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「白鳥の湖」にはたくさん種類がある?
もとのバージョンは今も見られる?
どのバージョンがオススメ?

「白鳥の湖」ほど数多くのバージョンがあるバレエ作品はありません。

想像力を自由に働かせ、新しい「白鳥の湖」が今も誕生し続けています。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります

kazu

今回はさまざまなバージョンの「白鳥の湖」をまとめていきます。

※3分ほどで読み終わります。

基本形はプティパ/イワーノフ版

1877年に初演されたライジンガー版「白鳥の湖」がすべてのはじまりです。

しかし、初演は失敗に終わります。

お蔵入りしていましたが、1895年に新たな振付で復活上演されます。このときの振付がマリウス・プティパとレフ・イワーノフでした。

そして、大成功しました。

「白鳥の湖」には基本形が存在します。

それが1895年に大成功したプティパ/イワーノフ版「白鳥の湖」です。

プティパとイワーノフによる振付は完成度が高いため、その後つくられた多くのバージョンが2人の振付をもとにしています。

特に「第2幕(イワーノフ振付)」「第3幕:民族舞踊、オディールとジークフリート王子によるグラン・パ・ド・ドゥ(プティパ振付)」はそのまま使用されることが多いです。

創作が許されている

同じタイトルなのに、多くのバージョンを持つ「白鳥の湖」。

「白鳥の湖」が長く繁栄している理由はここにあるかもしれない、と思っています。

映画にリメイクがあるように、「白鳥の湖」もリメイクされています。しかも、いまだにリメイクされ続けています。

そして、制作者はかなり自由にアレンジしています。

「白鳥の湖」はつねにリメイクが許されているので、すたれることなく新たな生命いのちを手に入れ進化し続けています。

これからもきっと素晴らしい「白鳥の湖」が登場し続けると思います。

21のバージョン

ここからは改訂版「白鳥の湖」をどんどん紹介していきます。

代表的な「白鳥の湖」

初演年:振付師(上演されたバレエ団)

1895年:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ版(マリインスキー・バレエ団)
1901年:アレクサンドル・ゴルスキー版(ボリショイ・バレエ団)
1933年:アグリッピナ・ワガノワ版(キーロフ・バレエ団→現在はマリインスキー・バレエ団)
1934年:ニコライ・セルゲイエフ版(ヴィック・ウェルズ・バレエ団→現在は英国ロイヤル・バレエ団)
1950年:コンスタンチン・セルゲイエフ版(キーロフ・バレエ団→現在はマリインスキー・バレエ団)
1951年:ジョージ・バランシン版(バレエ協会→現在はニューヨーク・シティ・バレエ団)
1953年:ウラジーミル・ブルメイステル版(モスクワ音楽劇場バレエ)
1963年:ジョン・クランコ版(シュツットガルト・バレエ団)
1964年:ルドルフ・ヌレエフ版(ウィーン国立歌劇場バレエ団)
1969年:ユーリー・グリゴローヴィチ版(ボリショイ・バレエ団)
1976年:ジョン・ノイマイヤー版(ハンブルク・バレエ団)
1981年:ピーター・ライト版(サドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ団→現在はバーミンガム・ロイヤル・バレエ団)
1984年:ルドルフ・ヌレエフ版(パリ・オペラ座バレエ団)
1987年:マッツ・エック版(クルベリ・バレエ団)
1987年:アンソニー・ダウエル版(英国ロイヤル・バレエ団)
1996年:マシュー・ボーン版(アドヴェンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ)
2000年:ケヴィン・マッケンジー版(アメリカン・バレエ・シアター)
2001年:ユーリー・グリゴローヴィチ版(ボリショイ・バレエ団)
2002年:グレアム・マーフィー版(オーストラリア・バレエ団)
2016年:アレクセイ・ラトマンスキー版(チューリッヒ・バレエ団)
2018年:リアム・スカーレット版(英国ロイヤル・バレエ団)

このなかで「白鳥の湖」の流れを変えるようなバージョンが2つあります。

アグリッピナ・ワガノワ版

まずは1933年初演のアグリッピナ・ワガノワ版です。

時代設定を中世から19世紀に変更しています。

ワガノワ版以降、時代設定が自由になりました。

そして、1人2役で演じるオデットとオディールを2人別々に踊らせました。

ジョン・クランコ版

そして1963年のジョン・クランコ版です。

物語の主人公である王子の人物像を深掘りしています。

多くの人が疑問に思っていた「オデットとオディールを間違えた王子を本当に許していいのか…」という問題に納得感ある答えを出したバージョンです。

結末に至るまでの過程で、王子を丁寧に描いたバージョンです。

この後つくられるヌレエフ版にも大きな影響を与えています。

1963年、シュツットガルト・バレエ団のジョン・クランコ版に客演したルドルフ・ヌレエフ。

いまいちわかりづらかった王子の性格を深く表現したジョ・クランコ版に出演し、インスピレーションを得ます。王子の人物像を理解したヌレエフが1964年に自身で振付をおこないます。

クランコ版以降、「白鳥の湖」は王子の人物像が深く表現されるようになり、王子のソロが追加されました。

プティパ/イワーノフ版にアンソニー・ダウエル版

さまざまなバージョンのなかで1895年のプティパ/イワーノフ版の振付にもっとも近いのは、1987年につくられたアンソニー・ダウエル版「白鳥の湖」です。

ただし、現在はどのバレエ団でも踊られていません。ですが映像で残っています。

マリアネラ・ヌニェスとティアゴ・ソアレスの元夫婦の共演です。

第3幕を少しご紹介します。この映像ではオディールのソロ、ジークフリート王子のソロ、そしてフィナーレのコーダ部分のシーンです。

1982年版

振付のアンソニー・ダウエル本人の映像も残っています。

ナタリア・マカロワとアンソニー・ダウエル主演。伝説のバレエダンサー2人よる「白鳥の湖」です。

「白鳥の湖」3選

勝手に好きな「白鳥の湖」3つ選んじゃいます。

グレアム・マーフィー版

グレアム・マーフィー版は、イギリス王室を舞台にしていてダイアナ妃、チャールズ皇太子、カミラ夫人を彷彿とさせる人物が登場します。


僕はグレアム・マーフィー版「白鳥の湖」が一番好きです。それぞれの登場人物にストーリーがあり、踊りにすべて意味があり、ストーリーと踊りが密接につながっています。

古典バレエである「白鳥の湖」は踊りとストーリーが切り離されているシーンもありますが、マーフィー版では踊り自体にストーリーが込められている物語バレエとなっています。

さらに詳しくはこちらで紹介しています。

ルドルフ・ヌレエフ版

王子の人物像をかなり掘り下げたバージョンで、悪役のロットバルトがとても重要な役に格上げされています。


今は引退してしまったアニエス・ルテステュ、ジョゼ・マルティネス、カール・パケットです。

ケヴィン・マッケンジー版

ヌレエフ版に影響を受けていて、悪役のロットバルトが魅力的な男性として登場するバージョンです。


ふだん王子を踊る主役級のダンサーが悪役を演じるのも魅力的です。ロットバルトが花嫁候補を惑わす踊りのシーンがうまくストーリーに組み込まれていて「なるほど」となりました。

4人の花嫁候補が催眠術にかけられたようになります。1:37の部分、抵抗しているかに見えたのポーランド王女が結局スーッとロットバルトに引き寄せられる場面は笑いも起こります。

kazu

今回は「いろいろなバージョンの白鳥の湖」のご紹介でした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。