jazz

カルロス・アコスタ版「ドン・キホーテ」とは?
あらすじは?
特徴は?

英国ロイヤル・バレエ団初の黒人系のプリンシパルであったカルロス・アコスタが振り付けた「ドン・キホーテ」。初演では自信が主役を踊りました。「ドン・キホーテ」をダンサー目線から演出した作品で、見どころがかなりたくさんあるバージョンです。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり。

kazu

今回はカルロス・アコスタ版「ドン・キホーテ」の紹介です。

※3分ほどで読み終わる記事です。

カルロス・アコスタによる演出

通常の「ドン・キホーテ」は、キトリとバジルが主役のためドン・キホーテの存在感が薄いこともあります。カルロス・アコスタ版は、どのシーンにおいてもドン・キホーテの存在を感じることができます。

ドン・キホーテを話の中心に持ってくると、主役であるキトリとバジルの存在感が薄くなってしまうことがありますが、この部分をすごくうまく解消しているバージョンです。

2013年初演

英国ロイヤル・バレエ団(イギリス)

改訂振付:カルロス・アコスタ(マリウス・プティパの原版に基づく)
音楽:ルトヴィク・ミンクス
編曲:マーティン・イエーツ
美術:ティム・ハットリー
照明デザイン:ヒュー・ヴァンストーン

振付のカルロス・アコスタはキューバ出身で、黒人系として初めて英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル・ダンサーとなりました。技術力が非常に高く、ステージにいると絶対に目が行ってしまう存在感のあるダンサーでした。振付作品も多く、現在は英国バーミンガムロイヤルバレエ団の芸術監督として活躍しています。

あらすじ

騎士を目指すドン・キホーテとお供のサンチョ・パンサ。旅の途中でスペインのバルセロナに立ち寄ります。宿屋の娘で無理やり金持ちと結婚させられそうになっているキトリと、その恋人で床屋のバジルが主人公。バレエでは、キトリとバジルが主役で、ふたりの恋模様にドン・キホーテが絡んできます。

カルロス・アコスタ版の流れ

プロローグ:ドン・キホーテの登場
第1幕:キトリとバジルと華やかな街
第2幕:ロマの野営地→ドン・キホーテの夢→バジルの狂言自殺
第3幕:キトリとバジルの結婚式

より詳しくはこちらをどうぞ。

全員参加型バレエ

ロイヤルバレエは、演劇的なバレエ団といわれています。カルロス・アコスタの演出は、演技に命をかけるロイヤルバレエ団にしかできない作品だと思いました。

キャスト

キトリ:ロレンツォの娘。ドゥルシネア姫にそっくり。
バジル:床屋の青年

ドン・キホーテ:騎士道精神を守り旅に出る
サンチョ・パンサ:ドン・キホーテの従者
ロレンツォ:宿屋の主人
ガマーシュ:裕福な貴族

エスパーダ:闘牛士
メルセデス:街の踊り子
キトリの友人たち
4人のごろつき
ジプシー
ドリアードの女王:ドン・キホーテが夢の中で出会う
アムール:キューピッド:ドン・キホーテが夢の中で出会う

例えば、闘牛士たちの踊り。周りが基本踊りに参加せずとも演技で参加しています。このシーンはエスパーダとメルセデス、そして6人の男性ダンサーの見せ場です。周りのダンサーが参加することですごく活気にあふれています。特に闘牛士たちが1列で前に行って、後ろに行ってと繰り返す踊りがあるんですが、その時、街の人たちも前に行ったり後ろに行ったり。躍動感があります。ところどころ声を出す演出も効果的です。

また、4人のごろつきという男性ダンサーの役が追加されています。パワフルな踊りで見ていて楽しくなるシーンです。テクニックも満載になっていて、男性ダンサーの活躍のシーンが増えています。

ここから特徴となる部分をいくつかピックアップします。

サンチョ・パンサも受け入れる

お調子者のサンチョ・パンサが話の途中で女の子たちと楽しく遊び調子に乗ってしまいます。普通のバージョンだと調子に乗り過ぎて街の人たち全員からいじめられてしまい、ドン・キホーテが助けます。街の人たちがサンチョ・パンサをいじめているみたいであんまり好きじゃなかったのですが、カルロス・アコスタ版は解釈が異なります。

とてもイイ演出だな、と思います。

ジプシーの踊り

ジプシーの踊りは退屈なシーンになってしまうこともありますが、かなり改善されています。本物のギタリストが登場していたり、ダンサーが舞台上で叫び声を発するので、臨場感があります。

