「セレナーデ」にはなんでコミカルなイメージがある?
どんな内容?
見どころは?
チャイコフスキー作曲の「セレナーデ」に振り付けられたバレエ作品があります。
たぶんこの曲は、日本人にも馴染みがあると思います。どちらかというと、コミカルな印象が強いかもしれません。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります
今回はジョージ・バランシン振付の「セレナーデ」の作品解説です。
※5分ほどで読み終わります。
コミカルな曲じゃないの?
いきなりですが、この曲にコミカルな印象を与えた原因となるCMがあります。それが、このCM。
バレエ作品よりもCMを先に知っていたので、チャイコフスキー作曲の「セレナーデ」はコミカルなイメージが先行しています。
「オー人事」のCMで流れているのは、第1楽章冒頭の、たった4小節ほど。たった数秒なのに、強烈にフレーズが頭に残ります。
ジョージ・バランシン振付「セレナーデ」
ジョージ・バランシンがはじめてアメリカで発表したバレエ作品が「セレナーデ」です。
世界中のバレエ団で上演されていて、日本では新国立劇場バレエ団、東京バレエ団が上演権を持っています。
アメリカン・バレエ(ニューヨーク・シティ・バレエ団の前身):ニューヨーク・アデルフィ劇場
振付:ジョージ・バランシン
美術:ガストン・ロンシャン
衣装:ジャン・リュルサ
上演時間:33分
抽象バレエをつくりだし、音楽をダンスで表現したのがバランシンです。バランシンの経歴、振付の特徴を紹介しています。
初演は1935年ですが、その前年の1934年にバレエ学校(スクール・オブ・アメリカン・バレエ)の生徒たちが最初に踊りました。
バランシンは帝政ロシアから亡命し、ヨーロッパに渡ります。その後、ヒトラーが支配するヨーロッパからアメリカに移り住みます。
この時代、アメリカでバレエはあまりメジャーではありませんでした。そのため、バランシンはまずバレエを踊るダンサーを集めることから始めなければいけませんでした。ダンサーを集めるときも「写真だけで選んだ」といわれています。
「セレナーデ」は4つのパートに分かれていて、3つ目のパートの終わりに長い髪の毛をほどいた女性ダンサーが登場します。髪をほどくということは、当時かなりの挑戦でした。バレエにそこまで馴染みがないアメリカだったからこそできた挑戦とも言われています。
こうしたこともあり、バランシンの作品は「ネオクラシック(新しいクラシック)」というジャンルで呼ばれています。
「セレナーデ」は何度も何度も改訂がおこなわれ、振付だけでなく、舞台装置、衣装が何度も変更されています。
あらすじ
17人の女性ダンサーが天窓の日差しを眩しそうに手でさえぎるような動きからはじまります。そして、いっせいにつま先を正面から横にバッと開きます。
26人
名前のある役
・ロシアン・ガール
・ワルツ・ガール
・ダーク・エンジェル
「セレナーデ」は希望の話です。
もしいま「自分は何も持っていない、教養がない、外見に自信がない、と感じていても、いつでも変えることができる」というメッセージが込められています。
「セレナーデ」の裏話
「セレナーデ」は、女性ダンサーが舞台に出たり入ったり、入れ替わりの多い作品です。
これにはこんな理由があったと言われます。
作品を発表するためには、お金を援助してくれるパトロンのような存在が必要です。
セレナーデに出演するダンサーは、家族がパトロン(お金を援助する人)というパターンが多かったようです。彼女たちはいろいろな習い事をしています。そのひとつがバレエ。彼女たちを出演させる代わりに、お金を援助してもらっていたそうです。
ただ、ダンサーたちは忙しくリハーサルに来ないこともありました…。そうなってしまうと、きっちり振り付けができません。
1回目のリハーサルには17人が参加。2回目になると9人、3回目は6人という状況だったようです。そのため、「セレナーデ」はお嬢様たちに合わせ、出たり入ったりが忙しい作品となっています。
かなりストイックなイメージのあるバランシンが「こんな状況を許していたのか」と思うととても意外でした。
初演時
現在上演されている「セレナーデ」は高度なテクニックがたくさん入っていますが、初演のときはバランシンの振付を踊りこなせるダンサーがいなかったため、ソロの役、男性とペアの踊り(パ・ド・ドゥ)がありませんでした。
その後、ソロの振付が追加されました。このソロがのちに5人に分けられ、最終的に今のかたちである「ワルツ・ガール」「ロシアン・ガール」「ダーク・エンジェル」の3人となりました。
バランシンの作品ではセットがとてもシンプルなのですが、「セレナーデ」はセットが組まれたことがありました。
また、衣装もいろいろ変更が加えられ、ある時は帽子をかぶっていたこともありました。かなりの試行錯誤をくり返し、現在のセットのないシンプルな形になっています。
曲順が変わっている
「セレナーデ」は、チャイコフスキーが1880年に作曲しました。
第1楽章:ソナチネ(9:31)
第2楽章:ワルツ(3:54)
第3楽章:ロシアン・ガール(7:51)
第4楽章:エレジー(9:11)
第1楽章冒頭の重い始まりは「チャイコフスキーの内的衝動を強く表現している」とされます。音楽が進んでいくと、穏やかな曲が続きます。
バランシンは、第3楽章と第4楽章を入れ替えて使用しています。そのため本来は「第3楽章:ロシアン・ガール」が4曲目になります。
チャイコフスキーの「セレナーデ」は第3楽章に第1楽章冒頭の印象的なフレーズが入っていて一度おさまります。
その後「第4楽章:エレジー」で余韻のある終わりになっています。
映像
少し古い動画の紹介です。バランシン最後のミューズであるダーシー・キスラー主演です。16歳でニューヨーク・シティ・バレエ団に入団し、18歳でプリンシパルになった実力の持ち主です。
DVD化はあまりされていないです。
今回は「セレナーデ」のご紹介でした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。
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