この記事からわかる3つのポイント
・ブロードウェイとバレエ界、2つの世界に残したロビンズの全功績
・『ウエスト・サイド・ストーリー』だけじゃない、トニー賞受賞の代表作
・「これだけは見るべき」傑作リスト
ジェローム・ロビンズ(1918-1998)は、ブロードウェイ・ミュージカルとクラシック・バレエ、2つの世界で歴史的傑作を遺した稀代の振付家です。
この記事では、彼が手掛けた主要作品をジャンルごとにまとめています。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。
※ 3分ほどで読み終わります。
ブロードウェイの歴史を変えた「物語るダンス」
ジェローム・ロビンズ( Jerome Robbins )は、ブロードウェイ・ミュージカルの革命児です。
彼が登場する以前のミュージカルでは、ダンスはあくまで「ショーの彩り」や「休憩」として扱われることが多く、ストーリーとは関係のない場面で踊られることも珍しくありませんでした。 しかし、ロビンズはこの常識を覆しました。彼は「ダンスで物語を語る(Integrated Musical)」という手法を確立しました。
例えば、『ウエスト・サイド・ストーリー』のオープニングでは、セリフを一切使わず、ダンスだけで「2つの不良グループの対立構造」を観客に理解させました。
「言葉で伝えきれない感情が溢れたとき、それがダンスになる」
このロビンズの哲学により、ミュージカルにおけるダンスは単なる装飾ではなく、キャラクターの心情やストーリーを進行させる要素へと進化したのです。
また、彼は振付家が演出家を兼任する「演出・振付家」という地位を確立した第一人者でもあります。作品全体を一つの美学で統一する彼の手法は、現代のミュージカル制作のスタンダードとなっています。
※ロビンズの生涯や作風の特徴、「赤狩り」の影響については、別記事で詳しく解説しています。
👉 ジェローム・ロビンズとは|ブロードウェイとバレエを融合した天才の「功績」と「裏切り」
ブロードウェイ・ミュージカルの代表作
以下に、そんな彼が手掛けた主要なミュージカル作品を紹介します。
ジェローム・ロビンズの作品は 50以上残っています。
| 年 | 作品名 | 備考・解説 |
|---|---|---|
| 1944 | オン・ザ・タウン | デビュー作。水兵3人の恋物語。映画版『踊る大紐育』も有名。 |
| 1951 | 王様と私 | 東洋的な動きを取り入れた優雅な振付が特徴。 |
| 1954 | ピーターパン | フライング(宙吊り)演出を定着させた名作。 |
| 1957 | ウエスト・サイド・ストーリー | 【最高傑作】振付・演出を担当。ダンスで物語を語る手法の到達点。 |
| 1964 | 屋根の上のヴァイオリン弾き | ユダヤの伝統舞踊を取り入れ、トニー賞を受賞。 |
| 1989 | ジェローム・ロビンズ・ブロードウェイ | 自作のベスト盤的なショー。トニー賞作品賞受賞。 |
バレエ作品(ニューヨーク・シティ・バレエ団ほか)
ブロードウェイでの成功と並行して、ロビンズは「ニューヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)」でも数多くの傑作を生み出しました。 彼のバレエ作品の最大の特徴は、クラシック・バレエの厳格なテクニックの中に、「人間らしい自然な仕草」や「ユーモア」を取り入れたことです。
例えば、観客やダンサーの失敗を笑いに変えた『コンサート』や、リハーサル室の鏡を見るダンサーの心理を描いた『牧神の午後』など、彼の作品には常に「リアルな人間」が存在します。 また、『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』のように、物語を排して純粋に音楽と踊りを楽しむ「プロットレス・バレエ」の傑作も多く残しています。
以下に、彼が振付・演出を手掛けた主要なバレエ作品を紹介します。
| 年 | 作品名 | 備考・解説 |
