アニメ『オッドタクシー』のなかで、ひと際異彩を放つエピソードが第4話「田中革命」です。
メインの物語から突如として脱線し、ある青年・田中の人生の回想と執着だけで30分が構成されるエピソードです。
なぜ田中はここまで追い詰められ、狂気に取り憑かれてしまったのか。
この記事では、TVアニメ『オッドタクシー』の田中の心理描写やエピソードの構造を紐解きながら、第4話の持つ意味を考察していきます。
元劇団四季、テーマパークダンサー。社割を使えたときは週2回 映画館へ行っていました。最近はネットで映画をたっぷり。
※ 3分ほどで読み終わります。
『オッドタクシー』とは
『オッドタクシー』は、タクシードライバーの小戸川を中心に、練馬区の女子高生失踪事件を巡る人間模様が描かれるサスペンス群像劇です。
| 企画・原作 | P.I.C.S. |
|---|---|
| 脚本 | 此元和津也 (『セトウツミ』『ブラック校則』、ドラマ『シナントロープ』) |
| 監督 | 木下麦 |
| 音楽 | PUNPEE、VaVa、OMSB |
何気ない会話がすべて伏線へと繋がっていく緻密な構成が光ります。
異質なエピソード:第4話『田中革命』の見どころ
第4話「田中革命」では主役である小戸川の物語が一休み。そして、全編を通してゲーム会社に勤める冴えないピューマの青年の物語になります。
「自分の価値を証明したい」という純粋な欲求が、ガチャ依存と偶然の不幸によって過激な復讐心へと変貌していく過程が描かれます。
田中というキャラクターがここまで読者や視聴者の心を惹きつけるのは、田中の持つ「歪み」が現代社会に生きる私たちにとっても身近で、他人事とは思えないリアリティを持っているためです。
詳しいストーリー
小学校3年生のころ。「人生は平等ではないな」と感じ始める田中。クラスの人気者は、力が強かったり、イケメンだったり、絵がうまかったり、勉強ができたりする。そんなクラスメイトと比べ、「自分は持たざるものだ」と感じてしまう田中。担任の先生は、クラスで劣等感を持つ者がいないよう、できるだけ平等を保とうと、過度に目立つものを禁止していた。
そんなとき田中のクラスで消しゴム集めが流行る。消しゴムまでは先生の目が届かない。田中はたまたま珍しい消しゴムを持っていた。そして、田中が一躍有名になる。承認欲求を満たしたことで、田中が変わっていく……。
深みにハマっていく
消しゴム集めで名を上げた田中。しかし田中にはライバルがいて、さらにレアな消しゴムをたくさん持っている。この勝負に勝てると踏んだ田中は、どんどん夢中になっていく。だが、差は広がっていく。
そんなとき、ネットオークションで超レアな消しゴムを見つけてしまう。この時点でタガが外れた田中。お兄ちゃんのパソコンを勝手に使い、お父さんのクレジットカード情報を盗んでしまう。はじめてのネットオークション。はじめての入札。レアな消しゴムさえ手に入れれば勝負に勝てる。うまくやれた自分に酔い、最高の気分になっていた。
担任の先生が禁止していた「目立つもの」を手に入れられる。本来なら禁止されるもので人気者になれる――田中はこの状況をこう名付けます。
「田中革命」と。
承認欲求のなれの果て
しかし、そんなにうまくいくはずもなく……。 最初3,000円の入札だった消しゴムが、田中の判断ミスで10万円に跳ね上がり、そのまま落札。もちろん家族にバレ、父親にボコボコにされる。しかも肝心の消しゴムは届くことがなかった……。
この経験から、「誰とも競わない」が田中のモットーになる。
大人になっても変わらない
大人になった田中はスマホゲームが苦手になっていた。というのもトップランクになるには、仲間や課金が必要だからだ。しかし、楽しいスマホゲームに出会い状況が変わる……。ゲームを有利に進めるために課金をしてみる。 500円の課金をきっかけに、田中は狂気の世界へ転がり堕ちていく。
小学校時代と同じようにタガが外れ、人生を狂わせていく。寝るのも、食べるのも、仕事さえも後回し。楽しいという最初の目的とは、ほど遠い場所に来てしまいます。
田中は自分自身でこう分析する。
「ただの病気」
感覚がマヒしている。スマホゲームでレアアイテムを手に入れても感じるのは一瞬の快感。わかっている。何も残らない。でもやめられない……。そして、さらに最悪へと堕ちていく……。
考察と感想:冷静な怖さと「斉藤壮馬劇場」
「誰かに認められたい」という気持ちと、「人生は不公平」という現実が、これほどまで的確に表現できるのか……と感じさせられます。
この話では、田中が自分自身についてナレーションを当てています。現在の視点から語る過去の自分の気持ちを的確に分析しているだけでなく、ユーモアに富んでいます。田中は平凡ではなく、むしろ魅力的に映ります。そんな豊かな心をもつ田中ですが、自制がきかなくなり、ぶっ飛んでいく……。この内容がすごく刺さりました。
声優・斉藤壮馬さんの演技
田中を演じるのは斉藤壮馬さんです。下記の動画のようにさわやかな印象が強かったのですが、真逆の役を演じています。
田中の独白はとにかく迫力があり、言葉が胸にズバズバ刺さるのは斉藤壮馬さんの演技力によるものです。狂気を孕んだ静かな語り口から、一気に感情が爆発する演技は圧巻で、まさに「斉藤壮馬劇場」とも呼べる一話です。
自立と信用、そして人間関係の歪み
田中は小学3年生の件から、家族を信用できなかったのではないかと思います。怒ると何をするかわからない父、守ってくれなかった母、弟を煙たがる兄。心に蓋をしていたため、過去の失敗にケリがついていません。
この出来事のあと、信頼できる友達ができたのだろうか……と考えさせられます。ひとりで生きていける人もいれば、誰かがいないとダメな人もいます。田中は後者のような気がします。人当たりは良いのに、どこか違う。田中が大人になってスマホゲームにハマったときも、周囲に友人らしき人はいません。
第4話の最後では、壊れた田中がお笑いコンビ「ホモサピエンス」の柴垣と会話をします。柴垣が「相方」という言葉を使った瞬間、田中が過剰に反応したように感じられました。
まとめ
この「田中革命」に登場するさまざまなモノが、今後のストーリーに深く関わっていきます。消しゴム、ドードー、拳銃……。バラバラに見えたピースが、一つの絵になっていく快感をぜひ味わってほしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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