「スターズ・アンド・ストライプス」はどんなバレエ?
ストーリーは?
見どころは?
ジョージ・バランシン振付の「スターズ・アンド・ストライプス」はアメリカを讃えるような作品です。
おもちゃの人形が踊っているような楽しいバレエで、フィナーレではアメリカを感じることができると思います。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります
今回はジョージ・バランシン振付「スターズ・アンド・ストライプス」の解説です。
※3分ほどで読み終わります。
「スターズ・アンド・ストライプス」について
「スターズ・アンド・ストライプス」は、アメリカを讃えるセレモニー的バレエです。
衣装が可愛く、女性ダンサーはトウシューズの下に白いソックスを履いています。振付はかなり独特で、敬礼のポーズもキュートです。
5つのパートに分かれていて、第4パート(メインパート)に主役2人が登場します。この2人の踊りは時々ガラ公演(作品の人気パートをいくつも上演する公演)で観ることができます。おもちゃの兵隊が踊っているようなお茶目なパートです。
アメリカ:ニューヨーク・シティセンター(現ディヴィッド・H・コーク劇場)のこけら落とし公演(会場のオープン公演)
振付:ジョージ・バランシン
衣装:カリンスカ
作曲:ジョン・フィリップ・スーザ
編曲:ハーシー・ケイ
舞台:デビッド・ヘイズ
照明:マーク・スタンレイ
上演時間:28分
抽象バレエをつくりだし、音楽をダンスで表現したのがバランシンです。バランシンの経歴、振付の特徴を紹介しています。
音楽
「Stars and Stripes」は、ジョン・フィリップ・スーザが作曲した「The Stars and Stripes Forever」という曲がもとになっています。邦題は「星条旗よ永遠なれ」です。
アメリカ国旗は星条旗とも呼ばれ、星のマーク(stars)とストライプ模様(Stripes)で構成されています。
「マーチの王」と呼ばれ、100曲以上のマーチング曲をつくっています。また、マーチングで使うマーチング用チューバ「スーザフォーン」を考案し、19世紀のバンド音楽の発展に貢献しています。
アメリカでは、7月4日の「独立記念日」に軍事パレードが行われます。ジョージ・バランシンはこの軍事パレードに触発され、「スターズ・アンド・ストライプス」が誕生したと言われています。
特に「星条旗よ永遠なれ」という曲はアメリカの国家的行事で聞くことができます。ジョージ・バランシンは純粋にこの曲が好きだったといわれています。ネルソン・ロックフェラーがニューヨーク州知事になったときにも聞く機会があったようです。
愛国心にあふれる作品なので、アメリカ以外の国で観ると少し不思議な気持ちになる作品です。
ちなみに日本人は運動会を思い出す人が多いかもしれません。
あらすじ:5つの “campaign(作戦)”
「スターズ・アンド・ストライプス」は具体的なストーリーはないですが、5つのパートに分かれ、それぞれのパートに副題がついています。
主役:男性1人、女性1人
ソロ:男性1人、女性2人
群舞:男性12人、女性24人
1st campaign:Corcoran Cadets
第1パートは「コーコラン士官候補生」。
Happy Fourth of July! May your holiday be just as festive and fun as George Balanchine’s patriotic ballet Stars and Stripes. pic.twitter.com/6gjgnKt1kK
— nycballet (@nycballet) July 4, 2019
1人の女性ソロ(バトンを持つ踊りがあり)と、12人の女性群舞で踊られるパートです。衣装がキュートです。
2nd campaign:Rifle Regiment
第2パートは「ライフル連隊」です。
こちらも1人の女性ソロ(バトンを持つ踊りがあり)と、12人の女性群舞で踊られるパートです。
第1パートと構成は同じですが、衣装の色が赤のチュチュから青のチュチュに変わります。
第1パート、第2パートのソロの女性は若手が起用されることも多いです。とはいえステップは難しい……。
僕が実際に観たときにステップがこなせないダンサーもいました。
3rd campaign:Thunder and Gladiator
第3パートは「雷と剣闘士」です。
1人の男性ソロと12人の男性群舞で踊られます。とてもスピーディーで小回りが求められる踊りです。男性ソロは、バレエ団の中でも小柄なダンサーによって踊られることが多いです。
切れ味抜群、高度なテクニックでとても盛り上がるパートです。
4th campaign:Liberty Bell、El Capitan
第4パートは主役ふたりのパ・ド・ドゥです。女性には「自由の鐘(Liberty Bell)」、男性には「キャプテン(El Capitan)」というキャラクター名がついています。
女性は思わせぶりに男性を翻弄しながら、生き生きと楽しそうに踊ります。男性は自信満々で、茶目っ気あるキャラクター。
バランシンの思うアメリカンガールとアメリカのイケてる男という感じなのかもしれません。
タイラー・ペックとゴンザロ・ガルシアによる踊り。7:53~のパート(コーダ)の人気が高いです。
5th campaign:The Stars and Stripes Forever
最終パートの「星条旗よ永遠なれ」。
41人すべてのダンサーが登場します。主役2人も帽子をかぶって登場します。
最後、背景いっぱいに星条旗が登場すると、観客席は拍手につつまれます。
第3パートのソロ男性が、第1パート・第2パートのソロ女性と一緒に踊ります。ニューヨーク・シティ・バレエ団の群舞は背が高いダンサーが多いです。一方、第3パートのソロの男性は小柄な男性ダンサーが多いす。そのため、アンバランスな身長のペアが出来上がってしまうこともあります。
僕がニューヨーク・シティ・バレエ団でみたとき、さきほど第3パートで紹介したダニエル・ウルブリクトが踊っていました。ダニエル・ウルブリクトは小柄なのに対し、ペアの女性の背が高く、あまりの身長差に客席から若干「キャーかわいい」みたいな悲鳴が上がっていました。
こちらは昔の映像で、第4パートから観ることができます。最後のパートのカメラアングルがぐるんぐるんしてしまっているのが、ちょっと残念。
1984年ロサンゼルス・オリンピック
「スターズ・アンド・ストライプス」はオリンピックで踊られたこともあります。第5パートの最終部分が踊られました。
有色人種のバレエ団「ダンス・シアター・オブ・ハーレム」が踊る「スターズ・アンド・ストライプス」です。もともとニューヨーク・シティ・バレエ団にいた黒人初のバレエダンサーであるアーサー・ミッチェルがつくった「ダンス・シアター・オブ・ハーレム」です。
全編で見るとかなり印象が変わるので、抜粋ではなく、ぜひ全編を見てほしい作品です。
僕はアメリカ人ではないですが、最後のシーンをみるとジーンときてしまいます。
ニューヨーク・シティ・バレエ団
いつもは最後にDVDを紹介していますが、映像化されていないのでこんな映像を。
ニューヨーク・シティ・バレエ団で後援者向けに実際のレッスンスタジオで、現役ダンサーが教えるというクラスです。
先ほど紹介した「3rd campaign:Thunder and Gladiator」の冒頭部分。
ニューヨーク・シティ・バレエ団はこうした活動も積極的に行い、ニューヨークに根ざしています。
こうした点も僕が大好きな点です。

今回は「スターズ・アンド・ストライプス」をご紹介しました。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。