ミュージカル『ウィキッド』内容と解説:『オズの魔法使い』との関係
jazz

『ウィキッド』( 2003年初演)の内容は?
特徴は?
見どころは?

ブロードウェイ・ミュージカル『ウィキッド』。

映画『オズの魔法使い』に並行する世界を描きます。

初演から20年目を迎えました。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。社割で映画が1,000円で観られたときは毎週劇場へ行っていました。最近はネットで映画をたっぷり

kazu

今回は、『ウィキッド』( 2003年初演)のあらすじ・感想・特徴についてです。

※ 5分ほどで読み終わります。

『 Defying Gravity 』

初演キャストであるイディナ・メンゼルとクリスティン・チェノウェスが、アメリカを代表するミュージカル俳優となった作品です。

イディナ・メンゼルは『アナと雪の女王』のエルサの声を担当したことでも有名です。『ウィキッド』では、第1幕の最後『 Defying Gravity 』という曲で大迫力の歌声を披露します。

劇場をつんざく歌声は、会場で聞くとさらに迫力が増します。

『オズの魔法使い』

すべてのはじまりである『オズの魔法使い』は、アメリカにおいて絶大な人気を誇ります。

ジュディ・ガーランド主演で公開されたのは、1939年。

MGM 映画の大傑作です。

カンザスから嵐に飛ばされオズの世界に来たドロシー。元の世界に戻るためにオズに会いに行きつつ、エルファバを倒します。(桃太郎のような話です)

西の悪い魔女エルファバと、北の善い魔女グリンダは、対立し、善悪がはっきりしている作品です。

2,500円ほど。

作品情報

初演 2003年:カラン劇場( ブロードウェイ )

作詞・作曲:スティーブン・シュワルツ
脚本:ウィニー・ホルツマン
原作:グレゴリー・マグワイア『ウィキッド – 誰も知らない、もう一つのオズの物語』(1995年出版)

第58回トニー賞( 2004年 )で、9部門 10ノミネートされ、3つ受賞しています。

・ミュージカル作品賞
・ミュージカル脚本賞
・編曲賞
・オリジナル楽曲賞
・振付賞
・ミュージカル衣装デザイン賞(受賞)
・ミュージカル照明デザイン賞
・ミュージカル装置デザイン賞(受賞)
・ミュージカル主演女優賞:イディナ・メンゼル(受賞)
・ミュージカル主演女優賞:クリスティン・チェノウェス

ミュージカル版『ウィキッド』あらすじ

ドロシーがオズの世界に来るよりもっと前。

全身緑色の赤ちゃんエルファバが生まれる。生まれつき強力な魔力を持つエルファバはオズの世界でも浮いた存在。

厳しく育てられたエルファバが名門大学シズに入学する。

大学で一際目立つのが、ブロンドをなびかせ華やかに振る舞うグリンダや、イケメンでクオーターバックタイプのフィエロ。明るい学園生活に気後れしてしまう。

行き違いからガリ勉タイプのエルファバと、チアリーダータイプのグリンダが寮で同室になってしまう。

意地悪をしていたグリンダだが、正反対の 2人がわかりあい、互いに成長していく。

自己肯定感の低いエルファバだったが、自分の魔力をはじめて評価され、前を向きはじめる。

そんな中、エルファバはきな臭い噂を知ってしまう。

オズの世界では動物が言葉を話し、人間のように生活をしている。しかし、言語、自由を奪われているらしい。

統治するオズの魔法使いから魔力を認められたエルファバが、エメラルドシティに招待される。このときフィエロとの恋に破れ落ち込んでいたグリンダを一緒に誘う。

きらびやかなエメラルドシティに心を奪われる 2人。

だが、オズの魔法使いの正体を知ってしまう。悪事を働き、市民をコントロールしていた。

「右腕になれ」と迫るオズに対し、立ち向かうエルファバ。とはいえ、数に勝てない。エメラルドシティ、そして大学からも去り、西の地に逃げていく。

オズの策略により、エルファバは悪い魔女とされてしまう。

残されたグリンダは、エルファバの代わりにオズの策略の広告塔となる道を選ぶ。

『 For Good 』

生きる道を違えた 2人が最後決断します。

物語を一緒に進んできた観客が、まるで 2人の心と一体になったように感じるような曲です。

「for good」:日本語で「永遠」

長く続く習慣を終わらせ、今後やることはない、という意味の「永遠」です。

初演時のリハーサル映像です。

意訳

ウィニー・ホルツマン(脚本):作品の心、魂となる曲です。グリンダとエルファバがすべてを捧げて歌う曲になっています。
マーク・プラット(プロデューサー):歌声がストレートに観客の身体に入ってきます。歌詞が心の深い部分に突き刺さります。

スティーブン・シュワルツ(作詞・作曲):『ウィキッド』は『オズの魔法使い』の裏側の話です。しぶしぶ一緒になってしまった大学の寮から 2人の関係は始まります。
イディナ・メンゼル:友情の話です。お互いの違いを学ぶことで良い方向に成長します。

