マリウス・プティパ版バレエ「ドン・キホーテ」あらすじと作品解説
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「ドン・キホーテ」はどんなストーリー?
見どころは?
2つのバージョンがある?

バレエを初めて観る人にオススメなのが「ドン・キホーテ」です

底抜けに明るく、テクニックに優れたバレエダンサーがたくさん登場する、とても華やかな舞台です。

ストーリーを知らなくても楽しむことができますが、知っておくと10倍楽しめると思います。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり

kazu

今回は「ドン・キホーテ」の作品解説です。

※3分ほどで読み終わります。

スペインを舞台にしたハッピーな物語

古典バレエの「ドン・キホーテ」は、踊りを楽しめるように配慮されています。

古典バレエにはストーリーの中に物語とあまり関係のないダンスが多く登場します。古典バレエといえば「白鳥の湖」「ジゼル」といった悲しいストーリーが多い中、「ドン・キホーテ」は明るいです。

スペイン人のお祭り気質と日本人のお祭り気質の相性はすごくイイと感じていて、日本人は「ドン・キホーテ」をかなり楽しめるんじゃないか、と思います。

ちなみに、笑いどころもたくさんあります。

なぜ「ドン・キホーテ」ができた?

スペインは、キラキラした太陽と青い海、闘牛士や明るい人々というイメージの国でした。

寒い国ロシアの人々はスペインに憧れを持っていました。

初演:1869年12月14日

ロシア:ボリショイ劇場バレエ団

振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
原作:ミゲル・セルバンテス・サベトラ「才知溢るる郷土ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」

「ドン・キホーテ」の初演は大成功でした。

ちなみにモスクワは、首都のサンクト・ペテルブルクに比べると庶民的な街でした。「ドン・キホーテ」には明るい街の庶民の人々がたくさん登場するので、かなり共感を得られたようです。

1971年、プティパ自身が改訂を行いサンクト・ペテルブルクのマリインスキー・バレエ団で新たな「ドン・キホーテ」を上演します。この公演が今も上演され続けている「ドン・キホーテ」のもとになっています。

サンクト・ペテルブルクという都会に合わせ、洗練されたシーンを追加します。具体的にいうと、第2幕のドン・キホーテの夢の場が追加されました。

原作

セルバンテスの長編小説「才知さいちあふるる郷土きょうどドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」の中の小さなエピソードが原作です。

バレエ版は小説の後編に登場する「カマーチョの結婚」がもとになっています。

登場人物

1600年代のスペインが舞台です。

主な登場人物

キトリ(ロレンツォの娘)/ドゥルシネア姫
バジル(床屋の青年)

ドン・キホーテ
サンチョ・パンサ(ドン・キホーテの従者)
ロレンツォ(宿屋の主人)

ガマーシュ(裕福な貴族)
エスパーダ(闘牛士)
メルセデス(街の踊り子)

キトリの友人たち
ロマ(ちょっと危険な流浪の民)

ドリアードの女王
アムール(キューピッド)

ドン・キホーテのあらすじ

中世の騎士物語に夢中のドン・キホーテ。妄想癖のあるドン・キホーテは、理想の姫であるドルシネアを助ける旅に出発する。

バルセロナ

場所が変わり、太陽あふれるスペインのバルセロナ。広場では市民たちが楽しく過ごしている。いつも輪の中心にいるのは宿屋の娘であるキトリと、床屋で働くバジル。キトリとバジルは恋人同士。しかし、キトリのお父さんであるロレンツォは娘を金持ちのガマーシュのところに嫁がせようとする。そのため、キトリとバジルの交際には大反対。

そこにドン・キホーテとお付きのサンチョ・パンサが到着する。

ドン・キホーテはキトリをドルシネア姫と勘違い。風変わりなドン・キホーテ、お騒がせのサンチョ・パンサ、お高くとまるガマーシュ、プンスカしているロレンツォ。街が大混乱に……。この隙を突いてキトリとバジルは街から駆け落ちしてしまう。

ロマの野営地

森の中に迷い込むキトリとバジル。進んでいくとロマの野営地まで来てしまう。ロマとは流浪の民で、街の人からは恐れられている。

そんなロマの民もキトリとバジルに同情する。

2人を追ってドン・キホーテ、サンチョ・パンサ、ガマーシュ、ロレンツォがやってくる。

すると空が荒れてくる。ロマの民の助けも借り逃げていくキトリとバジル。あたりが暗くなる中、風車が不気味に羽根を回している。この風車をドン・キホーテが化け物と見間違え、攻撃をしかける。

しかし、風車の羽根に引っかかり投げ飛ばされてしまう。

気絶したドン・キホーテが夢を見る。

夢の中では理想の姫であるドルシネア姫が森の女王やキューピッドと楽しく過ごしている。夢の中で起きるよう促されドン・キホーテは意識を取り戻す。

酒場

一方のキトリとバジルは酒場にたどり着く。またもやドン・キホーテ、サンチョ・パンサ、ガマーシュ、ロレンツォが追ってくる。逃げられないと悟ったバジルはある作戦を思いつく。

商売道具のカミソリを取り出し「キトリと結婚できないなら自殺してやる」とロレンツォを脅す。

オロオロするロレンツォの前でバジルはお腹をカミソリで刺してしまう。

倒れるバジル…。

しかし、実は死んだふり。騙されたロレンツォは、キトリとバジルの結婚を認める。するとバジルが起き上がり2人の結婚が無事決まる。

結婚式

街に戻った一同。キトリとバジルの結婚式が無事行われる。ドン・キホーテは2人の幸せを見届け、また次の旅に出るのだった。

第3幕の「グラン・パ・ド・ドゥ」

この「パ・ド・ドゥ」はガラ公演(それぞれの作品のハイライトのみの公演)でも人気の高い作品です。多くの場合、公演のトリに選ばれるほど盛り上がる場面です。

キューバ国立バレエ団のヴィエングセイ・ヴァルデス、ロメル・フロメタです。ヒスパニック系の「ドン・キホーテ」はすごく盛り上がります。

2つのストーリー?

「ドン・キホーテ」の主役は、ドン・キホーテではありません。バレエ版の主役は、キトリとバジルです。

「ドン・キホーテ」には、2つのストーリー(話の順番が違う)が存在します。

違いは「キトリとバジル」に焦点を当てるか、「ドン・キホーテ」を焦点を当てるか、という点です。

キトリとバジルに焦点

プロローグ:ドン・キホーテの登場
第1幕:キトリとバジルと華やかな街
第2幕:ロマの野営地→ドン・キホーテの夢→バジルの狂言自殺
第3幕:キトリとバジルの結婚式

もうひとつは、ドン・キホーテに焦点をあてたストーリーです。

主役はキトリとバジルですが、第2幕の順序が変わることでドン・キホーテの存在感が増すストーリー展開になっています。

ドン・キホーテに焦点

プロローグ:ドン・キホーテの登場
第1幕:キトリとバジルと華やかな街
第2幕:バジルの狂言自殺→ロマの野営地→ドン・キホーテの夢
第3幕:キトリとバジルの結婚式

見どころポイント

見どころをこちらで細かく紹介しています。

映像がたくさん残っています

「ドン・キホーテ」はとにかくたくさん映像が残っています。

少し古い作品ですが、未だに衝撃を受けるミハイル・バリシニコフのバジルとシンシア・ハーヴェイのキトリです。

とにかくミハイル・バリシニコフが輝いています。

kazu

以上、バレエ「ドン・キホーテ」の作品解説でした。
ありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめています。ぜひご覧ください。