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「テーマとバリエーション」の内容は?
見どころは?
ダンサーが緊張するのはなぜ?

「テーマとバリエーション」は20分ほどの作品です。

幕が上がる前、主演ダンサーは足が震えてしまうとも…。

ダンサーが緊張する作品とは?

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります

kazu

今回は「テーマとバリエーション」の作品解説です。

※3分ほどで読み終わります。

ダンスで音楽を表現する

1970年に発表されたジョージ・バランシン振付「テーマとバリエーション」。

バランシンは、踊りで音楽を表現することに力を入れています。

そのため具体的な物語はありません。どう感じるかは、観客にまかされています。

音楽を大事にしたいと考えたジョージ・バランシンは、曲名をそのまま作品の題名にしました。

使用されているのは、チャイコフスキーが作曲した「組曲第3番ト長調」の第4曲「主題と変奏(テーマとヴァリエーション)」です。

ジョージ・バランシン振付「テーマとバリエーション」

「テーマとバリエーション」は帝政ロシア時代のクラシックバレエ(古典バレエ)で構成されています。

古典バレエは身体のポジションが厳格に決まっているため、ダンサーには正確な動きが求められています。

1947年9月27日初演

バレエ・シアター(アメリカン・バレエ・シアターの前身)

振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー「組曲第3番ト長調から、第4曲〈主題と変奏(テーマとヴァリエーション)」
照明:デイヴィッド・ヘイズ
衣装:カリンスカ

上演時間:21分

「テーマとバリエーション」は、もともとバレエ・シアター(現在のアメリカン・バレエ・シアター)のために振り付けられました。

バランシンがつくったニューヨーク・シティ・バレエ団では1960年から踊られるようになりました。

現在、世界中のバレエ団で上演されています。

日本では、新国立劇場バレエ団、東京バレエ団がレパートリーに持っています。

若さにこだわるバランシン

バランシンは生涯に渡り、若いダンサーを重宝していました。

「テーマとバリエーション」も若さあふれる作品です。踊りにスピード感があるため、勢いが必要です。

古典バレエに比べ男性が多く登場します。男性の勢いもあり、パワーあふれる作品となっています。

出演人数

主役カップル:1組2名
リードカップル:2組4名
群舞のカップル:8組16名

チャイコフスキー作曲

チャイコフスキー作曲の「組曲第3番ト長調」、第4曲「主題と変奏(テーマとヴァリエーション)」は21分あります。

古典バレエでは、主役と群舞の踊りには流れがあります。

ですが、この「テーマとバリエーション」ではダンスで音楽を表現するために、主役と群舞の登場順がかなりバラバラです。

第4曲は12のパートにわかれています。21分の中で12個もパートがあるので、どんどん展開が変わっていきます。

主役がいつ登場するのかわからないので、飽きにくい作りになっていると思います。

美しい群舞

「テーマとバリエーション」は遠くから見ると群舞の動きの美しさに気づきます。

特に一番最後のパートは出演人数も多く、万華鏡を見ているかのようです。

ダンサーにとっての試金石

「テーマとバリエーション」を踊るためには正確なテクニックが必要で、力の抜きどころがまったくないバレエといわれています。

ニューヨーク・シティ・バレエ団には、こんな話があります。

群舞を踊っていたキャスリーン・トレーシー。主演ダンサーが舞台上で堂々と踊っているのを舞台袖から見ていました。

その主演ダンサーが舞台袖に戻ってきました。

すると、その主演ダンサーは舞台袖で震えていました…。

キャスリーン・トレーシーは、主演のプレッシャーを肌で感じることができたそうです。

そして、このバレエの本当に難しいところは、ガチガチになっていると観客もその空気感が伝わってしまう点です。余裕で踊っているように見えなければいけません。

舞台でリラックスできるというのは、天性のダンサーである証拠でもあります。

「テーマとバリエーション」を余裕で完璧に踊るダンサーは、天性のダンサーである証拠、といえるかもしれません。

1978年「アメリカン・バレエ・シアター」による公演

バランシンのミューズだったゲルシー・カークランドと、バレエ界のスーパースターであるミハイル・バリシニコフによる「テーマとバリエーション」。

1978年、アメリカン・バレエ・シアターによる公演です。

指揮は遠藤明さんがつとめています。

この映像をバレエ界の伝説的なダンサーであるシルヴィ・ギエムがFacebookのページで紹介していました。

「知的で、エレガントで、完璧。今見てもまったく色褪せない。」と評価しています。

メッセージ

「テーマとバリエーション」は物語がありません。ですが、いろいろなメッセージを感じることができます。

僕は、この作品をみると「肩の力を抜けよ」と言われているような気がします。

古典バレエのスタイルをカッチリ見せる作品ですが、たおやかに踊るダンサーたちをみると、緊張した空気の中に柔らかい空気を感じます。

ダンスレッスンのことを思い出してしまいました。

ダンスのレッスンに参加していると、真剣に取り組みすぎて顔をこわばらせて踊っている人がいます。でも一方、難しいはずなのに、ニコニコ踊っている人もいます。

ニコニコしている人ほど上達スピードが速かったりします。

そんなことを思い出してしまうバレエです。

残念ながら映像化されてないですがCDは販売しています。

2,000円ほどです。

kazu

今回は「テーマとバリエーション」でした。
ありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。