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「オネーギン」はどんなストーリー?
見どころは?
2つの「パ・ド・ドゥ」とは?

ドラマティック・バレエに分類される「オネーギン」。「白鳥の湖」のような夢物語ではなく、人間くさい作品です。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。年間100公演の舞台鑑賞記録あり。

kazu

今回は「オネーギン」の2つのパ・ド・ドゥの中心に見どころポイントを解説していきます。

※5分ほどで読み終わる記事です。

男性ダンサーの成長の証

オネーギンのあらすじと解説はこちらからどうぞ。

メインの男性ダンサーは2人いて、主人公のオネーギンと、友人のレンスキーです。オネーギンとレンスキーは対立してしまう役どころです。実際には同い年くらいなのですが、ベテランダンサーがオネーギンを踊り、若手のダンサーがレンスキーを踊ることが多いです。

オネーギンを踊るダンサーは若い頃レンスキーを踊っていることもあります。このケースだと男性ダンサーの成長をかなり感じることができます。しかも、レンスキーの心情をしっかり理解した上でオネーギンを踊ることになるので役作りが深いです。

ここからは見どころポイントを紹介しています。

見どころ

第1幕:「鏡のパ・ド・ドゥ」
第2幕:手紙を破るオネーギン
第2幕:オネーギンとレンスキーの決闘
第3幕:「手紙のパ・ド・ドゥ」

ちなみにガラ公演(抜粋を何作品も上演する公演)で、この2つの「パ・ド・ドゥ」はとても人気です。

第1幕:「鏡のパ・ド・ドゥ」

タチヤーナが夢のなかでオネーギンと一緒に踊ります。このオネーギンは実際のオネーギンではなく、タチヤーナが妄想する理想の姿のオネーギンです。幸せに満ち満ちている「パ・ド・ドゥ」で高難度のリフトの連続です。

鏡の中からオネーギンが抜け出てくる演出は、50年前のものなのにアイディアにあふれています。このシーンの出来が悪いと作品が壊れてしまうとても難しいシーンです。


パリ・オペラ座バレエ団の公演より。イザベル・シアラヴォラ、エヴァン・マッキー(元シュツットガルト・バレエ団、カナダ国立バレエ団からのゲスト)による踊りです。

第2幕:手紙を破るオネーギン

タチヤーナをこっぴどく振るオネーギンが見どころです。

すごく残酷なシーンともいえます。タチヤーナはすごくショックを受けますが、オネーギンは何とも思っていません。ひどいシーンなんですが、ここでどれだけ残酷に振ることができるか…、というのが後の展開にも生きていきます。

一方通行の恋愛。非情なシーンなので、客観的に観ると本当にツラいです。でもその反面、タチヤーナは夢見る少女なので、現実にいたら結構やっかいかもしれません。なので、こっぴどく振らないとわからないのかも…、とも思ったり。それにしても、本人の目の前でラブレターを破り捨てるオネーギン。まだ年端もいかないタチヤーナをバッサリです。

一生トラウマになってしまうような断り方…。恐ろしいです。この出来事でタチヤーナが一気に大人へと成長します。

第2幕:オネーギンとレンスキーの決闘

こちらも第2幕より。少しのおふざけから、決闘にまで発展してしまう悲しいシーンです。社会的な地位やプライドを守ることは、現代人にも共感できると思います。さすがに、殺すまではいかないと思いますが…。

このシーンは、演劇的要素が非常に強いシーンです。オネーギン、レンスキー、タチヤーナ、オリガの4人がまるで会話をしているかのように踊ります。セリフまで聞こえてきそうなシーンです。バレエは言葉がないだけに、心の声まで聞こえてくるよな振付になっています。

冷静になればわかる話でも、後に引けないこともある。このどうしようもないドラマがとにかくツラい。オネーギンが完全に悪いんですが、それでもタチヤーナだけはオネーギンを心配しています。あんなにこっぴどく振られたのに、思いを寄せるタチヤーナ。どうしようもない感情がなおさらツラいです。タチヤーナとオリガは最後までふたりを止めに入ります。この時の衣装がすごく特徴があって、印象に残ります。ベールをかぶり、衣装の色も印象的。

そして、結果的にオネーギンはレンスキーを殺してしまいます。この時、演技としてオネーギンが泣き崩れてしまうこともあります。きっとオネーギンは一生後悔して生きていくんだろう、と思います。親友を殺す、という重みを背負って生きるということは、どういうことなんだろうか…、と考えてしまいます。

第3幕:「手紙のパ・ド・ドゥ」

タチヤーナは公爵夫人となっています。オネーギンは、公爵家で再会したタチヤーナに熱烈な恋文を送ります。第1幕の逆パターンです。この「手紙のパ・ド・ドゥ」は、晩餐会で最高潮に盛り上がった場面から、ふたりの踊りになだれ込んでいきます。群舞のシーンは、音がとても速いのでダンサー泣かせです。ガラ公演では二人の踊りだけが切り取られますが、この前段階のシーンがあるのとないのとでは大きな差があります。

そして「手紙のパ・ド・ドゥ」に入ります。オネーギンとタチヤーナは、「レンスキーの悲劇」を分かち合える唯一の存在です。そしてタチヤーナにとって、忘れられない初恋の相手。僕から見るとオネーギンはタチヤーナを純粋に好き、というよりは慰めてくれる相手に思っているのではないか、と感じます。オネーギンはかなり自滅型で、無意識的に人を傷つけてしまうのかもしれません。それでもオネーギンには魅力があって、魅かれてしまうんだと思います。

タチヤーナもこのシーンでは心がかなり揺れています。タチヤーナは成長しているのに、オネーギンは変わらない。自分勝手なオネーギンと、大人になったタチヤーナ。今もよく見かける、女性だけ先にすすんで男性はそのまま、というパターンです。オネーギンはこの期におよんで、タチヤーナに甘えようとしています。客観的に観ていると本当に痛々しい。

めがね

オネーギンよ、どうにか平穏な生活を送ってくれ。

最後はタチヤーナがオネーギンの手紙を、目の前で破ります。これも第1幕の逆パターンです。第1幕で、オネーギンは悪気なく手紙を破ります。ですが、タチヤーナは純粋な愛を持って手紙を破ります。このふたりは永遠にすれ違い続けていく運命なんだ、と感じました。タチヤーナは初恋の相手に純粋に向き合っているのに対し、オネーギンは無意識かもしれないですが打算的。

第3幕の「手紙のパ・ド・ドゥ」では第1幕の「鏡のパ・ド・ドゥ」の振り付けが少しずつ入っています。この振付がとてもいきです。タチヤーナから見ると過去の思い。オネーギンから見るとタチヤーナを罠に引きずり込もうとしているようにも思えます。

この「手紙のパ・ド・ドゥ」は想像力をかきたてられます。タチヤーナは最後きっぱり断ります。タチヤーナの純粋さがオネーギンに勝ってくれて、ホッとしますが、二人が結ばれる姿も見てみたい、とも思うのでした…。

パリ・オペラ座バレエ団より。イザベル・シアラヴォラとエルヴェ・モローです。

オネーギンのオススメDVD

アリシア・アマトリアンがタチヤーナ、フリーデマン・フォーゲルがオネーギンを踊ります。「オネーギン」が作られた本拠地シュツットガルト・バレエ団で踊ってきたベテランふたりによる熱演です。

4,000円ほど。

kazu

「オネーギン」の見どころポイントの紹介でした。
ありがとうございました。