
『ダンシング・ハバナ』のあらすじは?
見どころは?
印象に残ったシーンは?
1987年の大ヒット映画『ダーティ・ダンシング』。2004年に『ダーティ・ダンシング2』が公開されました。
踊りより、俳優よし、音楽よし、脚本よし。90分と短いのにも関わらずすべてが凝縮されたダンス映画です。
今回は、『ダンシング・ハバナ』の内容解説と感想、映画サイトの評価です。
元劇団四季、テーマパークダンサー。映画に夢中だった頃は、毎週映画館に行っていました。最近はネットで映画をたっぷり。
※ 3分ほどで読み終わります。
筆者一押しダンス映画
『ダンシング・ハバナ(Dirty Dancing: Havana Nights/2004)』は、物語と映像がラテンのリズムに満ちています。見るだけでダンスの情熱を感じることができる映画です。
映画の舞台は1958年のキューバ、革命前夜のハバナです。現在のキューバはレトロな街並みが観光名物となっていますが、この映画はまさにその時代がテーマです。(撮影地はプエルトリコです)
登場人物の文化的違いや階級の衝突を経て、ケイティ(ロモーラ・ガライ)とハビエル(ディエゴ・ルナ)がダンスを通じて自己表現と成長を遂げていきます。
あらすじ
1958年、社会主義になる直前のキューバ、首都ハバナ。アメリカの資金で経済的に発展しつつあるキューバ。アメリカと関係の強い一部の人たちが富を独占し、貧富の差が拡大している。
アメリカ人のケイティが父親の仕事により、家族4人(父、母、妹)でハバナに引っ越してきた。アメリカ人として特別扱いされ、豪華なホテルに住み、何不自由ない高校生活を送っている。だがケイティはキューバでの生活に馴染めない。
ケイティがサルサと出会うシーン
ある日バスに乗り遅れてしまったケイティは歩いて帰ることに。そこで老若男女、自由にサルサを踊る街の人たちと出会う。
楽しんでいる人たちの中に見たことのある地元の青年ハビエルを見つける。ハビエルはケイティが住むホテルのウェイターをしていて、以前あるトラブルに巻き込んでしまった相手。ハビエルが、ケイティを見つけ声をかける。キューバに来てから地元の世界を見ていなかったケイティ。自由に踊るキューバの人たちを見て衝撃を受ける。
ハビエル:キューバの音楽に興味があるの?
ケイティ:違うの…。バスが先に出ちゃって。1時間も歩き続けてるの…。
ハビエル:送ってあげるよ。
ケイティ:そんな。気にしないで。
ハビエル:ふーん。きっと歩けば見つけられるよ。ただ、1ヶ月くらいかかっちゃうかもよ。(笑)
ケイティ:(笑)
ハビエル:挨拶するから待ってて。
ケイティ:あれはお父さん?
ハビエル:どう思う?(笑)おじいちゃんだよ。
ケイティ:(気まずく笑う)ケイティよ。あなたの名前は?
ハビエル:ハビエルだよ。
このシーンの前にウェイターのハビエルとケイティがぶつかりグラスをぶちまけてしまいます。ケイティに原因があり謝りに行きますが、ハビエルは素っ気ない対応。
そんな彼がこのシーンではコロッと明るい対応です。ここにキューバの明るい気質があらわれています。また、ケイティがお父さんとおじいちゃんを間違えています。これはキューバでは結婚が早いということを伝えているように思います。
まったく違う世界のふたりが出会い、サルサを通じ互いに歩み寄っていく。ハビエルと出会い、世界を違う視点でみることができるようになっていくケイティ。
そんなとき、客と従業員の付き合いを一切禁じているルールを破ってしまったため、ハビエルがホテルをクビになってしまう。責任を感じるケイティ。なんとかハビエルを救えないかと考える。そして優勝賞金がでるダンスコンテストを見つける。ハビエルとケイティが一緒に大会で戦うことを決意する。
キューバ革命前夜の緊張感と、情熱的なサルサで語られる自由を求める人々を描いた素晴らしい映画です。
制作背景
この作品はもともと政治色の強かったピーター・セガールによる脚本(オリジナル題名『Cuba Mine』)が、『ダーティー・ダンシング』の名を借りて再構成されました。もとの脚本は、革命と成長のリアルな視点がありました。この映画はダンス主体の構成になっているものの、原作のエッセンスが大きな影響を与えています。
振付|JoAnn Jansen
振付を担当したのは、ジョアン・ジェンセン。彼女自身が1958年のキューバで育ち、映画のモデルとなっています。振付には実体験と文化背景を踏まえたリアルなラテン表現が反映されています。
『ダーティ・ダンシング2』
この映画は、『ダーティ・ダンシング2』という題名がついています。原題は『Dirty Dancing: Havana Nights(ダーティ・ダンシング:ハバナの夜)』。
邦題は『ダーティ・ダンシング』という言葉をバッサリなくしてしまっているので、続編と知らずに観ている人が多いかもしれません。