|---|---|---|
| 1944 | ファンシー・フリー | 『オン・ザ・タウン』の原点。水兵たちのコミカルなやり取りが楽しい。 |
| 1951 | 檻(The Cage) | 女性が男性を捕食する昆虫のように描かれる、衝撃的な作品。 |
| 1953 | 牧神の午後 | 【必見】リハーサル室の鏡を見るダンサーたちのナルシシズムを描いた傑作。 |
| 1956 | コンサート | バレエ史上もっとも笑えるコメディ作品。 |
| 1969 | ダンシズ・アット・ア・ギャザリング | ショパンの曲に乗せて。純粋舞踊の傑作として世界中で上演される。 |
| 1995 | ウエスト・サイド・ストーリー組曲 | 同名ミュージカルのダンスシーンを再構成したバレエ作品。 |
『牧神の午後』 (1953年)
ドビュッシーのまどろむような音楽に乗せて、明るい陽が差すリハーサル室で、二人のダンサーが出会います。
最大の特徴は、ダンサーがお互いの目を見るのではなく、客席側にある(はずの)「鏡」を見つめながら踊ること。 そこにはナルシシズムと、触れそうで触れない静謐なエロティシズムが漂います。日常のスタジオ風景をそのまま芸術にしてしまう、ロビンズ・バレエのモダンな感性が凝縮された至宝です。
映像はパリ・オペラ座バレエ団の公演より、エレオノーラ・アバニャートとエルヴェ・モローです。
『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』 (1969年)
ショパンのピアノ独奏曲に乗せて、5組のカップルが草原に集い、踊り、また去っていく――。 明確な筋書きのない「プロットレス・バレエ」ですが、そこには人間同士の温かい交流や、空を見上げるようなノスタルジーが描かれています。
映像はハンブルク・バレエ団の公演より。 クラシック・バレエの厳格なテクニックの中に、歩いたり見つめ合ったりする「日常的な自然な仕草」を融合させることで、ロビンズ特有の「洒脱で洗練されたアメリカン・バレエ」が確立された傑作です。
『ウエスト・サイド・ストーリー・組曲』(1995年)
ロビンズが晩年、自身の代表作であるミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』のダンスシーンだけを抜き出し、バレエ作品として再構成したものです。ダンサーが歌う珍しい演出が含まれています。
下記はニューヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)の来日公演(2013年)の際に公開されたインタビュー映像です。 「緊張感」や「面白さ」について語っています。
作品について:
「これはブロードウェイ版や映画版のダンスシーンを抜き出して凝縮した作品だ。誰もが知る物語だから、過剰な説明はいらない。観客はあの感動や記憶を一瞬で呼び起こすことができるんだ」
バレエダンサーが「歌う」こと:
「NYCBの舞台でダンサーが歌うのは、おそらくこの作品だけじゃないかな」 「初演の時は緊張で口の中がカラカラになったよ(笑)。バレエダンサーとして訓練されてきた私たちにとって、舞台で声を出すというのは、これまでにないクレイジーな挑戦だった」
リアルな喧嘩とクラシックの融合:
「この作品には、純粋なクラシック・バレエと、路上でのリアルな喧嘩の動きが混ざり合っている。普通、喧嘩で相手を蹴る時につま先なんて伸ばさないだろ?(笑) でもここにはそれがある」 「ある晩にスニーカーを履いて『リフ(ジェット団のリーダー)』を演じ、次の晩には純粋なクラシック作品を踊る。この振り幅こそがNYCBの特別なところだね」
【資料】その他の全作品リスト
ここまで、現在でも再演される「主要な傑作」を解説しました。 しかし、多作で知られるロビンズは、生涯で60を超える作品(演劇・オペラ含む)を遺しています。
中には現在では上演機会が少ない作品もありますが、資料としてすべての記録を以下にまとめました。 マニアックな作品名や、細かい初演年を知りたい方は、下のボタンをタップしてご覧ください。
