「ロミオとジュリエット」を実際にみた感想は?
主演のふたりはどうだった?
何がおもしろい?
英国ロイヤル・バレエ団の若手プリンシパルのヤスミン・ナグディとマシュー・ボール。
ライブビューイング公演で若手ふたりが抜擢されました。若手の踊る「ロミオとジュリエット」に期待が集まっていたので、僕も見に行ってきました。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録があります

今回は2018年/2019年シーズン最後の作品ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール主演「ロミオとジュリエット」の感想です。
※3分ほどで読み終わります。
若さ、純粋さにあふれるキラキラのロミジュリ

「バルコニーシーン」がすごく良かった…
1幕最後の一番の盛り上がるバルコニーシーンです。有名な「ああ、ロミオ。どうしてあなたはロミオなの」のシーン。
プロコフィエフの美しい音楽と、ケネス・マクミランの流れるような振付。マイムが排除され、不実な月に誓うシーンも踊りで表現されています。アレッサンドラ・フェリとフリオ・ボッカの映像を使って解説しています。
普段だと感動が先に来るんですが、とにかく純粋…。若さ、純粋さに胸がいっぱいになりました。
「バルコニーシーン」の曲は厳密には3曲に分かれています。
➀「バルコニーの情景」
➁「ロメオ(ロミオ)のヴァリアシオン」
⓷「愛の踊り」
⓷「愛の踊り」のはじめ、ジュリエットがロミオにサポートされながら、ピルエットからロンデをします。
僕は、この部分がとにかく好きなのですが、ふたりの音のハマり具合が…。とてもイイ!
この映像は残念ながらロンデのあとからのダンスです。
リハーサルに関してはこちらでも紹介しています。
ケネス・マクミラン振付の英国ロイヤルバレエ団の「ロミオとジュリエット」のリハーサル映像をご紹介。日本語の翻訳もしています。品のあるレスリー・コリア、ロイヤルの伝説ダーシー・バッセルが登場します。
舞台を映画で観る価値アリ
舞台は生で観た方がイイ。確かにそうなんですが、映画館でバレエを観るのも僕は好きです。肩ひじ張らずに観れるし、服装も気にする必要はありません。音響もすごくいいし、ダンサーの表情をアップで観ることができます。
特に今回の「ロミオとジュリエット」は物語バレエと呼ばれています。ダンサーの表情をしっかり見られるので、気持ちの動きが舞台で見るよりもはっきり伝わってきます。
作品のあらすじはこちらからどうぞ。
マクミラン版はジョン・クランコ、フランコ・ゼフィレッリの影響を受けています。リン・シーモアがマーゴ・フォンテインとルドルフ・ヌレエフに入れ替わってしまった裏話、プロコフィエフの音楽もご紹介します。
キャスト
振付:ケネス・マクミラン(KENNETH MACMILLAN)
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ(SERGEY PROKOFIEV)
指揮:パーヴェル・ソローキン(PAVEL SOROKIN)
ジュリエット:ヤスミン・ナグディ(YASMINE NAGHDI)
ロミオ:マシュー・ボール(MATTHEW BALL)
マキューシオ:ヴァレンティノ・ズケッティ(VALENTINO ZUCCHETTI)
ティボルト:ギャリー・エイヴィス(GARY AVIS)
ベンヴォーリオ:ベンジャミン・エラ(BENJAMIN ELLA)
パリス:ニコル・エドモンズ(NICOL EDMONDS)
キャピュレット卿:クリストファー・サウンダーズ(CHRISTOPHER SAUNDERS)
キャピュレット夫人:クリスティナ・アレスティス(CHRISTINA ARESTIS)
乳母:クリステン・マクナリー(KRISTEN MCNALLY)
三人の娼婦:ベアトリス・スティクス=ブルネル(BEATRIZ STIX-BRUNELL)、ミカ・ブラッドベリ(MICA BRADBURY)、ロマニー・パジャック(ROMANY PAJDAK)
マンドリン・ダンス:マルセリーノ・サンベ(MARCELINO SAMBÉ)
ローレンス神父:ジョナサン・ハウエルズ(JONATHAN HOWELLS)
エスカラス(ヴェローナ大公):トーマス・ホワイトヘッド(THOMAS WHITEHEAD)
ロザライン:金子扶生
ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール主演
主演は、イギリス出身のヤスミン・ナグディとマシュー・ボールです。今、ロイヤルバレエ団で最も人気のあるふたりです。ロイヤルバレエ団の団員は世界中から集まってきている中で、最高位のプリンシパルは16人います。
そのうちイギリス人は4人。2人はベテランで、2人は若手。この若手2人がヤスミン・ナグディとマシュー・ボールです。ロイヤルバレエ団もこの2人を大プッシュしています。ふたりとも、かなりの人気です。
ちなみに日本人は2人もプリンシパルがいます。高田茜さんと平野亮一さんです。
ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボールともに容姿端麗です。ふたりとも若手のプリンシパルですが、テクニックの安定感がスゴイです。
ヤスミン・ナグディは実生活でも絶対素直なんだろうな、という純粋なオーラが出ていてジュリエットにぴったりでした。
そしてマシュー・ボールは、レオナルド・ディカプリオのロミオと印象が似ていて、ロミオがそのまま出てきた感じです。若干、影があるのも良かったです。
プリンシパルのヤスミン・ナグディ
実は最近まで、僕はヤスミン・ナグディのことをあまり知りませんでした。来日公演において代役で主演したとき観るチャンスがありました。ですが、そのときようやく存在を知ったくらいで、プリンシパルになったことも知らず…。
ロイヤルバレエはyoutube をとても活用していてレッスン動画などを公開しています。レッスン動画は好きなダンサーばっかり目で追っていたので気づきませんでしたが、よくよく動画を観てみるとすごく目立つダンサーがひとり。それがヤスミン・ナグディでした。
ヤスミン・ナグディはバレエに恵まれた身体をしています。たぶんインド系だと思いますが、エキゾチックな顔をしていて、小柄なのですぐに見分けることができます。柔軟性と体幹がとにかく強く、バーレッスンでもセンターレッスンでもかなり目立っています。
サムネイルになっているのがヤスミン・ナグディ。37:35からのピルエットに注目です。ちなみにヤスミンのグループのあとに高田さんが登場します。高田さんもめちゃめちゃきれいです。

