リアム・スカーレット版「白鳥の湖」の見どころは?
高田茜さんが主演?
感想は?
NHKのBS-プレミアムで英国ロイヤルバレエ団、リアム・スカーレット版「白鳥の湖」の放送がありました。
高田茜さん主演でとても素晴らしい公演でした。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります
今回は高田あかねさん、フェデリコ・ボネッリ主演のスカーレット版「白鳥の湖」の感想です。
※3分ほどで読み終わります。
抱える矛盾
リアム・スカーレット版がNHKで放送されました。リアム・スカーレットはセクハラ問題を起こし、その後亡くなられています。
2021年4月16日英国ロイヤル・バレエ団の常任振付家であったリアム・スカーレットが死亡しました。自殺と報じている機関もあります。時系列で解説しています。また踊っている映像も載せています。
こうした人物の振り付けした公演を公共放送で流すのはいいのだろうか、と思いつつ、やはり高田茜さんの主演した公演が見られるのは嬉しい…。
いろいろ矛盾を抱えながら鑑賞です…。
放送ではリアム・スカーレットの件に関しては完全にスルーでした…。
スカーレット版「白鳥の湖」
みどころポイントはこちらで紹介しています。
あらすじと各幕の見どころポイントを詳しく紹介しています。また動画ものせていますので参考にどうぞ。
【原振付】マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ
【追加振付】リアム・スカーレット/フレデリック・アシュトン
【演出】リアム・スカーレット
【美術・衣装】ジョン・マクファーレン
【作曲】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
第1幕&第2幕(65分)
第3幕(43分)
第4幕(34分)
キャスト
キャストが全員紹介されていたわけではないので、わかる範囲です。間違っていたらすいません。
オデット/オディール:高田茜
ジークフリート王子:フェデリコ・ボネッリ
ロットバルト:トーマス・ホワイトヘッド
女王:クリステン・マクナリー
ベンノ:ジェームズ・ヘイ
ジークフリート王子の2人の妹たち:チェ・ユフィ、アナ=ローズ・オサリバン
花嫁候補4人:金子
スペイン:ジーナ・ストーム=ジェンセン
ナポリ:マラヤ・マグリ、アクリ
小さな4羽の白鳥:ロマニー・パジャック、ソフィー・オールナット、ミーガン・グレース・ヒンキス、イザベル・ガスパリーニ
大きな2羽の白鳥:メリッサ・ハミルトン、イツァール・メンディザバル
そのほか、日本人は前田紗江さんがオデットが白鳥になる前の人間役、第1幕の王子の友人、第2幕の白鳥、第3幕王宮の貴族、第3幕の黒鳥、第4幕の白鳥として登場。
中尾
1幕がなぜ暗く感じるのか…
今回スカーレット版を観ていて気づいたことがありました。
通常の「白鳥の湖」は第1幕は王宮のメンバーで和気あいあいとした雰囲気です。のんきな家庭教師や、おちゃらけている道化師がお笑い担当として登場します。
しかし、リアム・スカーレット版では王子と女王の仲が険悪、かつ王子と家庭教師ロットバルトの関係も悪いです。道化師も登場しないので、場の雰囲気を明るくする要因がいません。王子の友人、ベンノがその役割を担ってもいいんじゃないか、とも思うんですが、ベンノはあくまで王子の味方として登場します。
全体的にクスっというところがないので、そうした部分もあってもいいかもな、と思ってしまいました。
そういえば、オーケストラでさえいつもよりも不協和音に聞こえてしまいました。不思議です…。
高田茜さん
主演の高田茜さんは技術力が高いので、一瞬のスキなし。
誰よりも高く飛んでいるし、誰よりも長くポーズをキープします。第3幕のオディールのソロではトリプルのピルエット、そしてフェッテでもトリプルが3回も入っていました。フェッテの後半は表情がキリっとなってすごく素敵でした。
踊りはすごく計算しつくされているように感じました。オデット、オディールの演じ分け、技術力の高さ、観客の盛り上げ方、すべてが素晴らしかったです。
フェデリコ・ボネッリ
