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ミュージカル版『 ONCE(ワンス)ダブリンの街角で 』(2011年)の内容は?
特徴は?
見どころは?
2007年、ジョン・カーニー監督『 ONCE ダブリンの街角で』が劇場で公開されました。
アイルランドの作品が、アメリカ・ニューヨークのブロードウェイでミュージカル化されています。
心にじんわりとくる作品です。
元劇団四季、テーマパークダンサー。社割を使えたときは週2回 映画館へ行っていました。最近はネットで映画をたっぷり。
今回は、『 ONCE(ワンス)ダブリンの街角で 』(2011年)の内容・感想・特徴についてです。
※ 3分ほどで読み終わります。
じんわりと心に来る名作
ミュージカルの紹介の前に、原点である映画版『 ONCE(ワンス)ダブリンの街角で 』についてです。
あらすじ
男と女がダブリンの街角で出会い、音楽を通し心を寄せていく。
今までにない運命的なつながりを感じる 2人。
しかし、2人には事情がある。
一瞬の出会いだとしても、このときだけの出会いだとしても、人生に影響を残す予感がする。
大きな特徴は、主演 2人に役名がないことです。形式的に「guy(男)」「girl(女)」という名前が割り振られています。
演じるのは、男:グレン・ハンサード、女:マルケタ・イルグロヴァです。
恋愛感情に近いけれど少し違う。もう少し深い部分にある、人間としての核の部分につながりが見える作品です。
ラブストーリーのようなラブストーリーでない作品です。
2,500円ほど。
2011年 ミュージカル化
映画から 4年後の 2011年、ブロードウェイで『ONCE ダブリンの街角で』がミュージカル化されます。
音楽は映画同様、グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァが作曲しています。
マサチューセッツ州でテスト公演が行われた後、2011年12月、オフ・ブロードウェイで開幕します。
ニューヨークにおいて、ブロードウェイ以外の劇場で上演される舞台作品のこと。ブロードウェイとはマンハッタンにある通りの名前で、大規模な商業演劇が上演されています。
オフ・ブロードウェイは小規模な舞台作品を指します。収容人数が少なく、制作費用も低く抑えられるため、実験的、新人劇作家、革新を追求する作品が上演されています。
だからといって、ブロードウェイに比べ知名度が劣るわけではありません。オフ・ブロードウェイで大成功する作品や、後にブロードウェイに進出し大きな成功を収めることもあります。
その直後、演劇界のアカデミー賞である「トニー賞」にノミネートされ、さらに話題になります。
2012年2月:ブロードウェイに進出し大成功
2012年6月:トニー賞、最優秀作品賞を含む8部門を受賞
ちなみに、2008年、第80回アカデミー歌曲賞で『 Falling Slowly(フォーリング・スローリー)』を受賞しています。
アカデミー賞、グラミー賞、ローレンス・オリヴィエ賞(イギリスの演劇賞)、トニー賞、全ての賞に輝いた唯一の作品です。
あらすじ
舞台版は映画と本筋は同じですが、細部に違いがあります。
アイルランド・ダブリン。路上パフォーマンスで歌う 30代の男「ガイ」。歌い終わったあと、なぜかギターを置いて去ろうとする。
そんなとき、チェコ出身の若い女「ガール」が声をかける。
ニューヨークに行ってしまった恋人に未練タラタラなガイ。ほとんどの歌を彼女に捧げていたので、歌うたびに思い出してしまう……。
今は父親の会社で掃除機の修理をして働いている。掃除機の修理をしてもらいたいガールは、ピアノの演奏を修理代として提案する。そして、交渉が成立する。
ピアノを楽器店で披露するガール。ガイのジャケットのポケットから譜面を見つけたガールが強引に演奏する。観念したガイが、ガールと一緒に演奏する。
この曲に感動するガール。
「元カノを取り戻せ」
「ミュージシャンとしてニューヨークに行け」
2人で曲を制作していく中、ミュージシャンたちと出会い、CD制作へと向かっていく。互いの音楽に魅了され、共鳴しあう。
音楽を通じて秘められた思いや苦悩を理解し、夢や希望を見出していく。
濃い時間を過ごす中、元カノに向けた歌が、いつしかガールに向けられるようになる。ガイのニューヨーク行きに現実味が帯びる中、互いにすれ違いはじめる。
2人には向き合わなければいけない現実がある……。
『 Falling Slowly(フォーリング・スローリー)』
ミュージカル版のスタジオレコーディングの様子です。
オリジナルキャストである、スティーヴ・カジー(男)、クリスティン・ミリオティ(女)によるパフォーマンスです。
ちなみに映画版はこちらです。
Music Video 用に再編集されています。
シンプルな造り
ブロードウェイ・ミュージカルの醍醐味は、豪華な舞台セットと衣装です。
ですがミュージカル版『 Once 』は、映画の雰囲気と同じく、セットも衣装もかなりシンプルです。
基本的に
なんなら、観客が舞台に上がることができます。ブロードウェイ版、日本でのツアー版にも行きましたが、どちらも舞台に上がることができました。
僕の経験上、舞台は聖域とされることが多く、土足で上がろうものなら烈火のごとく怒られます。実際に怒号が飛び交う場面に何度も立ち会いました。間違って土足で上がってしまった人が殺されてしまうんじゃないか、と心配するほど責められていたこともありました……。
一方の『 Once 』はそんなこと気にしません。開演前、観客が自由に舞台に上がり、ドリンクを購入することもできます。
すると楽器を持った出演者がちらちらと登場し、演奏をはじめます。
オープニング前の 1曲。脇を固めるキャストがアイルランドの伝統的な曲『 Red Haired Mary(ジンジャーヘアのメアリー) 』を弾き、歌います。この間、スタッフが観客を客席へ誘導していきます。
そして、自然な形で舞台が始まっていきます。
この演出がとにかく素晴らしく、バーにいる感覚を与えます。