この映画はリブート版です。同じ題材を扱いつつ、設定や役者をガラッと変えている作品のことです。金持ちの女の子がワイルドな男性と出会い、人間的に大きく成長するストーリー。共通点はありますが、パート1とのつながりがまったくないので、この作品から見てもまったく問題ありません。予告編はこちらです。
監督・脚本家
監督:ガイ・ファーランド(Guy Ferland)
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映画『ダンシング・ハバナ』(2004)の監督を務めたのち、テレビドラマに活動の場を移し、『プリズン・ブレイク』や『The Walking Dead』など幅広い人気シリーズで多数のエピソードを手がけている。
脚本:ボアズ・イェーキン(Boaz Yakin)(共作:ヴィクトリア・アーチ)
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『ダンシング・ハバナ』の脚本を担当。その他の代表作として、監督作『タイタンズを忘れない』(2000)、脚本作『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(2010)、『グランド・イリュージョン』(2013)などがある。現在も多方面で活動中のベテラン脚本家・監督。
主なキャスト|役名:俳優(声優)
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ハビエル・スアレス:ディエゴ・ルナ(坪井智浩)
映画『天国の口、終りの楽園。』(2001)、『ターミナル』(2004)、『ミルク』(2008)、TV『ナルコス:メキシコ編』(2018)など幅広く出演。 -
ケイティ・ミラー:ロモーラ・ガライ(松谷彼哉)
『エンジェル』(2007)、『つぐない』(2007)、『Emma』(2009)など、英国でキャリアを積んだ実力派。 -
ジェニー・ミラー:セーラ・ウォード(呉林卓美)
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バート・ミラー:ジョン・スラッテリー(仲野裕)
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ジェームズ・フェルプス:ジョナサン・ジャクソン(小野大輔)
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スージー・ミラー:ミカ・ブーレム(木川絵理子)
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イヴ:ジャニュアリー・ジョーンズ
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カルロス・スアレス:レネ・ラヴァン
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ローラ:マイア(Mýa)
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ダンス講師:パトリック・スウェイジ
(オリジナル『ダーティ・ダンシング』の主演俳優として特別出演)
このキャストに注目
ディエゴ・ルナとロモーラ・ガライの踊りがとにかく素晴らしいです。ディエゴ・ルナは細身の身体でありながら男らしい踊り。ロモーラ・ガライは足がとにかく長い。どのシーンでも目が行きます。英国出身で、この作品がハリウッドでの初出演。ダンス未経験でありながら、集中トレーニングで踊りをものにしています。ダンス初心者というキャラクターのリアリティに繋がります。
この2人の魅力がつまっていてファンになっちゃうと思います。とくにディエゴ・ルナのファンがこの作品を見るとさらに惚れ直してしまう人が多数という噂。
また、パパ役のジョン・スラッテリーと嫌な友達役のジャニュアリー・ジョーンズにも注目しました。この2人は1960年代の広告業界をテーマにした海外ドラマ『マッドメン』で重要な役で登場しています。1960年代が似合う2人です。
パトリック・スウェイジ
そして大本命のパトリック・スウェイジ。
オリジナル版『ダーティー・ダンシング』で主役を演じ、映画スターになりました。前作の映画とはまったく関係のない役で登場します。今回はダンス講師役です。ちなみに前作を思い起こさせるシーンもちょこちょこ登場します。水辺でのシーンは懐かしくなりました。
男性と女性が一緒に組むペアダンス。一番最高の状態はお互いに何も考えずに踊れることです。相手に気をつかって踊っていると、ダンスに没頭できません。
パトリック・スウェイジはそっと諭してくれます。
「何も考えずに踊るためには相手を完全に信頼しないといけない。」そんな素晴らしい言葉を映画で語っています。
魅力的なファッション
ファッションの印象が強く、ビビッドな色合いに目が奪われます。
