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「ペンギン・カフェ」はどんなストーリー?
初心者でも楽しめる?
見どころは?

音楽が心地よく、動物のコスチュームを着たダンサーたちがたくさん登場する作品です。35分の中に8つのストーリーが入っているので展開も早く、誰でも楽しめる作品になっています。

しかし楽しいだけでなく、その裏には環境へのメッセージがしっかりと込められています。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。

kazu

今回は初心者でも楽しめるデヴィッド・ビントリー振付「ペンギン・カフェ」の作品解説です。

※3分ほどで読み終わる記事です。

SDGsとバレエ

日本でも注目されているSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」。環境問題を考える上で欠かせない「環境破壊と絶滅」。「ペンギン・カフェ」は人類の蛮行による「環境破壊と絶滅」が大きなテーマとなっています。とはいえ、啓蒙的な作品というわけではありません。「エンターテインメントとして楽しんでほしい」と振付のデヴィッド・ビントリーは語っています。

ポップな動物がたくさん登場するのでなんとなく明るい作品になっていますが、ギクッともする内容になっています。

初演:1988年3月9日

イギリス:英国ロイヤル・バレエ団

振付:デヴィッド・ビントレー
音楽:サイモン・ジェフス

さらに振付のデヴィッド・ビントレーが2013年の再演時にインタビューでこう語っています。「ペンギン・カフェがいまだに上演されているのは嬉しいことです。でも悲しいことに、この問題は25年前よりも悪くなっています。」

「ペンギン・カフェ」のあらすじ

ペンギンがウェイターをつとめるキャバレーで、ペンギンと人間が楽しく踊っています。そして動物が次々と登場し、楽しい踊りを披露します。

原題は「Still Life at the Penguin Cafe」。直訳すると「ペンギン・カフェにある静物画」というちょっとよくわからない題名になります。どうやら舞台となるキャバレーの名前が「Still Life(静物画)」、もしくはペンギン・カフェで行われるショーが「Still Life」というようです。

8つのパート

1:ペンギン(オオウミガラス)
2:ユタのオオツノヒツジ
3:テキサスのカンガルーネズミ
4:豚鼻スカンクにつくノミ
5:ケープヤマシマウマ
6:熱帯雨林の家族
7:ブラジルのウーリー・モンキー
8:フィナーレ

フィナーレでは雨が降り始めます。実は、この作品に登場する動物たちは絶滅の危機にひんしています。最後、希望にあふれる音楽に合わせノアの方舟はこぶねを思わせる大きな舟が登場。動物たちが乗り込みます。しかし、ペンギンだけはその舟に乗ることはありません…。

はじまりは音楽から

「ペンギン・カフェ」の音楽はサイモン・ジェフスが作曲しています。1972年ごろ、音楽家のサイモン・ジェフス(1949〜97)を中心にペンギン・カフェ・オーケストラというグループが結成されました。お洒落な環境音楽としてサブカルチャーの世界を盛り上げました。ペンギン・カフェ・オーケストラは、映画やアートシーンに多大な影響を与えています。

バレエ「ペンギン・カフェ」は、1981年~1987年に作曲された音楽を集めています。振付のデヴィッド・ビントレーが、CDジャケットにインスピレーションを受け制作がスタートしました。(ちなみに、バレエ「ペンギン・カフェ」ではペンギン・カフェ・オーケストラの曲をオーケストラ版にアレンジしています。)

ところが制作は順調にいかず、デヴィッド・ビントレーはしばらく放っておいたそうです。

その後、オーストラリア人監督のピーター・ウィアーによる「ザ・ラスト・ウェーブ」と出会います。

この作品にはオーストラリアの先住民族であるアボリジニーの神話が登場します。それは、「ノアの方舟はこぶね」のように世界が大洪水で一掃いっそうされる物語です。デヴィッド・ビントリーはこの部分をヒントに「ペンギン・カフェ」の最後のシーンを構想します。

そして「Doomsday Book of Animals(動物の絶滅)」という本でペンギンの話を見つけます。

オオウミガラス

「ペンギン・カフェ」に登場するペンギンのような鳥は、日本ではオオウミガラスと呼ばれています。このオオウミガラスは学名「Penguinius impennis」といい、もともとペンギンという名前が割り当てられていました。

https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_019015.html

新国立劇場バレエ団「ホームページ」より

現在、南半球に生息するヨチヨチ歩きの鳥をペンギンといいますが、オオウミガラスに似ていたので同一種と考えられペンギンという名前がつけられました。オオウミガラスは、カナダ東部、グリーンランド、アイスランド、そしてスコットランドに生息していました。オオウミガラスの肉や卵は人間にとって貴重な食べ物であり、羽毛は寝具に使われていました。