舞台はどうしても、舞台上の空間と、観客の空間に、大きな隔たりがあります。ですが、『 ONCE 』では舞台上の空間と、観客席が一体になっている感覚になります。
観客をおおらかな気持ちで包み込んでくれる作品、ということが始まる前からわかります。
役者の数が極端に少ない
ミュージカル版『 ONCE 』は出演者が少ないです。
ブロードウェイの舞台は、30名以上キャストがいることもあります。さらに生演奏のオーケストラ 20名ほどが入るので、50人以上の出演者になります。
初めて『ワンス』を観に行ったとき、かなりの衝撃を受けました。
13名(うち子役ひとり)
ただ、足りないという感覚はまったくありません。
しかも、キャスト全員が楽器を弾きます。
ミュージカルは生演奏のため、オーケストラは必須です。ですが、今までオーケストラの人たちがガッツリ演技をするのを見たことがありませんでした。
演技が達者なだけでなく、演奏のクオリティが高い。
ただただ感動したのを覚えています。
マイベスト・ミュージカル
『 ONCE 』は僕の好きなミュージカル作品の中でも 1位、2位を争う作品です。
・俳優自身の深さが見えてくる演技
・演奏のクオリティの高さ
・シンプルな舞台だからこそ見える、舞台の底力
・一見地味だけど、作品の持つパワーは凄まじい
笑いどころと真剣なシーンの緩急があり、結末はズッシリと響きます。全編通して、アイリッシュサウンドの音楽が素晴らしいです。
映画との違い
僕は個人的に、映画版よりもミュージカル版の方が好きです。
映画版は、ドキュメンタリータッチで作風が暗く、出演者は地味な印象です。ミュージカル版は笑いにあふれ、出演者も華やかです。
映画版は 1時間25分。舞台版は 2時間15分です。2人の心の動きがより丁寧に描写されています。
楽曲はアレンジされ、生演奏にかなり勢いがあります。
舞台転換のシーンです。楽曲は『 The North Stand 』。
ソングリスト
映画版から 5曲削られ、6曲追加されています。
1:The North Strand
2:Leave
3:Falling Slowly
4:The Moon
5:Ej Pada Pada Rosicka
6:If You Want Me
7:Broken Hearted Hoover Fixer Sucker Guy
8:Say It to Me Now
9:Abandoned in Bandon
10:Gold
11:Sleeping
12:When Your Mind’s Made Up
13:The Hill
14:It Cannot Be About That
1:Falling Slowly
2:If You Want Me
3:Broken Hearted Hoover Fixer Sucker Guy
4:When Your Mind’s Made Up
5:Lies
6:Gold
7:The Hill
8:Fallen From The Sky
9:Leave
10:Trying To Pull Myself Away
11:All The Way Down
12:Once
13:Say It To Me Now
ミュージカル版は配信されています。
隠れすぎた名作
留学時代、『 Once 』に出会いました。
映画がもともと好きで、ミュージカル化されたこと、トニー賞でのパフォーマンスも知っていました。タイムズスクエアを歩けば、デカデカと看板がありました。
その頃、大きな作品ばかりを観ていましたが、ふと気になって劇場に行きました。
あまりに感動してしまいました。
ここまで役者で魅せる作品だったのか……、と大衝撃でした。
第二言語の僕でも映画が聞き取りやすい、というのも嬉しい点です。
主人公の「ガール」はチェコ移民という役柄なので、外国人なまりのセリフをハッキリしゃべってくれます。そこまで難しい英語を使うわけではないので、笑いを理解することができました。
アイルランド人でもないのにアイリッシュサウンドに触発され、すごく懐かしい気持ちになりました。たぶん自分自身を重ねていたんだと思います。故郷を思い出したり、こどもの頃の記憶、自分の核となる部分について考えさせられました。
ミュージカル版『 ONCE 』は映像でも確かに素晴らしいのですが、ライブで見ると全然違います。
再演をいつも熱望しています。
コンサート版『 ONCE 』
『ONCE ダブリンの街角で』は、コンサート版もあります。
ブロードウェイミュージカル『 ONCE ( ワンス ) ダブリンの街角で』イン コンサート、という名前がついています。
セリフや演奏はそのままですが、セットがないバージョンです。
コンサート版もオススメです!
DVD
残念ながら舞台版は、映像化されていません。
なので、ジョン・カーニー監督の作品を紹介します。
先ほども紹介しましたが、原作の『 Once ダブリンの街角で 』です。
2,500円ほど。
2作目は、ニューヨークの街中をレコーディングで走り回る『はじまりのうた』です。キーラ・ナイトレイ、マークラファロ主演。
5,000円ほど。こちらで作品を紹介しています。
3作目は再度、アイルランドに舞台を戻した『 シング・ストリート 』です。
5,000円ほど。
最後はテレビドラマの『 モダン・ラブ 』です。
アマゾンプライムで配信されています。
全 8 話、1話 30分のミニシリーズです。音楽がフューチャーされているわけではありませんが、同じ雰囲気の作品です。『 Once 』ミュージカル版のオリジナルキャストであるクリスティン・ミリオティが第 1 話で大きな存在感を残します。アン・ハサウェイ、ミュージシャンのエド・シーランも俳優として登場しています。

今回は、『ONCE(ワンス)ダブリンの街角で』についてでした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。
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