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「ザ・チェリスト」はどんなストーリー?
初心者でも楽しめる?
チェロをダンサーが表現するってどういうこと?

2020年の新作バレエ「ザ・チェリスト」。チェロを擬人化した感動作となっています。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります。

kazu

今回は「ザ・チェリスト」のあらすじと作品解説、モデルとなったジャクリーヌ・デュ・プレをご紹介します。

※5分ほどで読み終わる記事です。

人間が楽器を演じる??

振付家のキャシー・マーストンがジャクリーヌ・デュ・プレを題材にしたバレエ作品をつくりました。キャシー・マーストンは世界各国から引っ張りだこの振付家です。天才チェリストであるジャクリーヌ・デュ・プレの生涯と、音楽への愛を描いています。

主人公ジャンクリーヌ・デュ・プレ役は、英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのローレン・カスバートソンです。ローレン・カスバートソンは実際のジャクリーヌ・デュ・プレに風貌を似せています。「ザ・チェリスト」はローレン・カスバートソンのために振り付けられています。

ジャクリーヌ・デュ・プレと結婚する指揮者ダニエル・バレンボイム役にプリンシパルのマシュー・ボール。そして、楽器のチェロを、プリンシパルのマルセリーノ・サンベが演じます。

「ザ・チェリスト」

ジャクリーヌ・デュ・プレの愛と喪失を描いています。病気で才能が失われていく状況はかなり残酷です。

「自分で才能を見つけるのか、才能が自分をみつけるのか。」この作品最大の特徴は、ジャクリーヌ・デュ・プレだけでなく、チェロの視点からも描かれている点です。

上演時間:55分

21シーン:各シーン2分~4分(物語がどんどん展開していきます)

ジャクリーヌ・デュ・プレはスキャンダラスな人生を送っているのですが、この部分は排除され、チェロとジャクリーヌ・デュ・プレの関係性に焦点があたっています。

あらすじ

ジャクリーヌ・デュ・プレとチェロの、出会いと別れの物語です。ジャクリーヌ・デュ・プレは幼少期にチェロと出会い、音楽学校に通いはじめます。学校生活にはあまり馴染めなかったものの、才能を見出され独り立ちします。

そして大きなコンサートが開かれることになります。のちに夫となるバレンボイムとの共演、結婚、幸せな日々。

幸せな演奏旅行の日々が続くように思いましたが、多発性硬化症(MS)がジャクリーヌ・デュ・プレを襲います。どんどん症状がひどくなるに合わせて、バレンボイムとすれ違っていきます。失意の中、実家に戻るジャクリーヌ・デュ・プレ。症状はさらに悪化し、うつ病も発病してしまいます。そんなとき、手の震えに改善の兆しがあらわれます。多発性硬化症は日によって、症状が軽くなることもあるそうで、ジャクリーヌ・デュ・プレの体調が回復します。すると、バレンボイムがまた戻ってきます。

そして復帰をかけコンサートに挑戦することになります。しかし、また多発性硬化症の症状が再発してしまいます。以前のようにチェロをひくことが不可能と思い知らされるジャクリーヌ・デュ・プレ。去っていくバレンボイム…。

チェロとの別れで幕を閉じます。

制作

スタッフ

振付:キャシー・マーストン(CATHY MARSTON)
脚本:キャシー・マーストン(CATHY MARSTON)、エドワード・ケンプ(EDWARD KEMP)
音楽:フィリップ・フィーニー(PHILIP FEENEY)
舞台装置:ヒルデガード・ベクトラー(HILDEGARD BECHTLER)
衣装:ブレッヒェ・ファン・バーレン(BREGJE VAN BALEN)
照明:ジョン・クラーク(JON CLARK)
振付協力:ジェニー・タッターサル(JENNY TATTERSALL)

チェロのソロ演奏:ヘティ・スネル(Hetty Snell)
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

キャスト

ローレン・カスバートソン:ジャンクリーヌ・デュ・プレ
マルセリーノ・サンベ:チェロ
マシュー・ボール:ダニエル・バレンボイム

エマ・ルカノ:幼少期のジャクリーヌ・デュ・プレ
ローレン・ゴッドフリー:幼少期の姉
クリステン・マクナリー:母
トーマス・ホワイトヘッド:父
アナ・ローズ・オサリヴァン:姉
ギャリー・エイヴィス:音楽教師
ニコル・エドモンズ:音楽教師
ベンジャミン・エラ:音楽教師
アクリ瑠嘉:友人
ポール・ケイ:友人
ジョセフ・シセンズ:友人

ジャクリーヌ・デュ・プレとは?