・アメリカン・バレエ・シアター時代
ミュージカル作品には「♪」をつけています。
| 1944年 | 「ファンシー・フリー」 |
| 「オン・ザ・タウン」♪ | |
| 1945年 | 「インタープレイ」 |
・ニューヨーク・シティ・バレエ団時代
| 1950年 | 「不安の時代」 |
| 「ジョーンズ・ビーチ」 | |
| 1951年 | 「王様と私」♪ |
| 「檻」 | |
| 「パイド・パイパー」 | |
| 1952年 | 「バラード」 |
| 1953年 | 「牧神の午後」 |
| 1954年 | 「ピーターパン」♪ |
| 「カルテット」 | |
| 1956年 | 「コンサート」 |
| 1957年 | 「ウエスト・サイド・ストーリー」♪ |
| 1958年 | 「ニューヨーク・エクスポート:オーパス・ジャズ」 |
| 1959年 | 「ジプシー」♪ |
| 1964年 | 「屋根の上のヴァイオリン弾き」♪ |
| 1965年 | 「結婚」 |
| 1969年 | 「ダンシズ・アット・ア・ギャザリング」 |
| 1970年 | 「イン・ザ・ナイト」 |
| 1971年 | 「ゴールドベルク変奏曲」 |
| 1972年 | 「サーカス・ポルカ」 |
| 「レクイエム・カンティクルズ」 | |
| 「ダンバート・オークス」 | |
| 「プルチネルラ」(ジョージ・バランシンと共同振付) | |
| 「幻想的スケルツォ」 | |
| 1973年 | 「ある夜のワルツ」 |
| 1974年 | 「ディバック変奏曲」 |
| 1975年 | 「マダガスカル島民の歌」 |
| 「序奏とアレグロ」 | |
| 「コンチェルト・イン・G」 | |
| 1976年 | 「アザー・ダンス」 |
| 1978年 | 「スケッチブック」 |
| 1979年 | 「四季」 |
| 「オーパス19/ザ・ドリーマー」 | |
| 1980年 | 「ロンド」 |
| 1981年 | 「アンダンティーノ」 |
| 「交響曲第6番≪悲愴≫」(ジョージ・バランシンと共同振付) | |
| 1982年 | 「ガーシュイン・コンチェエルト」 |
| 「フォー・チェンバー・ワークス」 | |
| 「コンチェルティーノ」 | |
| 1983年 | 「グラス・ピーシーズ」 |
| 「アイム・オールド・ファッションド」 | |
| 1984年 | 「アンティーク・エピグラフス」 |
| 「ブラームス/ヘンデル」 | |
| 1985年 | 「エイト・ラインズ」 |
| 1986年 | 「クワイエット・シティ」 |
| 1989年 | 「ジェローム・ロビンズ・ブロードウェイ」♪ |
| 1994年 | 「舞踏組曲」 |
| 1995年 | 「ウエスト・サイド・ストーリ組曲」 |
| 1997年 | 「ブランデンブルク協奏曲」 |
ロビンズの振付を映像で観る
舞台作品はなかなか観る機会が限られますが、以下の映画版ではジェローム・ロビンズ本人が監修・振付した伝説的なダンスシーンを堪能することができます。 まだ観たことがない方は、ぜひチェックしてみてください。
・『ウエスト・サイド・ストーリー』(1961年版)
ロビンズ自身が監督(ロバート・ワイズと共同)も務めた、永遠の傑作。オープニングの指を鳴らすシーンから、アクロバティックな喧嘩のダンスまで、彼の美学が120%詰まっています。
・『屋根の上のヴァイオリン弾き』
ユダヤの伝統とユーモアを融合させたロビンズの手腕が光ります。特に、結婚式のシーンで男たちが瓶(ボトル)を頭に乗せて踊る「ボトル・ダンス」は、バレエファンならずとも必見の名シーンです。
今回は、「ジェローム・ロビンズ」の作品についてでした。ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめています。ぜひご覧ください。




|なぜ批判を覚悟しロシアに戻ったのか?深堀り解説.jpg)



