jazz

「フライト・パターン」はどんなストーリー?
クリスタル・パイトとは?
見どころは?

2020年、新型コロナウイルスによって大ダメージを受けた芸術。

「芸術に意味があるのか」と問われています。

群舞をケモノのように操る振付家クリスタル・パイト。彼女の作品への取り組み方が答えのような気がします。

我の強いダンサーが集まったとしても、同じ思いを持って踊ることで、凄まじいパワーが生まれます。この「フライト・パターン」をみると、芸術には人を結びつける力があるんだ、と思い知らされます。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります

kazu

今回は「フライト・パターン」の作品解説です。

※3分ほどで読み終わります。

「フライト・パターン」のあらすじ

32分の作品です。

「フライト・パターン」は、戦乱から逃れようと困難な旅を続ける難民たちの姿を描いています。

題名には2つの意味が込められています。

1つ目は「逃げるのが不可能である困難な状況から脱出すること」。

2つ目は「希望や可能性、自由を求めること」。

この2つの思いを表現しているのが「フライト・パターン」です。

初演:2017年

英国ロイヤル・バレエ団(イギリス)

振付:クリスタル・パイト
音楽:ヘンリク・ミコワイ・グレツキ
指揮:ジョナサン・ロー

キャスト

クリステン・マクナリー
マルセリーノ・サンベ

カルヴィン・リチャードソン
ジョセフ・シセンズ

イザベラ・ガスパリーニ
ベンジャミン・エラ
アシュリー・ディーン

(ソプラノ)フランチェスカ・チエジナ

クリスタル・パイト

カナダ・バンクーバー出身の女性振付家であるクリスタル・パイトについてはこちらをどうぞ。

クリスタル・パイトの作品では、ダンサーたちの一体感がケモノのようになります。ダンサーがいっせいに踊ると波が襲ってくるような感覚におちいるほどパワーがあります。

これは「フライト・パターン」に限らずどの作品でも共通していて、群舞のスゴさを再認識する振付家です。

ローレンス・オリヴィエ賞

「フライトパターン」はローレンス・オリヴィエ賞(イギリス版トニー賞とも言われる)で2018年「最優秀新作ダンス作品賞(Best New Dance Production)」を受賞しました。

グレツキ作曲:交響曲第3番「悲歌の交響曲」第1楽章

ポーランドの作曲家、ヘンリク・ミコワイ・グレツキによる作品です。

第3楽章まであり、「フライト・パターン」では第1楽章が使用されています。「悲歌の交響曲」は楽章ごとに副題がついています。

「悲歌の交響曲」

第1楽章「私の愛しい、選ばれた息子よ、自分の傷を母と分かち合いたまえ…」
第2楽章「お母さま、どうか泣かないでください…」
第3楽章「わたしの愛しい息子はどこへ行ってしまったの?…」

第2楽章はナチス時代、ユダヤ人の収容所の壁に書かれた娘から母への言葉がもとになっています。「フライト・パターン」で第2楽章は使用されていないものの、作品の内容とかなりマッチしていると思います。

ひたすら繰り返される音楽

コントラバスの深い音から始まり、同じフレーズがひたすら繰り返されます(カノン形式。「ボレロ」もカノン形式です)。

ですが楽器がどんどん加わることにより印象が変わってきます。低いコントラバスの音から、チェロ、ビオラが加わり、ヴァイオリンの高音が重なると、美しい音楽になっていきます。

そして、ソプラノ歌手のソロが入ってきます。

kazu

「映画でバレエ」での上演時、指揮者のジョナサン・ローの幕間の解説がとてもわかりやすかったです。

群舞の持つパワーの素晴らしさ

途中、ソロがあるので、キャスト表ではメインの何名かがピックアップされていますが、この作品は36人のダンサーが同列の作品です。

作品のテーマは重いのですが、それ以上にダンサー36人で創り出す圧倒的な世界観に惹き込まれてしまいました。

絵本で読んだ小魚のスイミーのように、36人が息をぴったりに合わせて踊ると、獣のような「うねり」を生み出します。ダンサーたちの作品への意識の高さを感じ、観ている間ずっと鳥肌が立っていました。

制作インタビューも出ていて、こちらで紹介しています。

DVD

DVDも発売されています。

kazu

クリスタル・パイトのメッセージが痛いほど伝わる作品です。
どうもありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。