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「眠れる森の美女」第3幕のストーリーは?
ディベルティスマンとは?
見どころは?

物語のクライマックスである第3幕。

主役カップルには完璧なお姫さま像、王子像が求められます。

だからこそ最後のグラン・パ・ド・ドゥは見ごたえがあります。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります

kazu

今回は、バレエ「眠れる森の美女」の第3幕のストーリーと見どころポイントに関してです。

※3分ほどで読み終わります。

オーロラ姫の演じ分けに注目

第1幕で初々しかったオーロラ姫。第2幕では幻影の中の美しい理想の女性として登場しました。

第3幕では大人に成長した気品あふれる完璧な姫へと成長していきます。

第2幕に関してはこちらで紹介していますので、ぜひご覧ください。

ここからは第3幕にポイントを絞って解説します。

第3幕:ストーリー

眠りから目覚めたオーロラ姫と、王国を救ったデジレ王子。

国中から祝福され宮殿ではオーロラ姫とデジレ王子の結婚式が開かれる。

宝石の精、おとぎ話の主人公たち(青い鳥、長靴をはいた猫、赤ずきんちゃん、シンデレラなど)が登場し、ふたりの結婚を祝う。

盛大なお祝いの中、物語は終わりを迎える。

ディベルティスマン

第3幕はほぼディベルティスマンです。

ディベルティスマン

ディベルティスマンはフランス語で「余興」という意味があり、バレエでは「ストーリーに関係のない踊りを集めたシーン」を指します。

このシーンは、バレエ団によって内容がかなり異なります。

振付師がオリジナル性を出していて、登場人物を少なくスッキリさせているバージョンもあれば、登場人物が多いバージョンもあります。

30分ほどの間、おとぎ話のいろいろなキャラクターが登場します。

登場人物

◎宝石(金の精、銀の精、サファイアの精、ダイアモンドの精)
◎長靴をはいた猫、白い猫
◎青い鳥、フロリナ王女
◎赤ずきんちゃん、狼
・シンデレラ、フォルチュネ王子
・親指小僧とその兄弟と人食い鬼

◎をつけた登場人物はよく登場します。「シンデレラ、フォルチュネ王子」「親指小僧とその兄弟と人食い鬼」はレアキャラです。

「親指小僧とその兄弟と人食い鬼」はこちら。

なかなか怖いシーンです。マリインスキー・バレエ団より。

付属のバレエ学校の生徒が活躍するシーンとなっていて、舞台経験ができる素敵な機会にもなっています。

宝石

宝石たちの踊りはどのバージョンにも入っています。

チャイコフスキーは宝石の踊り(パ・ド・カトル)のために6曲書いています。

パ・ド・カトル (仏:直訳すると「4人の踊り」)

1:入場 (Entrée)
2:金の精のヴァリアシオン (Variation de la fée-Or)
3:銀の精のヴァリアシオン (Variation de la fée-Argent)
4:サファイアの精のヴァリアシオン (Variation de la fée-Saphir)
5:ダイヤモンドの精のヴァリアシオン (Variation de la fée-Diamant)
6:コーダ (Coda:直訳すると「尾」フィナーレを指す)