主人公であるジャクリーヌ・デュ・プレは1945年、イギリスで生まれます。わずか10歳で国際的なコンクールに入賞。国際的な名声を得ます。ですが、26歳ごろから多発性硬化症(MS)に苦しめられはじめ、28歳で引退します。病名がわかるまでかなりの苦悩があったようです。そして、42歳でその生涯を閉じています。

多発性硬化症(MS)

多発性硬化症は英語で“Multiple(空間的・時間的に多発する)Sclerosis(硬化)”といい、その頭文字をとって“MS(エムエス)”と呼ばれます。人により症状に違いがありますが、身体の一部に障害がでる病気です。

ジャクリーヌ・デュ・プレの場合、身体のしびれによりチェリストからの引退を余儀なくされました。

カラダ全体を使って情熱的に演奏するジャクリーヌ・デュ・プレは賛否両論ありました。ですが、演奏の才能は誰もが認めていて、衝撃的なチェロ演奏は記憶に刻みこまれます。ジャクリーヌ・デュ・プレの映像が残っているのでご紹介します。

ジャクリーヌ・デュ・プレの代表曲であるエルガーの「チェロ協奏曲」の映像です。ドカっと座って情熱的に演奏するジャクリーヌ・デュ・プレの姿がとてもかっこいいです。指揮をつとめているのが、ジャクリーヌ・デュ・プレと結婚したバレンボイムです。

映画版

ちなみに、ジャクリーヌ・デュ・プレを題材にした「本当のジャクリーヌ・デュ・プレ」という映画が制作されています。この作品はジャクリーヌ・デュ・プレの姉と弟が書いた「風のジャクリーヌ」という本の映画化作品です。主演のエミリー・ワトソンはアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされています。

この作品では、ジャクリーヌ・デュ・プレのスキャンダラスな人生が描かれています。姉の夫との不倫。夫のバレンボイムは結婚中でありながら、パリでロシア人のピアニストと二人の子供がいたこと。などなど…。

現在は廃盤になっています。この2つの作品は暴露的な内容が含まれていて、どこまでが本当のことかは実際にはわかりません。

めがね

ただ、どちらの作品をみても、僕はジャクリーヌ・デュ・プレの演奏の評価が落ちるものではない、と思いました。

チェロ

「ザ・チェリスト」でポイントとなるのは、マルセリーノ・サンベが演じるチェロです。表現方法がとても豊かで、ジャクリーヌ・デュ・プレの楽器の音色の豊かさを表しています。

キャシー・マーストンは2017年デンマーク王立バレエ団に「Dangerous Liaisons」という作品を振り付けています。この作品でもチェロのシーンが登場し、楽器をダンサーが演じています(下の映像11秒の部分)。キャシー・マーストンは小道具を使わずに、チェロを身体で表現する方法を発見します。

この時はたった30秒という短い時間だったそうですが、「チェロを見事に表現できた」という実感があったようです。

チェロという楽器は、抱きかかえて演奏し、振動がカラダにしっかり伝わってきます。そして人間のようにくびれがあり、その音は人間の声のようにも聞こえる音程です。だからこそ、人間がチェロを演奏するのに適している、と考えたようです。

ジャクリーヌ・デュ・プレが愛用したチェロ

「ザ・チェリスト」ではジャクリーヌ・デュ・プレと楽器の関係に光があたっています。演奏者が死んだとしても名器とよばれるチェロは時代を超えて引き継がれていきます。ジャクリーヌ・デュ・プレは2つのストラディバリウスを使用していました。

1673年製「ストラディバリウス」

プロデビューの12歳のとき1673年製ストラディバリウスを使用しています。このチェロは現在「ジャクリーヌ・デュ・プレ」という名がつけられロシア人のチェリスト、ニーナ・コトワが1970年から使用しています。

1713年製「ストラディヴァリウス:ダヴィドフ」

正式なデビューである16歳の時、1713年製ストラディヴァリウス「ダヴィドフ」を贈られます。この「ダヴィドフ」を生涯にわたって使用します。現在は世界一のチェリストであるヨーヨ・マが使用してます。

音楽

作品で使用されている音楽は、エルガー、ベートーベン、メンデルスゾーン、ラフマニノフ、シューベルトの楽曲を細かく区切り、とても自然な形でつなげています。ときどき、聞いたことのあるフレーズが入ってくるとゾクッとします。

編曲を担当したフィリップ・フィーニーの才能が光っています。エルガーのチェロ協奏曲はもちろん、病気になったあとのザラツイたチェロの音色、ジャクリーヌ・デュ・プレのテーマとなるピアノの音。音楽の美しさが心に残ります。

脇を固めるダンサーたち

群舞に関しては、ダンサーたちがシーンごとにさまざまな役を演じています。学校の同級生のこともあれば、オーケストラを演じることもあり、コンサートの観客になることもあれば、家具になることもあります。

アイディア満載なオーケストラ

最後に指揮バレンボイム、チェリストをジャクリーヌ・デュ・プレ、オーケストラをダンサーが演じるシーンの紹介です。音楽が視覚的に動き回ります。音の高低や、柔らかい音、硬い音が目の前で飛び回るシーンは必見です。

初演キャストでDVDが発売されています。

実際の舞台の感想はこちらからどうぞ。

kazu

以上、「ザ・チェリスト」の作品の成り立ちとジャクリーヌ・デュ・プレについてでした。
ありがとうございました。