
『オッドタクシー』(2021年)の内容は?
特徴は?
見どころは?
ゾクッとしたアニメ、『オッドタクシー」。
擬人化した動物が、人間のように暮らす世界観のアニメです。
多くのお笑い芸人さんが声優として参加しているので、最初はコメディーかと思っていました。
全然違いました。
たまたま 2話目を見て、なんか気になるな…、と思い次の話も見てみました。
どんどんハマっていき、最終話はずっとゾクッとしていました。
考察系アニメです。
元劇団四季、テーマパークダンサー。社割を使えたときは週2回 映画館へ行っていました。最近はネットで映画をたっぷり。
今回は、『オッドタクシー』(2021年)の内容・感想・特徴についてです。
※ 3分ほどで読み終わります。
内容
セイウチの中年タクシードライバー小戸川。
落語とラジオが大好きで、質素に暮らしている。終始テンションは低いが、個性的な視点を持っていて客との会話がおもしろい。
そんな小戸川のタクシーに個性豊かなキャラクターたちが乗ってくる。
売出し中の三人組アイドルのミステリーキッス:トイプードル、三毛猫、黒猫
ミステリーキッスをヒットさせたいマネージャー山本:キツネ
ミステリーキッスを応援する今井:スカンク
人を殺すのもいとわないヤクザのドブ:ゲラダヒヒ
どこか含みのある看護師の白川:アルパカ
小戸川の友人で見栄っ張りの柿花:シロテテナガザル
主治医であり柿沢と小戸川の友人の剛力:ゴリラ
売れない芸人コンビのホモサピエンス:イノシシ、ウマ
バズりたい大学生の樺沢:コビトカバ
ヤクザと癒着する警察官の大門兄:ミーアキャット
正義を貫きたい警察官の大門弟:ミーアキャット
行きつけの小料理屋の女将さんのタエ子:カンガルー
ある日、練馬の女子高生が失踪する。
その女の子が小戸川のタクシーに乗っていたらしいことがわかる。
一人暮らしのはずの小戸川の家に誰かがいる…。
映画版の予告です。
制作・キャスト
脚本:此元和津也
監督:木下 麦
キャラクターデザイン:木下麦・中山裕美
アニメに始まり、舞台化、映画化、コミック化、そして 2024年にドラマ化されています。
小戸川(セイウチ):花江夏樹
白川(アルパカ):飯田里穂
剛力(ゴリラ):木村良平
柿花(シロテテナガザル):山口勝平
二階堂ルイ(トイプードル):三森すずこ
市村しほ(三毛猫):小泉萌香
三矢ユキ(黒猫):村上まなつ
大門兄(ミーアキャット):昴生(ミキ)
大門弟(ミーアキャット):亜生(ミキ)
柴垣(イノシシ):ユースケ(ダイアン)
馬場(ウマ):津田篤宏(ダイアン)
樺沢(コビトカバ):たかし(トレンディエンジェル)
タエ子(カンガルー):村上知子(森三中)
ドブ(ゲラダヒヒ):浜田賢二
今井(スカンク):酒井広大
田中(ピューマ):斉藤壮馬
山本(キツネ):古川慎
ヤノ(ヤマアラシ):METEOR
『鬼滅の刃』の炭治郎など活発な雰囲気の花江夏樹さんが、ローテンションの小戸川を演じています。クレジットをみるまで花江夏樹さんと気づきませんでした。
芸人さんが何組も声優として参加しています。
お笑いの人が参加しているので、真面目に声をあてています。誰がどの声をやっているのかわからないくらい、違和感がまったくありませんでした。
主人公を演じることの多い山口勝平さんが、うだつのあがらない柿原を演じています。誰しも持つ情けなさ……。魅力的で熱いです。
脚本の緻密さ
『オッドタクシー』の不思議な点は、キャラクターたちの名前が全員日本人で、街並みも現在の日本です。
そこに不思議な違和感を持ちます。
動物なのにすごく人間臭い。動物の姿をしているからこそ、さらに人間臭さが際立ちます。
回が進むごとにキャラクターたちの関係が複雑に絡み合います。
人物像が掘り下げられつつ、謎がどんどん深まっていきます。
ストーリーにどんどん引き込まれていきました。
誰しも暗い過去を持ち、秘密があります。たくましく生きている人もいれば、社会に流されてしまう人もいる。
生きづらい世の中で必死に生きるキャラクターたち。
ブラックユーモアあふれる内容ですが、ポップな作画と擬人化された動物が登場するので、語り口はライトです。
エンディング曲もポップなアイドルソングです。この曲のおかげで暗い話でも、明るい気持ちで現実世界に戻ることができます。
最終話、すべての謎の回収がおこなわれます。
「えっ…。そういうことだったのか…(納得)」
第 4 話『田中革命』でおちる
見ていて度肝を抜かれてしまった第4話『田中革命』。
ほぼ全編、田中の独白(モノローグ)です。
第 3 話までほぼ登場しないピューマの田中が急に登場し、主役となって語り始めます。
競争を避けていたはずなのに、ど真ん中に引きずり込まれ、自分を壊してしまう……。
この第4話をきっかけに『オッドタクシー』にどっぷりハマっていきました。
第 4 話:詳しいストーリー
ピューマの田中が小学 3年生のころ。人生は平等ではないな、と感じ始める。