スティーブン・シュワルツ:肝となるのは『オズの魔法使い』を元にしているので、舞台に親しみのない人にも来場してもらえる可能性があることです。

スティーブン・オレムス(音楽監督・指揮):感じはいいんだけど。
スティーブン・シュワルツ:じゃ、そうしよう。
スティーブン・オレムス:少し力強すぎる気がするんだ。

スティーブン・オレムス:『 For Good』は、感情が一番揺さぶられる瞬間に歌われる曲で、グリンダとエルファバが対面する最後の瞬間でもあります。この後、エルファバは溶けてしまうため、最後の別れです。全世界の人が共感できる内容になっているのが美しい部分です。贅沢な時間で、歌声が重なりあうと感情が最高潮を迎えます。

イディナ・メンゼル:息が続かないわ。

スティーブン・シュワルツ:ここで息継ぎをするといいよ。

イディナ・メンゼル:みんなはエルファバを邪悪な魔女と思っているけど、本当はただの女の子で、理想を持っていて、希望を持っていて。誤解されています。

歌詞の一部を紹介します。

I’ve heard it said
That people come into our lives for a reason
Bringing something we must learn
And we are led
To those who help us most to grow
If we let them and we help them in return
二人で
過ごした時間は私の
大事な宝物
あなたは
大きな力で
私の心開いた
Well, I don’t know if I believe that’s true
But I know I’m who I am today
Because I knew you
大空へはばたいた
あなたの勇気を
忘れない
Like a comet pulled from orbit
As it passes a sun
Like a stream that meets a boulder
Halfway through the wood
小船をいざなう
風のように
花の種 運ぶ
鳥のように
Who can say if I’ve been changed for the better?
But because I knew you
I have been changed for good
私を変えてくれたの
忘れない
あなたのこと

オリジナル版、劇団四季版より

1,500円ほど。

サントラは未だに聞くほどです。

ミュージカル版:統一された世界観

ポスターのインパクトの強さ。

劇場を含め世界観の構築が素晴らしい作品です。

衣装が美しく、大人になった 2人、とくにエルファバは緑色なのに凛とした美しさがあります。

踊りはジャズダンスを基本に、コンテンポラリーダンスが入っていて、印象に残ります。

脚本、そして音楽は耳に残り、ミュージカルを代表するナンバーがいくつもあります。

小説版

1995年『オズの魔法使い』のスピンオフ的なファンタジー小説が発表されます。それがグレゴリー・マグワイア著の『ウィキッド:誰も知らない、もう一つのオズの物語』です。

2,500円ほどです。

2,500円ほどです。

読みましたが、正直かなりよくわからない話です。

内容は相当ダークで、人権、思想、政治、テロ問題などが語られ、性描写や生々しい表現、しかも分厚いので、気合で読んだ記憶があります。

ミュージカル版はコンセプトだけ引き継いでいて、論理的に再構成されています。

ちなみに、映画『オズの魔法使い』もよくよく考えると謎の多い作品です。

それにも関わらず、ミュージカル版『ウィキッド』は情報がかなり整理されています。

よくわからないな、という部分もありつつ、初めて見たときにかなり腑に落ちてスッキリした感覚がありました。

スピンオフ作品の中でも、お互いの作品を高め合う相乗効果を出していると思います。

シンプルなストーリーである『オズの魔法使い』が、『ウィキッド』の登場によってかなり深みが増していると思います。

善悪に分けられないストーリー

まったく合わないグリンダとエルファバが歩み寄っていく様子が丁寧に描かれます。

多様性が奪われつつある世界で、自由のために反逆者となるエルファバ。悪いことをしていると知りつつ、今の世界を維持するため体制側につくグリンダ。

そこに人種差別や権力闘争、恋愛なども入ってきます。

どのキャラクターにも自業自得な感じはあるのですが、その描き方のバランス感覚がすごいです。

「そんな自分勝手な……。でも、そうなるよな……。」と言った感覚に何度もなります。見るたびに脚本がスゴイ、と思います。

重い話なのですが、ミュージカルになっていることで軽い切り口で語られます。コメディ感が強いので、シリアスなシーンでも笑いが起こります。

日本では劇団四季が上演権を持ちますが、コメディ感は海岸版と大きく異なります。日本版ではシリアスなシーンでそこまで笑いは起きません。ですが、外国版ではどんなにシリアスなシーンでも観客が笑い出すことも多いです。

