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「スティーヴン・マックレー」ってどんなダンサー?
どんな経歴?
ケガを乗り越えた?

バレエダンサーにケガはつきものです。

特に男性ダンサーはカラダの負担が大きくケガが長引く場合があります。

英国ロイヤル・バレエ団のスティーヴン・マックレーは大きなケガを乗り越え、現役に復帰しています。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります

kazu

今回は日本でも人気の高いスティーヴン・マックレーに関してです。

※3分ほどで読み終わります。

スティーヴン・マックレー

英国ロイヤル・バレエ団で一番上の階級にいるプリンシパルです。

現在ゲストプリンシパルを除くと、男性ダンサーの中で3番目に長いキャリアをほこります。

経歴

1985年12月19日:34歳(2020年2月現在)、オーストラリア生まれ。7歳の頃にお姉さんの影響でタップダンスとバレエをはじめます。

2003年(17歳):ローザンヌコンクールでスカラシップ賞を獲得し英国ロイヤル・バレエ団付属のロイヤル・バレエ・スクールの留学権を獲得します。

2004年:ロイヤル・バレエ・スクールを卒業と同時に英国ロイヤル・バレエ団に入団
2005年:ファースト・アーティスト昇進
2006年:ソリスト昇進
2008年:ファースト・ソリスト昇進
2009年:プリンシパルに昇進

2007年に初来日

2007年、東京バレエ団「真夏の夜の夢」の公演がありました。このとき主演ふたりが英国ロイヤル・バレエ団からのゲストで、当初の予定は日本でも人気の高いアリーナ・コジョカルとヨハン・コボーでした。

しかし、ヨハン・コボーがケガで来日できず、代わりにスティーヴン・マックレーが登場します。

日本ではまったく知名度がなかったスティーヴン・マックレー。このとき20歳。階級はソリストでした。

僕はアリーナ・コジョカル目当てでしたが、スティーヴン・マックレーの踊りがとにかくキレイだったことを覚えています。

力強いけど美しい。

14年後の2021年の映像です。「真夏の夜の夢」より高田茜さんのタイターニアと、スティーヴン・マックレーによるオベロンです。

英国ロイヤル・バレエ団にはアンソニー・ダウエルという元プリンシパルで元芸術監督の伝説的な人物がいます。そのアンソニー・ダウエルの強力な推薦文がキャスト表に載っていました。

この公演を機にスティーヴン・マックレーが頻繁に来日するようになります。スティーヴン・マックレーは日本によく来てくれるので、見るチャンスはけっこうあると思います。

スティーヴン・マックレーの漫画

スティーヴン・マックレーは日本との関りも深く、スティーヴン・マックレーがモデルとなったバレエ漫画があります。

もともと男の子向けのバレエ雑誌に載っていた漫画です。雑誌も漫画もどちらも廃刊になったみたいです。残念……。

直筆で雑誌にメッセージを投稿していて、人柄の良さをすごく感じていました。

男の子向けのテクニックの解説があり、内容も素晴らしかったと記憶しています。

手に入らないかもしれないです。

スティーヴン・マックレーはあれよあれよと23歳でプリンシパルになり、今の英国ロイヤルバレエ団に欠かせないダンサーです。

クリストファー・ウィールドン振付「冬物語」より。スピーディーな振付を軽々こなします。

4,000円ほど。

オールマイティーダンサー

スティーヴン・マックレーはクラシックバレエだけでなく、タップもかなり達者です。

2011年に制作されたバレエ「不思議の国のアリス」ではタップダンスを披露しています。当時かなり話題になった作品です。

スティーヴン・マックレーはマッドハッターの初演キャストで大絶賛されていました。

映画版「キャッツ」に出演

ミストフェリーズかと思いきや、まさかのスキンブルシャンクスです。

スキンブルシャンクスは舞台版ではシンガー枠でしたが、映画ではバリバリに踊っています。バレエ、タップに加え、歌声も披露しています。

2019年のはじめ映画出演により、高田茜さんとの「ドン・キホーテ」がキャンセルになってしまったのが、本当に残念でした。

ブルーレイで1,000円ほど。

賛否両論の「キャッツ」ですが、スティーヴン・マックレーのシーンは好きです。

ケガとの戦い

スティーヴン・マックレーはケガに悩まされることが多く、大きなケガを何度かしています。

2017年のケガで、2018年10月に1年ぶりに復帰しています。

しかし、2019年10月にまた大きなケガを負ってしまいます。

そこから2年ものリハビリを経て、2021年秋ついに復帰を果たしました。

2019年10月16日「マノン」でアキレス腱断裂

ロンドンで行われた英国ロイヤル・バレエ団「マノン」の公演で事件が起きました。このとき相手役は高田茜さんでした。

第2幕の終盤、ソロのダンスで事件が起きました。ジャンプを2回、ピルエット、その後スティーヴン・マックレーの動きが止まります。2秒ほど静止、そのまま舞台袖に入り、幕が閉じてしまいます。