逃げ足の遅いオオウミガラスは乱獲され、19世紀の初めには数が激減します。ドードーの絶滅にかなり似ています。数が少なくなると希少価値が出てしまい、さらなる乱獲が進みます。

1844年6月3日、アイスランドのエルディ島で最後のつがいがハンターに殺され、最後の卵も割られ絶滅してしまいました。オオウミガラスは自然環境の悪化で絶滅したわけではなく、人間による乱獲によって絶滅してしまいました。「ペンギン・カフェ」の最後のシーンでオオウミガラスが方舟に乗らないのは、ほかの登場人物と違い絶滅してしまったからかもしれません。

多彩なジャンル

「ペンギン・カフェ」はバレエという枠にとらわれず様々なダンスのジャンルが取り入れられています。

さまざまなダンス

・「ユタのオオツノヒツジ」はMGM時代のシアタージャズ(フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのようなダンス)
・「豚鼻スカンクにつくノミ」はイギリスのフォークダンス
・「ケープヤマシマウマ」はモダンダンスのテクニックが取り入れられ、一緒に登場するシマウマのコートを着た女性はモデルのよう
・「ブラジルのウーリー・モンキー」はラテンアメリカのカーニバル

俳優のジェレミー・アイアンズがナレーターを務めています。冒頭のナレーションではオオウミガラスの説明と人間の乱獲で数が激減したことを説明しています。最後のナレーションでは、「1844年6月3日、アイスランドのエルディ島で最後のつがいがハンターに殺され、最後の卵も割られ絶滅したこと」を解説しています。

デヴィッド・ビントリーからの問題提起

デヴィッド・ビントリーは「種が絶滅していくと世界はとてもつまらないものになってしまうのではないか」というメッセージを残しています。

どういうことかというと、グローバリゼーションが進むと世界中で同じものが手に入るという便利さを得ることができます。かし、それと同時に世界が均一化してしまい、独自の文化が消えてしまう危うさがあります。ペンギンは最後、方舟に乗ることはできなかったのですが、まだ絶滅していない動物は方舟に乗れる可能性があります。果たしてその努力を人間がしているのか…。

1989年の映像です。

日本でも観ることができます

この「ペンギン・カフェ」をレパートリーに持っているバレエ団はかなり少ないのですが、日本の新国立劇場バレエ団が公演を行っています。というのも振付のデヴィッド・ビントリーは2010年~2014年まで芸術監督を務めていました。この期間で新国立劇場の個性がかなり確立されたと個人的に思っています。ダンサーたちの自主性が磨かれ素晴らしいダンサーがこの時期たくさんいました。

新国立劇場バレエ団の「ペンギン・カフェ」はとても素晴らしい内容です。ダンサーたちの個性が光る作品になっているので機会があればぜひぜひチェックしてほしいです。僕は「ペンギン・カフェ」のフィナーレの音楽が大好きで、CDも持っています。ダンスと一緒にみると音楽がさらに輝きます。

おまけ:絶滅危惧種はどうなった?

「ペンギン・カフェ」で取り上げられた絶滅危惧種の動物たち。現在の状況について自分で調べてみました。

現在の状況

・ペンギン(オオウミガラス)・・・絶滅
・ユタのオオツノヒツジ・・・1940年ごろには約80あった群れのうち、2004年には30が絶滅し残り約50ほどの群れに減少
・テキサスのカンガルーネズミ・・・1994年に絶滅したかもしれないと宣言。しかし、2017年に4匹のサン・キンティン・カンガルーネズミがメキシコで発見される
・豚鼻スカンクにつくノミ・・・不明
・ケープヤマシマウマ・・・91頭まで減ったが保護活動によって1996年には1200頭まで増加
・熱帯雨林の家族・・・原住民族の生活もどんどん近代化
・ブラジルのウーリー・モンキー・・・自然公園の保護区で保護

間違っていたらごめんなさい。

kazu

今回は「ペンギン・カフェ」のご紹介でした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。