主人公のケイティがサーキュラースカートを着用していることが多く、動きの美しさが頭に残っています。
たっぷりと布を使い、すそを広げると円形になるスカートのこと。女性ダンサーは回転が美しく見えるようサーキュラースカートを着用することがあります。クルっと回るとスカートがきれいな丸いシルエットを描きます。
主題歌
Wyclef Jean feat. Claudette Ortiz の『Dance Like This』がテーマ曲です。
この曲はシャキーラがカバーし日本でも大ヒットした『Hips don’t lie(お尻は嘘つかない)』です。
サントラ
「ダンシング・ハバナ」のサントラは最高です。いまだに聞いています。
映画には実際の歌手もたくさん登場しています。
驚いたのはMya。マイアは2001年映画『ムーラン・ルージュ』の主題歌『レディー・マーマレイド』にも参加していました。映画では歌姫として登場します。ふたりの素晴らしい踊りと、マイアの素晴らしい歌。
評価
Yahoo!映画より
評価の数が少なく、評価しているのはダンス映画好きな人だと思いますが、この数字はかなりの高評価です。
僕は☆5つです。
一歩踏み出す勇気をくれるダンス
女性にとっても男性にとっても、生きることに息苦しさを感じる人が見るとすごく共感できる内容です。
一歩踏み出す勇気を持つこと。周りから反対されても、動き出したことで応援してくれる人が現れる。
ダンスを通して自立していく姿が描かれていて、とても巧みな脚本だと思います。
家族、思春期、初恋、初体験。好奇心に身をゆだねてみることの大切さを思い出させてくれる作品です。そして、ダンスを通してケイティが自分を解放する方法を見つけていきます。
社会主義に進むキューバが舞台になっていることもあり、政治への関わり方も作品に取り込まれています。ケイティは自分の世界だけに生きていましたが、ハビエルを通し地元に溶け込んでいきます。郷に入っては郷に従え。
そこでケイティは気づきます。
「知らないことに対する罪の重さ」
こうした重いテーマも含みつつ、ダンス映画という軽やかなタッチで作品は進んでいきます。
ダンス上達へのヒント
両親がプロの社交ダンサーで、ダンス経験もあるケイティのシーン。サルサを踊りたいと思って鏡をみながら練習します。
そんな練習中にハビエルがやってきます。鏡を見て練習するケイティにこんな疑問を。
ハビエル「なんで鏡を見てダンスの練習を?」
ケイティ「この前見たステップを確認するためよ。」
ハビエル「鏡が助けになるの?」
ハビエル「音楽を感じなきゃ。自分の身体で感じないと。」
かなりハッとしました。
ダンスは自由を表現する役割があります。この時代のキューバでは、革命思想とつながるため音楽やダンスの取り締まりがありました。
かつて文化を踊りで表現するフラダンスが禁止されたように、ダンスの根源には政治的な思想が含まれていることを思い出しました。
ダンスを学ぶ視点で見る4つのポイント
1:体でリズムを感じる練習シーン
ハビエルから教わるケイティ。ただ振り付けをなぞるのではなく、「音 → 身体 → 表現」のプロセスが見て取れます。これはダンス初心者にとって特に大事な学びの型。
2:ペアワークの信頼感を描く
2人が共に練習し、言葉を交わし、振りを合わせていく描写は、パートナーダンスで必要な「信頼感とタイミング感」を映像を通じて体感できます。
3:多様なスタイルの組み合わせ
クラブシーンから大会用ダンスまで、サルサ、ラテン、クラブダンスが混在。さまざまなテンポ感を映像として観られるのは学習素材としても価値が高いです。「振付は巧みで、見応えがある」と批評家が評価しています(Roger Ebert)。
4:失敗とリカバリーから学ぶ
物語の中に、ダンスが途中で中断してしまうシーンがあります。それは挫折とも取れますが、個々の過程に価値があるというメッセージとも受け取れます。
お役立ち英語フレーズ「固いはスクエア」
社長の息子のイケメンジェームズとデートに行くことになったケイティ。そんなケイティが服選びに迷ったときのシーンです。メイドのヨランダに洋服についてアドバイスを求めます。
This is square?「これって固い?」
Square?「四角ですか?」
Yeah, Yeah, Yeah. Like squar(四角いジェスチャーをしながら).「そうそうそう。四角い感じ。」
Is this square good or bad?「スクエアはいい意味ですか?悪い意味ですか?」
It’s bad.「悪い意味ね。」
Si. It is square.「それなら、固いです。」
Oh, god.「あー、そんな。」
隠れた名作です。
今回は、「ダンシング・ハバナ」のご紹介でした。 ぜひぜひチェックしてみてください。ありがとうございました。
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