宝石の種類や設定はバレエ団によって変わりますが、基本形は女性4人のパ・ド・カトルです。

ただ、人数構成はバレエ団によって大きく変わります。女性だけのバージョン、男女混合バージョン。3人バージョン、4人バージョンと豊かです。

「銀の精のヴァリアシオン」

僕は個人的に「銀の精のヴァリアシオン」の音楽が大好きなので、この曲で各バレエ団を比較していきます。

セルゲーエフ版

マリインスキー・バレエ団より。「金・銀・サファイアの精」による踊りです。ダイアモンドの精はソロで登場しています。

モニカ・メイスン版

英国ロイヤル・バレエ団ではフロリムント王子と姉妹たちと設定が変わっています。

英国ロイヤル・バレエ団より。「銀の精のヴァリアシオン」を踊るのはヤスミン・ナグディです。また同じシーンにはマルセリーノ・サンベとマヤラ・マグリが登場しています。

3人とも現在は英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルです。

ディズニー版「誕生日の準備」

ディズニー版「眠れる森の美女」でも重要なシーンで使われています。

曲がアレンジされ、だんだんアップテンポになっていきます。

先にディズニー版を知っていたので、初めてバレエ版を見たときに感動してしまいました。

と同時にバレエ版では曲が意外に短くてびっくりました。

青い鳥のパ・ド・ドゥ

ディベルティスマンの中でも注目は「青い鳥のパ・ド・ドゥ」です。グラン・パ・ド・ドゥ形式になっていて、超絶技巧ちょうぜつぎこうを見ることができるシーンです。

男性ダンサーが青い鳥にふんし、女性ダンサーが塔に閉じ込められているフロリナ王女を演じます。

グラン・パ・ド・ドゥ

主役ダンサーによる、男女の踊りのことで、流れが決まっています。

アダージョ(2人の踊り)
ヴァリエーション(男性のソロ)
ヴァリエーション(女性のソロ)
コーダ(高いテクニックが必要な2人の踊り。一番盛り上がります。)

クライマックスで踊られるのが、グラン・パ・ド・ドゥです。

この「青い鳥のパ・ド・ドゥ」はかなり期待されている若手ダンサーが踊ることが多いので、要注目です。たまにトップダンサーが踊ることもあります。そうなると、オーロラ姫とデジレ王子、青い鳥とフロリナ王女の2組のトップダンサーをみれることになるので、かなりのお得感があります。

この「青い鳥のパ・ド・ドゥ」はダンサーが振付をしました。ダンサー自身の技術がふんだんに入っていて完成度が高かったため振付師のマリウス・プティパもそのまま採用せざるを得なかったようです。そのため、ダンサーのテクニックが堪能できるパ・ド・ドゥになっています。

英国ロイヤル・バレエ団より。ヤスミン・ナグディのフロリナ王女と、マシュー・ボールによる青い鳥です。

男性ダンサーは空中に留まる状態(バロン)をどれだけキープできるかが見どころです。さらにステップがかなり細かいため繊細なテクニックが求められます。

女性ダンサーは王女という設定ではありますが、どちらかというと鳥のような振付がたくさん入っています。ゆったりとした鳥の動きをするので、フロリナ王女を踊ることができれば「白鳥の湖」の主役であるオデットやオディールもイケる、と判断されるダンスになっています

グラン・パ・ド・ドゥ

主役であるオーロラ姫とデジレ王子の「グラン・パ・ド・ドゥ」が最大の見せ場となります。

振付もいろいろなバージョンがあるので、お気に入りの振付を見つけてください。この「グラン・パ・ド・ドゥ」はガラ公演(いろいろな作品の「グラン・パ・ド・ドゥ」だけを集めた公演)でよく見かけます。

「グラン・パ・ド・ドゥ」の前にたくさん踊りが登場するため、観客の目はかなり肥えた状態になっています。その状態でも圧倒的な存在感を示す必要があります。

女性ダンサーが男性ダンサーに完全に身体を預ける振付もたくさん登場するので、かなりの信頼感が必要な危険なパ・ド・ドゥです。それをサラッと、余裕で踊ることが求められます。

アリーナ・コジョカルとフェデリコ・ボネッリです。

ディアナ・ヴィシニョーワとロベルト・ボッレです。僕は11:48~の振付が好きです。ちなみに、このステップがないバージョンもあります。

なぜ最高難度なのか…

ちなみに、ちなみに、吉田都さんはオーロラ姫を30代前半で封印してしまいました。

それほど難しい役ということだと思います。

このグラン・パ・ド・ドゥのあと、大団円だいだんえんを迎え幕が閉じます。

DVD

4,000円ほど。アリーナ・コジョカルとフェデリコ・ボネッリ主演、英国ロイヤル・バレエ団の2006年映像です。

アリーナ・コジョカルをはじめスターがたくさん登場する安定感の高い映像です。

kazu

以上、バレエ「眠れる森の美女」第3幕の見どころポイントでした。
ありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。