舞台近くにいた人には、大きな「ぶちっ!!!」という音が聞こえたそうです…。

芸術監督のケヴィン・オヘアが舞台に登場しアナウンスします。「スティーヴン・マックレーは舞台を続けることが難しく、リース・クラークが代役として第2幕から踊ります。舞台を再開するために10分時間をください。」

舞台が再開するまで、舞台袖はかなりザワザワしていたようです。しかもスティーヴン・マックレーの痛みに泣き叫ぶ声が客席にまで聞こえてきたといいます。

バレエ公演では、途中での出演者交代は、本当にマレですが起こります。僕も何回か経験があります。

ですが、ここまで緊迫した状況は聞いたことがありません。その後ケガの内容が発表されました。「アキレス腱断裂」というかなり重いケガになってしまいました。

当時について

スティーヴン・マックレーは「PEOPLE紙の2021年10月17日のインタビュー」で当時の状況を振り返っています。

「とにかく最悪な状況で、アキレス腱の切れる音が聞こえました。身体を支えることができず、足を引きずって舞台袖に逃げ、倒れ込みました

まるでナイフで切りつけられたような感覚で、足首の周りが大きく腫れ上がっていました。このとき、反射的に悪態をついていたので、座席の前方の人にも聞こえていたと思います」

スティーヴン・マックレーは、2018年5月にアキレス腱の手術、2019年の4月にヒザの手術を受けていました。

そして2019年10月の復帰公演を迎えます。このとき痛みを抱えていたそうです。

「実はかなりの痛みがありました。公演の1週間前、本番でベストパフォーマンスができるよう、回復できるようリハーサルを中止しました

とはいえ長い間舞台から離れていたので復帰できることが楽しみで仕方ありませんでした」

ケガ

そして、第2幕で事故が起きました。

「僕のキャリアは終わったと思いました」

しかし芸術監督のケヴィン・オヘアは、前向きに復帰を助けます。

「芸術監督は僕を励ましてくれました。君は絶対にまた踊れる。我々が踊れるようサポートする

この言葉で僕の感情が「絶望」から「前向き」なものに変わりました。そうだ、また踊れるようになるさ。こう自分に言い聞かせ、今日から始めようと決心しました」

そしてアキレス腱の再建手術をし、再度歩けるようになりました。

さらに何ヶ月ものリハビリを経て、2021年10月「ロミオとジュリエット」で舞台復帰を果たしました。

きっと解決策はある

スティーヴン・マックレーを追ったドキュメンタリー「A RESILIENT MAN(立ち直った男)」の予告編でリハビリの様子がわかります。

リハビリのコーチとして元プリンシパルのリャーン・ベンジャミンが指導しています。

意訳

乗り越えようとしていることは、とても大きいです。バレエという仕事、今回のケガ、すべてを注ぎ込む必要があります。プリエ(屈伸)とルルベ(つま先立ち)すら痛みを伴います

家族がいること、子供がいることに感謝しています

リャーン・ベンジャミン「1ヶ月乗り切ったわね。すごく満足しているし、復帰の可能性に興奮してるわ」

自分のできることすべてをやったと思っていても、それでもまだ足りない時があります。いつも不安定な状態にいる感覚です。1年を通し、週6日間、ケガなく最高の状態でいるダンサーなんていません

仕事を変えなければいけないかもしれません。

このドキュメンタリーは現在クラウドファンディングをやっているようで、まだ公開されていません。

復帰後の言葉

「多くの人が僕の復帰は難しいと思っていました。僕自身、歩くことすら難しいのではないかと思うこともありましたが、そうした意見は放っておきました

僕一人ではなく、チームによって復帰することができました。怪我により、テクニックの完璧さだけを求めるのではなく、バレエという物語をどう伝えるか、僕の復帰で希望を感じてもらいたいです

人生、ときに嫌なことは起こります。でも必ず道を見つけることができると思います」

スティーヴン・マックレーは最後の言葉で、「I(わたし)」ではなく「We(私たち)」と使っているのが印象的でした。

奥さんと3人の子どもたち

スティーヴン・マックレーの奥様は同じくバレエダンサーのエリザベス・ハロッドです。

2021年までエリザベス・ハロッドはソリストとして所属していました。


13:25~:スティーヴン・マックレーの隣に奥様がいます。おなかが膨らんでいます。けっこうでかくてびっくりです。

現在はこの子供も誕生し、2人には子供が3人います。ロイヤル・バレエ団は子育てのサポートがしっかりしていて、託児所もあるそうです。

オススメDVD

重厚な作品で、踊り、演技ともにオススメです。

kazu

今回は、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルである「スティーヴン・マックレー」をご紹介しました。日本で踊ってくれることが多いので、ぜひ劇場に足を運んでみてください。

オススメのダンサーはこちらで紹介しているので、ぜひご覧ください。