リアム・スカーレット版「白鳥の湖」はどんなストーリー?
見どころは?
どんな思いで創られた?
31年ぶりに新制作された英国ロイヤル・バレエ団の「白鳥の湖」。
大掛かりな作品で今後長く上演されることになると思います。
とはいえ、いわく付きの作品となってしまいました……。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります
今回は初心者でも楽しめるリアム・スカーレット版「白鳥の湖」の作品解説です。
※3分ほどで読み終わります。
スカーレット版「白鳥の湖」
2018年まで英国ロイヤル・バレエ団はアンソニー・ダウエル版を上演していました。
31年ぶりに新制作されたのがスカーレット版「白鳥の湖」です。
追加振付:リアム・スカーレット/フレデリック・アシュトン
原振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ
演出:リアム・スカーレット
美術・衣装:ジョン・マクファーレン
作曲:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
第1幕&第2幕(65分)
第3幕(43分)
第4幕(34分)
第2幕と第3幕、第3幕と第4幕の間に休憩が入ります。休憩は20分~30分入るので、合計3時間30分くらいになります。
振付のリアム・スカーレットが2020年3月に性的違法行為により解雇されました。そして2021年お亡くなりになりました。
30年ぶりの大改訂を行った「白鳥の湖」は上演は続いています。ただ、抵抗感を持つ人もいるんじゃないかと思います。
英国ロイヤルバレエ団の常任振付家リアム・スカーレットがロイヤルバレエスクールの生徒10人への性的違法行為(性犯罪)で解雇されました。
かんたんなあらすじ
悪魔ロットバルトに湖に連れ去られ、魔法をかけられてしまったオデット。
オデットは「太陽が出ている間は白鳥になる」という呪いをかけられる。この呪いを解くには真実の愛を見つけるしかない…。
オデット(白鳥に変えられてしまったプリンセス)/オディール(オデットそっくりの黒鳥):一人二役
ジークフリート王子
ロットバルト:悪魔/女王の側近
女王(ジークフリート王子の母)
ベンノ(ジークフリート王子の友人)
ジークフリート王子の妹たち
花嫁候補4人(イタリア、スペイン、ハンガリー、ポーランド)
通常の「白鳥の湖」のあらすじについてはこちらをどうぞ。
初演で大失敗したチャイコフスキー作曲の名作。マリウス・プティパとレフ・イワーノフによる振付で復活し、傑作となりました。ハッピーエンド、バッドエンド、さまざまなバージョンがありますが、すべての元となるバージョンの紹介です。
30年ぶりの改訂
今回は新バージョンということで、ストーリーや登場人物、使用曲に工夫がたくさんありました。3年がかりで作った超大作。以前のアンソニー・ダウエル版は30年続いた作品なので、プレッシャーは相当のものだったと思います。
「白鳥の湖」はそもそも突っ込みどころが多いストーリーなので、どう物語に説得力をだすか…。リアム・スカーレットの手腕が問われます。
リアム・スカーレット版の大きな特徴はバッドエンディングです。
制作秘話
ここからは初演時のリアム・スカーレットのインタビュー記事をまとめます。
リアム・スカーレットのインタビューを読み解く
「白鳥の湖」は王子の視点で描かれるストーリーで、全編にわたって王子が登場します。
王子は成長の過程にあり、オデットは王子の未熟さを埋めてくれる存在として演出しています。ロットバルトはオデットの王国を滅ぼし、次はジークフリート王子の王室を崩壊させようとしている、という設定です。
リアム・スカーレットは、手始めに「白鳥の湖」の嫌な部分をリストアップしたと言っていました。なんとなくわかる気がします。「白鳥の湖」はどのバージョンもツッコミどころがあります。そして必要な振付を行っていきました。
とはいえ振付を変えていない部分もあります。第1幕のパ・ド・トロワ(ベンノと王子の妹たちの踊り)、第2幕、第3幕の「黒鳥のパ・ド・ドゥ」、ナポリの踊りにはほとんど手を加えず、もともとあった振付を使っています。スカーレット版はいろいろなバージョンに影響を受けているように感じました。
ロイヤルバレエ団のメイキング映像
性的違法行為の影響で現在動画の公開は停止になってしまいました。動画の内容を文字でまとめていたのでそのまま載せています。
気になる部分の抜粋
「白鳥の湖」の初演は現在のように成功したわけではありませんでした。とはいえ、今では発祥の地ロシアでも評価されています。現在、さまざまな振付家が、それぞれの「白鳥の湖」を創っています。
オデットとオディールは正反対のキャラクターです。しなやかなオデットにくらべ、エネルギーに満ちあふれるオディールは王子を操ろうとします。オデットとオディールの振付はとても似ているのですが、アクセントの取り方がまったく違うためぜんぜん違う振付のように感じます。
リアム・スカーレットのリハーサルは、ダンサーにとってとても明確でわかりやすかったそうです。
ダンサーは振付だけでなく、目線の動き、眉の動きの意味ですら理解する必要がある、と語っています。チャイコフスキーの音楽から着想をもらい、まずはキャラクター像を深堀りし、おとぎ話から現実味あふれるキャラクターにしていきます。
「白鳥の湖」の制作には3年かかったそうです。メイキング映像が撮られた時点では舞台稽古の段階まできています。
リアム・スカーレットは30年ぶりの改訂ということもあり重圧を感じているようです。責任を感じるとともに、新たなロイヤル・バレエの「白鳥の湖」に関わることができたことをとても光栄に思う、と語っています。そして、ケヴィン・オヘア監督とリアム・スカーレットは群舞の白鳥をチュチュに戻したいと願っていたそうです。白鳥たちのチュチュはとても美しく、洗練され、形がパリっとしています。
見どころポイント
さらに詳しい見どころポイントはこちらで紹介しています。
あらすじと各幕の見どころポイントを詳しく紹介しています。また動画ものせていますので参考にどうぞ。
DVD
初演版のDVDの紹介です。
リアム・スカーレットの映像は英国ロイヤル・バレエ団のyoutubeから削除されていますが、DVDはまだ販売されています。

今回は英国ロイヤルバレエ団のスカーレット版「白鳥の湖」の作品解説でした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。