アメリカではマイノリティから大きな支持を受けている印象があり、ニューヨークにとてもマッチしている作品です。

グリンダは金髪の白人が演じることが想定されていますが、ブロードウェイでは黒人系であるブリトニー・ジョンソンも演じています。

時系列

『ウィキッド』は西の悪い魔女エルファバと、北の善い魔女グリンダの学生時代からストーリーがはじまります。

ミュージカルは途中に休憩をはさみ、2幕構成になっています。

光にあふれる第1幕。闇に沈む第2幕。

『オズの魔法使い』と『ウィキッド』の時間軸

第1幕ではハリーポッターのような魔法学校での青春ストーリーです。

第2幕ではガラッと大人の雰囲気に代わり、途中から映画『オズの魔法使い』がストーリーに入ってきます。

『ウィキッド』では、『オズの魔法使い』に登場する人物の裏のストーリーが語られます。

エルファバ、グリンダだけでなく、オズ、かかし男、弱虫ライオン、ブリキ男の秘密も入っています。

ブロードウェイのチケットシステム

『ウィキッド』は変わらず人気の作品で、ブロードウェイではチケットを取るのが未だに大変です。

ブロードウェイにはチケット販売の独自システムがあり、空席ができないよう工夫されています。

条件はありますが、当日のキャンセルや日程変更など日本よりかなり柔軟に対応してくれます。

最大のシステムが「 TKTS(チケッツ)」です。ブロードウェイの当日の余りチケットが集約されています。当日に空席がある場合、チケットを格安(半額ほど)で買うことができます。空席は穴ヌケで発生しているため、ラッキーだと1階席正面ということもあります。

『ウィキッド』はなかなか TKTS で販売されることがない人気の作品です。

僕は初めての一人旅でニューヨークのブロードウェイに行ったとき、日本からチケットが取れませんでした。ダメ元で劇場窓口に行ったらチケットをゲットできました。

この公演が本当に素晴らしく今でも鮮明に覚えています。というのも、このとき 500万人目の観客がいる記念カーテンコールがありました。

そして、人生を前に進めてくれた公演でもありました。

初めての『ウィキッド』

僕が初めて見たのはニューヨーク、ブロードウェイ、2010年 9月29日。

すでに初演から7年経っていましたがまだまだ人気で日本からはチケットが取れませんでした。ダメ元で劇場に行ってみると数日後の水曜日の昼公演(マチネ)のチケットがあるとのことで購入。しかも前から5列目あたりのセンターでめちゃくちゃ良い席でした。

一人だったのでスポッと入ることができました。このときのチケット販売の人がめちゃくちゃ良い人でした。「初めてですごく楽しみにしてる」と伝えたら、良席を選んでくれました。本当に感謝です。

ブロードウェイは月曜日が休演日で、水曜日と土曜日はマチネとソワレ(夜公演)の2回上演されることが多いです。日本でもそうですが、水曜日の昼は比較的チケットが取りやすくあります。

実際に劇場に行くと、世界観にすっかり魅了され、席の位置もよく、ストーリー、音楽に大感動しました。

最後カーテンコールでふと主演2人からスピーチがありました。

「実は今日ブロードウェイで500万人目のお客さんがいます!」

テレビカメラが後方からスーッと通路を通り、僕の斜め前にいた人にフォーカス。その人が舞台上に呼ばれ、イギリス旅行とイギリス版『ウィキッド』をプレゼントされていました。

めちゃくちゃ盛り上がっていました。

ふだんなら「いいなー」と思うところですが、その日の公演の満足度が高すぎて、それがどうでもよくなるくらい公演に感動していました。

そして、すぐに劇団四季のことを調べます。ちょうどオーディションの締切が1週間ほどだったので、応募しました。

劇団四季では志望動機として、400字詰めの作文を書く必要があります。

このときの出来事を熱く込めて書きました。

そしてこの年のオーディションに合格しました。

残念ながら僕が入団した年からしばらく『ウィキッド』の公演はなくなってしまい、出演することは叶いませんでした。

関連作品

『オズの魔法使い』は関連作品がたくさんあります。

原作はライマン・フランク・ボームで、1900年に出版されました。その後、著者本人の続編もありつつ、公認・非公認合わせて、100作以上の小説が出版されています。

それに加え、世界各国で映像化されていて、舞台化、ミュージカル化もされています。

異色の存在がマイケル・ジャクソンがかかし男を演じ、ダイアナ・ロスも出演している『ウィズ』。ミュージカルを語る上で欠かせない作品です。

アマゾン・プライムで配信しています。(終了時期は未定です)

新作

そしてアリアナ・グランデ主演で映画化が決まっています。2024年前編、2025年後編が公開予定です。

『オズの魔法使い』ではなく、『ウィキッド』の映画版です。10年以上映画化されると言われ続けていたのですが、ついに公開まであと少しです。

日本版

日本で初めて『ウィキッド』が上演されたのは2006年、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)です。ストーリーを短縮し、35分の特別版が 2011年まで上演されていました。

USJ にはかつて『オズの魔法使い』をテーマにしたエリアがありました。

グリンダを日本人が演じ、エルファバを外国人が演じます。

日本語と英語が混じり合った不思議な舞台であるものの、歌の力、世界観、衣装、装置でパワフルなショーでした。

フルバージョンは、2007年からに劇団四季が上演しています。2023年、久しぶりに再演しています。

素晴らしい作品なのでぜひチェックしてみてください!

DVD

動画配信サイトを使えばお得に見ることができます。

無料期間などでぜひ試してみてください。

kazu

今回はミュージカル『ウィキッド』についてでした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。

そのほかのエンタメ作品に関してはこちらで紹介しているので、ぜひご覧ください。