ふたりとも踊りが大好きなんだろうなー。
やっぱり映像だとかゆところに手が届かないこともある
ロミオとジュリエットで一番注目は、ロミオがジュリエットを見つけるシーンだと思っています。ソフトバンクのCMで有名になった「モンタギュー家とキャピュレット家」の音楽から仮面舞踏会はスタート。ロミオは別の女性を追っかけて、舞踏会に忍び込みますが、そこでジュリエットに出会います。
僕はいつもロミオがジュリエットを初めて認識する瞬間に注目しています。ちょうどジュリエットが中央あたりで踊っている中、ロミオは舞台の下手をウロウロしています。
生の舞台だとロミオとジュリエットにピンスポットが当たっています。でも、映像だとこのシーンはジュリエットが踊っているため、ジュリエットにズームしてしまっていて、ロミオの動きをとらえてくれません。今回もそうでした。残念!!!!
このシーンは舞台全体を映してほしいと常々思っています。なので、今回もロミオが初めてジュリエットを見る場面が観られず残念でした。
ロマニー・パジャックの「かつら」が非常に気になった
3人の娼婦が登場します。その中のひとりロマニー・パジャックのかつらが黒髪でした。 照明があたると、黒髪の光が飛んでしまっていて、映像でみると禿げてるように見えてしまって、最初かつら取れてるんじゃないかとかつらばっかり気になっちゃいました。(笑)
最初は取れてると思っていたので、ずっと注目しすぎてしまって、他の方の踊りもそっちのけに。(笑)じーっと見ていたら、かつらは取れていないことが判明。よかったよかった。
男性ダンサーが大活躍
女性ダンサーの役名がついているのはジュリエットくらいで、ほかに目立つのは3人の娼婦だけです。そのため、男性がかなり活躍します。
マキューシオのヴァレンティノ・ズケッティ、ベンヴォーリオのベンジャミン・エラ、ティボルトのギャリー・エイヴィス、マンドリン・ダンスのマルセリーノ・サンベが目立っていました。
モンタギュー家とキャピュレット家の対立はどこまで本気なのか
ティボルトのギャリー・エイヴィスがマキューシオのヴァレンティノ・ズケッティを「殺してしまう」ことで、一気に悲劇へと転がり始めます。
「殺してしまう」と表記しましたが、今回のギャリー・エイヴィスの演技を見ると「間違って殺してしまった」という表現がしっくりきます。モンタギュー家とキャピュレット家はいつも争いあっていて、殺し合いもしています。
ですが、中心人物の、ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオ、ティボルトはお互いのことを本気で殺しあう気はないんじゃないか、という雰囲気を感じました。なので、ティボルトがマキューシオを殺してしまった時、後悔すら見え、ロミオに殺されるのを望んでいたようにさえ見えたのが、とても新しく感じました。
わかりやすい解説
映画でバレエでは途中にドキュメンタリー映像や解説が入ります。今回は、日本でも人気の高いアレッサンドラ・フェリが幕間に登場。マクミランのミューズであり、マクミランから直接指導を受けたひとりです。
19歳から54歳までジュリエットを踊っていました。僕も晩年の時に何回か拝見することができ、とても素晴らしかった記憶が今でも残っています。50歳近くても14歳のジュリエットが踊れるなんて本当に信じられませんでした。
「醜くなることを恐れるな」
マクミランはバレエの様式にとらわれず、自然に演技することに重点を置いていました。バレエには振付があり、美しい形が決まっています。しかし、ここにとらわれ過ぎると表現が後回しになってしまいます。僕が「ロミオとジュリエット」を何回観ても飽きないのは、ダンサーがそれぞれのロミオとジュリエットを表現している点です。振付・曲が同じであっても、いろいろな表現を見ることができます。
マクミランの「ロミオとジュリエット」はきっと僕がおじいさんになっても踊り続けられれていると思います。これからもまだまだ観られることが本当に楽しみです。
DVD
今回のライブヴューイングがそのままDVD化されています。
気になる方はぜひチェックしてください。
映画版「ロミオとジュリエット」
ケネス・マクミラン版「ロミオとジュリエット」を映画版が2020年に制作されました。ロミオを踊ったマシュー・ボールが敵役であるティボルトを演じています。
英国ロイヤル・バレエ団が映画化。ウィリアム・ブレイスウェル、フランチェスカ・ヘイワード主演のバレエ映画です。バレエをそのまま映画にしています。僕はとっても感動しました!
舞台版よりも短く90分の作品でとても見やすいので予習にピッタリです。
配信レンタル版は500円ほど。DVDは通常版、ブルーレイ版ともに4,000円ほどで、1時間の特典映像がついています。

今回は、ヤスミン・ナグディとマシュー・ボール主演の「ロミオとジュリエット」のライブビューイングの感想でした。
ありがとうございました。
バレエ作品に関してはこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。