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「マイヤーリンク(うたかたの恋)」の第3幕のストーリーは?
シーンの流れは?
見どころは?

物語冒頭に寂しく埋葬されたひとつのひつぎ

その真相が明かされていきます。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります

kazu

今回は「マイヤーリンク」の第3幕のストーリーと見どころポイントです。

※3分ほどで読み終わります。

燃焼

父であるヨーゼフ皇帝とは思想が異なるルドルフ。

政治の場から追い出され、家の中でも居場所がないように感じています。どんどん孤立していく様子が第2幕まで描かれていました。

第2幕に関してはこちらで紹介しているので、ぜひご覧ください。

登場人物

ルドルフ皇太子:オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子。フランツ・ヨーゼフ皇帝の嫡子
マリー・ヴェッツェラ:ルドルフの最後の愛人で心中時は17才。男爵令嬢ではあるが普段宮殿に出入りは許されていなかった

フランツ・ヨーゼフ1世皇帝:オーストリア・ハンガリー帝国の皇帝。ルドルフの父
エリーザベト皇后:フランツ・ヨーゼフ皇帝の妻。ルドルフの母

ラリッシュ伯爵夫人:ルドルフの前愛人(史実では従姉妹)。ルドルフとマリーの仲を取り持つ
ブラットフィッシュ:ルドルフのお気に入りの御者

第3幕は45分です。

ここからストーリーと見どころポイントを紹介していきます。

第3幕 第1場:田園地帯にある皇室の狩猟場

田園地帯で狩猟を楽しむ皇室一行。

ルドルフが猟銃を暴発させてしまう。

運の悪いことに、皇帝のすぐ側にいた従者に弾が当たり死亡させてしまう。

事故とはいえ、人を殺してしまうルドルフ。ただでさ要注意人物のレッテルを張られていたルドルフは、皇帝暗殺未遂の噂がたってしまい立場がなくなってしまう。

第3幕 第1場:解説

この事件を機に、ルドルフはさらに自殺願望が膨らんでいき、「すべてから解放されたい」と願うようになります。

第3幕 第2場:ホーフブルク宮殿のルドルフの部屋

深い孤独に絶望するルドルフはモルヒネに依存する日々を送っている。

ルドルフをなぐさめるラリッシュ伯爵夫人。そこにエリザベートが入ってきて、すごい剣幕でラリッシュ伯爵夫人を追い出してしまう。

その後ラリッシュ伯爵夫人がマリーを連れてくる。マリーと2人きりになり、ルドルフは「一緒に死んでくれ」と懇願こんがんする。マリーはその提案にまったく物怖ものおじすることはない。

ルドルフもマリーも、いつ死んでもおかしくない状況である…。

第3幕 第2場:ポイント

ルドルフの精神が崩壊している様子が描かれます。

ラリッシュ伯爵夫人の前で子供のように泣きじゃくります。そして、マリーにどんどん依存するようになっていきます。

第3幕 第3場:マイヤーリンクの狩猟小屋

コーブルク公フィリップとホイヨス伯爵と狩りをするためにマイヤーリンクにやってくるルドルフ。

酒に溺れるルドルフを心配する2人…。

ブラットフィッシュがマリーを連れてくる。ルドルフがブラットフィッシュに余興を命じたものの、ルドルフもマリーも見ていない。

ブラットフィッシュは必死に二人に語り掛けるが、どうにもできない……。ルドルフはブラットフィッシュへの感謝を伝え下がらせる。

ルドルフはモルヒネを打ち、マリーと最後のパ・ド・ドゥを踊る。

ついに心を決めたルドルフ。

マリーを撃つ……。

銃声に驚いて友人が入ってくるが追い出してしまう。

そして、最後に自分自身を撃ち死に至る…。

第3幕 第3場:ポイント

このシーンは息もできないほど緊迫しています。

英国ロイヤル・バレエ団より。元プリンシパルのアリーナ・コジョカルとヨハン・コボーです。最初に作品の解説が少し入っています。

意訳

雄弁な振付から何かを感じることができ、そして心が動くと思います。

最後のシーンはルドルフがマリーを誘います。そして、マリーを撃ち、自分を撃ちます。

内容が内容だけに「感動」するかは観客次第です。

ですが、ルドルフの決断に共感できるシーンでもあります。

国を良くしたい、孤独から解放されたい、愛をつかみたい、幸せになりたい、こうした感情がすべてすれ違った結果です。

生きている中での息苦しさ…。現代の観客が観てもかなり共感できるんじゃないかと思います。

エピローグ

プロローグのシーンに戻ります。

ハイリゲンクロイツの墓地。夜に紛れて1台の馬車が到着する。マリーの遺体がひそかに埋葬される。そのそばでブラットフィッシュが涙を流すのだった。

ポイント

ルドルフとマリーの遺体は死後すぐに引き離され、ルドルフの遺体は宮殿に運ばれ、皇太子にふさわしい埋葬がなされました。

しかしマリーの遺体は自殺を隠すため、生きている人間のように馬車に座らされ、ハイリゲンクロイツの墓地へ運ばれます。母や兄姉の立会いも禁じられて、さびしく埋葬されたといいます。

プロローグの棺が、ルドルフの心中相手であるマリー・ヴェッツェラのものであることが明かされます。ルドルフの心中は極秘事項であり、マリーの遺体は人知れず墓に入れられるのでした。

そして第1次大戦へ

ここで話が終わりますが、歴史にとって重要な事件へとつながります。

ルドルフが死んだことで、いとこのフランツ・フェルディナンドが皇太子となります。

1914年、フランツ・フェルディナンドがサラエボで暗殺。これが第1次世界大戦の引き金となります。

映像作品

英国ロイヤル・バレエ団から年代の違う3つのDVDがリリースされています。

1994年版

狂気に満ち野性味あふれたイレク・ムハメドフ。ハマり役のヴィヴィアナ・デュランテ。スター性あふれるレスリー・コリアとダーシー・バッセルの共演で今も素晴らしいDVDです。

2010年版

エドワード・ワトソン主演です。ハマり役で、登場から顔色の悪さが不穏な空気でオススメです。

2018年版

スティーヴン・マックレー主演です。普段の明るいイメージと真逆でびっくりします。テクニックの高さ、表現力の深さが光る作品です。この公演に関しては感想をこちらで紹介しているので、ぜひご覧ください。

kazu

今回は「マイヤーリンク」第3幕の詳しいストーリーの紹介でした。
ありがとうございました。

バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。