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「クリスタル・パイト」はどんな振付師?
どんな経歴?
どんな特徴がある?

バレエの世界に新しい風を起こしている振付家がいます。それがカナダ出身の女性振付家クリスタル・パイトです。クリスタル・パイトの作品を見ると毎回衝撃を受けます。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり。ぜひ男性にもバレエを観に行ってもらいたいと思っています。

kazu

今回はクリスタル・パイトを紹介します。

※5分ほどで読み終わる記事です。

女性振付家クリスタル・パイトのプロフィール。ダンサーからの信頼が厚い

「ネザーランド・ダンス・シアター」ホームページより

スイミーのような群舞

クリスタル・パイトの振付作品をみると、「スイミー:ちいさなかしこいさかなのはなし」という童話を思い出します。

少し内容を紹介すると、スイミーはとても小さな魚です。大きなマグロに困るスイミーたち。マグロに対抗するため、小さな魚が集まりマグロよりも大きな魚のフリをします。小魚たちが一心同体に動くことで、まるで一匹の大きな魚のように動くスイミーたち。

女性振付家クリスタル・パイトの作品では、ダンサーたちが一匹の獣のように見える瞬間があります。クリスタル・パイト自身も「beast(獣)」という言葉をよく使います。

「Polaris(恒星)」

群舞の振付に大きな特徴を持つのが、クリスタル・パイトの作品です。

クリスタル・パイト(Crystal Pite)

カナダ出身の女性振付家クリスタル・パイトの経歴です。

経歴

1970年:12月15日カナダ生まれ
1988年~1996年:バレエ・ブリティッシュ・コロンビアに入団。8年間ダンサーとして活躍
1990年:初めての振付作品を発表「Between the Bliss and Me(喜びと私の間にあるもの)」
1996年~2000年:現代の最も先鋭的なバレエ振付家のウィリアム・フォーサイス率いるフランクフルト・バレエ団に移籍するためにドイツへ。2000年まで在籍し世界中でパフォーマンスと振付活動を行う
2001年~2004年:カナダに帰国。「BJM(バレエ・ジャズ・モントリオール)」常任振付家として3年活動
2002年~:自分のカンパニー「Kidd Pivot(キッド・ピヴォット)」を設立
2008年~:ネザーランド・ダンス・シアターのアソシエイト・コリオグラファーに
2010年~2012年:「Kidd Pivot」がフランクフルトにあるムーゾントゥルム芸術家センター(Künstlerhaus Mousonturm)と常設劇団として契約。「Kidd Pivot Frankfort RM(キッド・ピヴォット・フランクフルト・RM)」としても活動
2013年~:サドラーズウェルズ劇場のアソシエイト・アーティスト就任
2015年~:カナダのナショナル・アーツ・センターのアソシエイト・アーティスト就任
2020年:カナダ勲章受賞

2016年頃からパリ・オペラ座バレエ団や、英国ロイヤル・バレエ団に作品を提供し、世界中にその名が知られるようになりました。

ダンスで社会問題を表現するのが得意な振付家です。クリスタル・パイトが芸術監督であるKidd Pivotは、2015年から二酸化炭素の排出量をゼロにする公演という取り組みを行っています。

だからといってそこまで難しい作品ではないので安心してください。エンターテインメント性もしっかりあります。

20回以上の振付賞

40以上の作品を作り、20回以上も振付賞を獲得しています。

2015年、ローレンス・オリヴィエ賞の「最優秀ダンス賞」を受賞します。この賞はイギリスでもっとも権威のある、演劇・オペラに与えられる賞です。イギリス版トニー賞とも言われています。

ローレンス・オリヴィエ

イギリスを代表する俳優で、1970年にSIR(男爵)の称号を与えられる。アカデミー賞に10回(主演賞9回、助演賞1回)ノミネートされ、1947年と1979年にはアカデミー特別賞を受賞。

存命中の1976年にローレンス・オリヴィエ賞が設立された。

また、2017年パリ・オペラ座に振り付けた「シーズンズ・カノン」がブノワ賞(バレエ界のアカデミー賞)を受賞しています。

信頼される振付家

クリスタル・パイトの作品から感じるのはダンサーがクリスタル・パイトのつくる作品を全力で表現しようとしている、という点です。

ダンサーが同じ気持ちで踊るために必要になってくるのは、振付家への信頼です。

ダンサーは基本的に自己顕示欲を持っています。しかし、「作品を表現したい」という協力の気持ちが強くなると作品に一体感がでてきます。一体感のある作品が観客にあたえるインパクトは相当強いです。

クリスタル・パイトの作品からはこの一体感を感じることが出来ます。クリスタル・パイトのリハーサル映像はyoutubeなどでアップされていますが、どの映像を見ても振付師とダンサーの信頼感が見てとれます。

リハーサルの様子

ロンドン・コンテンポラリー・ダンス・スクール(London Contemporary Dance School)の生徒のためにリハーサルをするクリスタル・パイトの映像です。最初に紹介した映像「Polaris」です。「Kidd Pivot」のダンサーと生徒のコラボレート作品です。大人数に振り付ける様子がわかります。

まっすぐな姿勢

クリスタル・パイトはいつも自然体です。ドキュメンタリーでその様子がわかります。

そして、振付のアプローチがかなり独特です。もともと同僚だったダンサーの湯浅永麻えまさんがクリスタル・パイトについて語っています。

私が一番影響を受けたのは、クリスタル・パイト。

カナダ人の女性振付家で、彼女のつくり方はイリ・キリアン(バレエの振付家)とはまったく違う方法です。最初にコンセプトやテーマは与えられますが、いざリハーサルになると、そのテーマとはまったく関係ないような「お題」がダンサーに渡されます。それはまさに具体的な指示で、たとえば「上から下に降りていく動きを4つしてください」とか、「カウントして6でジャンプする」とか。何の感情も挟まないような純粋な動きの指示なんです。

おそらく彼女は個々の実際的な動きに対して、どういう感情がフィットするか、彼女のコンセプトやテーマを描くどの場面で使えるだろうか、それをどのダンサーの組み合わせかあるいはユニゾンにするか、ということを探しているんだと思います。

創造都市横浜ホームページより

ダンサーの個性と、社会的なテーマを組み合わせた挑戦的なバレエをたくさん発表しています。

映像作品

残念ながら映像化はあまりされていません。そんな中から英国ロイヤル・バレエのために振り付けた「フライト・パターン」をご紹介します。

3,200円ほど。「フライト・パターン」は難民問題を扱っています。他に2作品短い作品が収録されています。

kazu

今回はクリスタル・パイトの紹介でした。
ありがとうございました。