バレエ団で1番サポートがうまいといわれているフェデリコ・ボネッリ。いつの間にか、英国ロイヤル・バレエ団で1番長いキャリアの男性プリンシパルです。元英国ロイヤル・バレエ団ファースト・ソリストの小林ひかるさんと結婚していて日本とのつながりも深いです。
スカーレット版の王子は、実直な雰囲気のあるダンサーにとてもハマるので、フェデリコ・ボネッリはぴったりです。
高田さんの踊りを尊重していて、とても素晴らしいサポートでした。
ジェームズ・ヘイ
王子の友人であるジェームズ・ヘイは演技・踊り、ともにさすがです。とくに演技面で舞台を引っぱっていることが多いです。プリンシパルになってほしいな、と思っています。ときどき主役を踊っていますが、もっと主役を踊ってほしいな、とも思っています。背が小さいのがちょっと残念です。
チェ・ユフィ、アナ・ローズ・オサリバン
王子の妹という珍しい役を演じていたふたり。日本人であるチェ・ユフィさんはキャリアも長く貫禄がスゴかったです。目線の使い方がいつ見ても素敵です。
2021年10月、プリンシパルへ昇格が決まったアナ・ローズ・オサリバン。小柄ですがジャンプが高く、大きな踊りで、音の取り方も正確です。観ていてとても気持ちい踊りです。今後の活躍に期待です。
ベンノ、妹たちが舞台をしっかり引き締めていました。
日本人キャスト
金子扶生さん
花嫁候補でハンガリーを踊っていました。腕の使い方がとてもキレイで、身体がほかのダンサーよりもうひとつグーっと伸びています。音をたっぷり使っていて目立っていました。
高田さんのオディールをけっこうにこやかに観ているのがなんか微笑ましかったです。
そして花嫁候補の衣装は相変わらず素敵です。
アクリ瑠嘉さん
フレデリック・アシュトンの恐ろしく速い振付をマラヤ・マグリと絶妙のコンビネーションで踊っています。ただただスゴイ、としか言いようがないです。
前田紗江さん
いつも素敵な表情で踊っていて好きなダンサーです。首を長く使い、音の取り方、伸びのある踊りです。いつもいい位置で踊っているので、すぐに目に入ってきます。ちょっとした身体の使い方がエレガンスです。
群舞としてしっかり合わせて踊っているけれど、ちゃんと個性が立っています。この感覚は本能的なもののように思うので、これからの活躍に本当に期待しています。
「休ませてあげて!」と思うほどほぼ舞台に出ずっぱりでした。
中尾太亮さん
第1幕でジャンプの高いダンサーがいる、と思ったら中尾さんでした。ジャンプが高いだけでなく、身体がしなやかで、つい目がいってしまうダンサーです。金子さんや前田さん同様、品のある踊りで素敵です。
イザベル・ガスパリーニ
ずーっと気になっていたダンサーです。群舞にいることが多く、いつも名前がわからなかったのですが、今回小さな4羽の白鳥を踊っていたのでようやく名前がわかりました。
左から2番目がイザベル・ガスパリーニです。
顔の表情がいつも的確で、演技力・表現力のあるダンサーだな、と密かに注目しています。とくに印象に残ったのはクリスタル・パイト振付の現代作品「フライト・パターン」でした。
群舞をケモノのように操る振付家クリスタル・パイトの作品です。社会的な問題をバレエに変化させ、観客に訴えます。30分ほどの作品ですが、36人の踊りは鳥肌が立ちまくりです。
表情がいつも素晴らしいダンサーで、舞台をよくしてくれるダンサーです。イザベル・ガスパリーニ。覚えました。
DVD
リアム・スカーレット版「白鳥の湖」は映像化されています。
マリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフ主演です。
NHKがリアム・スカーレットの死亡のことや、セクハラについての言及がまったくないのはよくないと思いますが、作品を放送してくれるのは正直嬉しかったです。
高田さんの踊りは本当に素晴らしいので、ぜひ再放送があるときは見てください。
今回は高田あかねさん、フェデリコ・ボネッリ主演の英国ロイヤルバレエ団のスカーレット版「白鳥の湖」の感想でした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめています。ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。