ジプシーの踊りはコンテンポラリーの要素もあって、カルロス・アコスタの振付の幅広さを感じました。コンテンポラリーの要素も入っているので、自分の色を十分に出すことが許されているのかな、と思いました。また、全員でのカノンが印象的。「カノン」とはカエルの歌の輪唱みたいなことです。同じ振りをちょっとした時間差で何人も踊る、というもの。すごくよく考えてある振付だと思いました。

キトリとバジルがジプシーの踊りに少し参加したり、ドン・キホーテも少し入ってきたりと、新しい演出です。

「夢の場」

ドン・キホーテが気を失い、幻想的な夢を見る場面です。ドン・キホーテの替え玉が登場し、幽体離脱になる演出もすごくわかりやすいと思います。

「夢の場」のセットと衣装がとても立体的になっています。とくにチュチュに装飾が施してあり、ゴージャスです。セットの花も3D感にあふれています。キューピッドを含め、全員の衣装が統一され大人っぽい雰囲気になっています。

メリッサ・ハミルトンによるドリアード(木の精霊)の女王です。ドリアードの女王のイメージカラーが黄色というのもとてもめずらしいと思います。

ドキュメンタリー映像の解説

高田茜さんがキトリ、アレクサンダー・キャンベルがバジルを踊ったときの5分ほどのドキュメンタリー映像です。動画の下に意訳を載せています。

意訳

ドン・キホーテはとても楽しく、熱気あふれる物語の典型です。愛、幸せ、純粋、喜びに満ちあふれています。

「ドン・キホーテ」には心を高鳴らせてくれるストーリーがあります。とはいえ、そこには深い意味はなく、ただただ楽しい舞台が広がっています。ダンサーたちが舞台をスピード感を持って駆け抜けていきます。

ドン・キホーテはおとぎ話の主人公です。ドン・キホーテは小説を読み、ドルシネア姫の幻影を見て世界を救うために旅に出ます。お供は愛されるキャラクターであるサンチョ・パンサです。サンチョ・パンサは飲んだり食べたりが大好きで、本来はドン・キホーテについていくような人物ではありません。ふたりは、キトリとバジルの住む街に到着します。バジルは床屋の青年でキトリと結婚したがっています。キトリは自信あふれる女の子です。ただ、キトリのお父さんであるロレンツォは金持ちのガマーシュと結婚させたがっています。

ドン・キホーテはキトリがガマーシュとの結婚を嫌がっているとをすぐに見抜きます。旅の途中であるドン・キホーテですが、旅以上に二人を助けることに使命感を抱きます。

このバレエは全員のためのものであり、踊りに関して言うと、主役ふたりの踊りの技術を存分に楽しめるようになっています。アコスタ版でもキトリとバジルの踊りはマリウス・プティパ版に基づいています。キトリはとても挑戦的な役で、柔らかくエレガントな反面、とても情熱的です。

僕(アレクサンダー・キャンベル)は、茜さんにはいつも刺激を受けていて、主役二人でもう一段回舞台のレベルを押し上げようとしています。

私(クリストファー・サンダース)はドン・キホーテ役でありながら、コーチもしています。普段はリハーサルを仕切っています。はじめに全員のエネルギーを作品に注いでもらうことに力を使います。主役であろうが、脇役であろうが、エキストラであろうが、全員のエネルギーを統一させます。初演時にはカルロス・アコスタがキャスト全員分を踊ってくれました。クリストファー・サンダースはカルロスの意思を受け継ぎ、ダンサーにカルロス・アコスタの踊りを引き継いでいます。私(クリストファー・サンダース)はダンサーとして舞台に出演することも大好きですが、ダンサーに持っている知識全部を分けることにも幸せを感じています。

レオン・ミンクスが作曲した「ドン・キホーテ」ですが、音楽は振付のカルロス・アコスタの表現を反映しています。私(カルロス・アコスタ)は音楽を生き生きとしたものにしたかったので、オーケストラ以外にギタリストを配置しました。スペインのフラメンコのようにしたいと思いました。マーティン・イエーツにギターの部分を作曲してもらいました。本来ジプシーのシーンにはない音楽を新たに作ったことで、とても素晴らしいものになったと思います。今までも「ドン・キホーテ」の舞台で、ギターがステージに上がったことはありますが、ダンサーが弾くふりをしていました。これを本物に変えることで、とても自然になり、リアルな空間になったと思います。

「ドン・キホーテ」はダンサーのテクニックを楽しむことができるだけでなく、とても明るく楽しいバレエです。一緒に歌って手を叩けるような気持ちになるバレエで、素晴らしい音楽にあふれた舞台です。

DVD

ブルーレイでも映像が発売されています。高田茜さんのキトリ、アレクサンダー・キャンベルのバジル版です。

6,500円ほど。

kazu

今回はカルロス・アコスタ版「ドン・キホーテ」のご紹介でした。 ぜひぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。