クラスの人気者は、運動ができたり、イケメンだったり、絵がうまかったり、勉強ができたりする。そんなクラスメイトと比べ、自分は持たざるものだ、と感じてしまう。
担任の先生は平等になるよう配慮する。劣等感を持つ者がいないよう、過度に目立つものを禁止していた。
消しゴム集め
あるときクラスで消しゴム集めが流行る。消しゴムまでは先生の目が届かない。
たまたま珍しい消しゴムを持っていた田中が人気を集める。
承認欲求を満たした田中が変わっていく……。
消しゴム集めで名を上げた田中。しかしライバルがいて、レアな消しゴムをたくさん持っている。この勝負に勝てると踏んだ田中は、ますます夢中になっていく。
しかし、差をどんどんつけられてしまう。
そんなとき、ネットオークションで超レアな消しゴムを見つけてしまう。
ネットオークション
この時点でタガが外れてしまっていた。
お兄ちゃんのパソコンを勝手に使い、お父さんのクレジットカードの情報を盗んでしまう。
はじめてのネットオークション
はじめての入札
レアな消しゴムさえ手に入れれば勝負に勝てる
うまくやった自分に酔い、最高の気分になる
先生が禁止していた目立つものを手に入れられる。本来なら禁止されるべきもので人気者になれる。
この状況に名前を付ける。
「田中革命」と。
競争しない
しかし、そんなにうまくいく訳もなく……。
最初 3,000円だった消しゴムを、判断ミスにより 10万円で落札。隠せるわけもなく、両親にバレ、父親にボコボコにされる。しかも肝心の消しゴムが届くことはなかった……。
この経験から「誰とも競わない」が、人生のモットーになる。
沼に落ちていく
大人になった田中はスマホゲームが苦手になっていた。
トップランクになるには、仲間が必要だったり、課金が必要だったりするからだ。しかし、あるスマホゲームに出会い、状況が変わる……。
ゲームを有利に進めるために課金してみる……。
ほんの 500円の課金から、狂気の世界へ転がり堕ちていく。小学生時代と同じようにタガが外れ、人生が狂っていく。
寝るのも、食べるのも、仕事さえも後回し。楽しい、という当初の目的とかけ離れてしまう。自分自身でこう分析する。
「ただの病気」
感覚がマヒしている。スマホゲームでレアなアイテムを手に入れても感じるのは一瞬の快感。
わかっている
何も残らない
でもやめられない……
そして、さらに最悪な状況になっていく……。
感想:冷静な怖さ
「誰かに認められたい」気持ちと、「人生は不公平」ということが、これほど的確に表現できるのか……。
この回は、田中が田中自身についてナレーションを当てています。
現在の視点からみる過去の自分。
それがまた的確に分析していて、かつユーモアに富んでいます。田中は平凡とは思えず、魅力的に感じます。
そんな豊かな心をもつ田中ですが、自制心を抑えられずぶっ飛んでいく……。
すごく刺さりました。
斉藤壮馬さん劇場
田中を演じるのは斉藤壮馬さん。さわやかな声をあてる印象でした。
今回は、さわやかとは真逆です。田中のモノローグは、とにかく迫力があります。
言っていることが胸にズバズバ刺さるのは斉藤壮馬さんによるものだと思います。
自立と信用
田中は小学3年生の件から、家族を信用できなかったのではないかな、と思います。怒ると何をするかわかならい父、しっかりと守ってくれなかった母、弟を煙たがる兄。
心に蓋をした田中は、過去の失敗にケリがついていない。この出来事のあと、信頼できる友達ができたのだろうか……。
ひとりで生きていける人もいれば、誰かがいないとダメな人もいる。田中は後者のような気がします。
人当たりはすごくイイんだけど何か違う。
大人になってスマホゲームにハマったときも周りに友人らしき人はいません。
第4話の最後、壊れた田中がお笑いコンビ「ホモサピエンス」の柴垣と会話をします。そこで柴垣が「相方」という言葉を使います。そのとき田中が過剰に反応したように感じました。
この田中革命に登場するさまざまなモノが、今後のストーリーに大きく関わっていきます。
オッド = 異常
オッドタクシーのオッド( odd )は「異常な」という意味です。
日本では strange(変な)と同じように扱われることもありますが、もう少し奇抜感が強いです。
DVD
配信版です。
脚本は、漫画家の此元和津也さんが担当しています。コミック版も人気が高いです。人物像が掘り下げられているので、かなり見ごたえがあります。
750円ほど。
映画版は、アニメをギュッとまとめています。結末が具体的になっています。個人的にはアニメの方が良い終わり方だったな、と思います。
4,000円ほど。

今回は、『オッドタクシー』についてでした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。
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