビ局ATVで撮影されDVD化されています。
主演は伝説的ダンサー、ルドルフ・ヌレエフとリン・シーモアです。
おすすめDVD
マリアネラ・ヌニェスがミルタを演じているDVDが販売されています。2006年の映像で主演はアリーナ・コジョカルとヨハン・コボーです。とても評価の高い『ジゼル』でオススメです。
5,000円ほどです。
今回は、マニエラ・ヌニェスの『ジゼル』ミルタ役のリハーサルの紹介でした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめています。ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。