「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーンはなんで人気?
初心者でも楽しめる?
見どころは?
優れたダンサーによる踊りは感情表現がすごいです。
振付が流れるようつながり、どんどん感情が高まっていくので気づいたらどんどん引き込まれてしまいます。
「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーンを見終わったあと、ふと涙していることがあります。
元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり
今回は、ロイヤルバレエ団のyoutube映像から初心者でも楽しめるバルコニーシーンの解説です。映像と一緒にどうぞ。
※3分ほどで読み終わります。
バルコニーシーン
バレエ版「ロミオとジュリエット」全3幕のうち、第1幕最後に登場するのが「バルコニーシーン」です。
これはどのバージョンでも同じです。
今回はおそらく世界で1番上演されているマクミラン版「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーンをご紹介します。
バレエではマイム(パントマイム)といって、言葉の代わりとして動きでセリフを表現する方法があります。
ですが、マクミラン版の「ロミオとジュリエット」ではこのマイムが使われることはほぼありません。マイムに頼らず踊りだけでセリフを表現するよう工夫されています。
マクミラン版「ロミオとジュリエット」についてはこちらをどうぞ。
マクミラン版はジョン・クランコ、フランコ・ゼフィレッリの影響を受けています。リン・シーモアがマーゴ・フォンテインとルドルフ・ヌレエフに入れ替わってしまった裏話、プロコフィエフの音楽もご紹介します。
3つのパート
プロコフィエフ作曲の「ロミオとジュリエット」の音楽は、このバルコニーシーンにくるまで
バルコニーシーンは厳密にいうと3パートに分かれています。
ロミオとジュリエット全52曲のうちの「19曲、20曲、21曲」(9分)がバルコニーシーンです。
第19曲:バルコニーの情景
第20曲:ロメオのヴァリアシオン
第21曲:愛の踊り
ここからは実際の映像でバルコニーシーンを解説していきます。僕の解釈も入っているので、間違っていても大目にみてください。
30年ほど前の映像で、ジュリエットをアレッサンドラ・フェリ、ロミオをフリオ・ボッカが踊ります。アレッサンドラ・フェリは振付のケネス・マクミランのミューズとして有名で、マクミラン作品に欠かせない人物です。そして、アルゼンチン出身のフリオ・ボッカの熱い演技が素晴らしいです。
映像のあとに解説を載せています。
アメリカン・バレエ・シアターの芸術監督であるケヴィン・マッケンジーによる解説が前後に挟まれています。
「ふたりの卓越したテクニックによりロミオとジュリエットが深く表現され、物語を超えたリアリティを表現している」
「南米出身のヒスパニック系のダンサーの情熱的な表現は、アメリカン・バレエ・シアターをよくするだろう」
第19曲:バルコニーの情景(0:00~)
舞踏会から追い出されてしまったロミオですが、どうしてもジュリエットが忘れられず屋敷に忍び込みます。一方のジュリエットは月夜がきれいな夜、ロミオとの出会いを思い返しています。
なにかの気配を感じるジュリエット…。外を眺めるとロミオが立っています。目を離すことができないロミオとジュリエット。ロミオに「降りてきて」と言われ、あまりの嬉しさにバルコニーから一気に駆けおりるジュリエット。
ジュリエットに「胸の高鳴りを聞いて」と言われ、喜ぶロミオ。
第20曲:ロメオのヴァリアシオン(2:53~)
そこで、ロミオが自分の気持ちを伝えます。ロミオが同じ気持ちであることに感動するジュリエット。
第21曲:愛の踊り(3:58~)
ふたりは「愛の踊り」になだれ込んでいきます。
ロミオが月に愛を誓う場面があります。「5:55~」がたぶん下に紹介する有名なセリフのシーンだと思います。たぶん…。
ロミオ「ジュリエット、あの美しい月の光にかけて愛を誓う」
ジュリエット「ああ、いけませんわ。月にかけて誓ったりなんてしないでください。一月ごとに、形を変えてゆく、あの不実な月。あんな風に、あなたの愛まで変わってしまっては大変だわ。」
このシーンもマイムではなく、踊りで表現されていきます。

なんで「たぶん」と強調しているかというと、アレッサンドラ・フェリのときだけしか、この表現をみたことがないからです。
ほかのダンサーは、この振付で「喜びの表情」をしていることが多いです。ですが、アレッサンドラ・フェリの動画を見たとき「不実な月」のシーンかも、と思いました。ロミオが月に誓い、ジュリエットが深刻に…。ジュリエットの反応から、キャピュレット家とモンタギュー家の
そして自分の部屋に戻ろうとするジュリエット。それを素早く静止するロミオ。このときのフリオ・ボッカの表情が雄弁です。
そして、また「愛の踊り」に戻っていきます。ジュリエットの心が浮き上がっているかのようなソロの踊り。ふたりが一体となったような軽やかなリフト。
最後にキスをして終わりを迎えます。
オススメ映像作品
マクミラン版バルコニーシーンは多くの映像作品がリリースされています。
アレサンドラ・フェリ
さきほど紹介したアレッサンドラ・フェリが19歳のときのDVDです。
2,000円ほど。
ロミオ役はウエイン・イーグリングです。
「踊る舞台女優」といわれるアレッサンドラ・フェリ。アレッサンドラ・フェリのジュリエットは何度も見ました。40歳を超えたときも本当に少女のようでびっくりしたのを覚えています。
映画「センターステージ」
僕が「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーンを初めて見たのは映画「センターステージ」でした。
劇中にガラ公演(いくつもの有名な作品の抜粋がまとめて上演される公演)の場面があり、バレエ団のプリンシパルを演じていたジュリー・ケントとイーサン・スティーフェルが「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーンを踊ります。
バレエが大好きになったのは「センターステージ」の影響で、僕の世代のダンサーはたぶんみんな見ているんじゃないかという作品です。
「2:47」でエヴァ役のゾーイ・サルダナが涙をツーっと流している姿が映し出されます。幸せなシーンにも関わらず涙が流れてくることがあります。
たぶん、多くの人がこの涙に共感するんじゃなかと思います。だからこそガラ公演でよく踊られています。
廃盤になっていますが、すごくオススメです!
映画版「ロミオとジュリエット」
ケネス・マクミラン版「ロミオとジュリエット」を映画版が2020年に制作されました。
英国ロイヤル・バレエ団が映画化。ウィリアム・ブレイスウェル、フランチェスカ・ヘイワード主演のバレエ映画です。バレエをそのまま映画にしています。僕はとっても感動しました!
舞台版よりも短く90分の作品でとても見やすいです。
配信レンタル版は500円ほど。DVDは通常版、ブルーレイ版ともに4,000円ほどで、1時間の特典映像がついています。
眠らないように注意
マクミラン版「ロミオとジュリエット」の第1幕は60分。最後の10分に、このバルコニーシーンがくるので眠気が襲ってきてしまうこともあります…。
ふたりだけの踊りで10分というのはなかなかの長さです。何も知らないと「いつ終わるんだろう…」と考えてしまうこともあります。そうなると、舞台には集中できなくなってしまうので、ちょっともったいないです。
バルコニーシーンの流れを抑えておけば、寝落ちを回避できると思います。
このバルコニーシーンを制すものは、「ロミオとジュリエット」を制します。

「ロミオとジュリエット」は本当に素敵な作品なので、ぜひ一度バレエを見てみてください!
ありがとうございました。
「ロミオとジュリエット」に関してはこちらにたくさんまとめていますので、ぜひご覧ください。
舞台鑑賞好きの僕が劇場に行くときに知っておくとちょっと得する話をのせています。バレエを中心に紹介しています。