
『ケインとアベル』の内容は?
ケインの人生はどう進む?
詳しい内容は?
『ケインとアベル』は、ジェフリー・アーチャー原作の大河小説です。物語は、ウィリアム・ケインとヴワデグ(後のアベル・ロスノフスキ)の対立、互いの歩んできた波乱万丈な人生が描かれています。本記事は、ウィリアム・ケインに焦点を当て、物語を詳しく解説します。
元劇団四季、テーマパークダンサー。年間100公演ほど舞台を観に行ったことのある劇場フリーク。小説は映画化されているものを読むことが多く、映画との違いを楽しんでいます。
※ 3分ほどで読み終わります。
作品について
ジェフリー・アーチャー著『ケインとアベル』(1979年出版)は、上下巻合計で1,000ページほどの作品です。長いですが、文章はとても読みやすいです。
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たまたま1906年4月16日に生まれたウィリアム・ケインとヴワデグ・コスキエヴィッチ(後のアベル・ロスノフスキ)が主人公
上巻では青年期に出会うまでスリリングに描かれ、下巻では2人の対立が激化していきます。全体の内容はこちらで紹介しています。
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ウィリアム・ケインのストーリー
- ボストンの名家に生まれ、恵まれた環境で育つ
- 名門校からハーバード大学へ進学し、銀行家として成功を収める
- しかし、その人生は波乱に満ち、数々の困難に直面する
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アベルのストーリー
- 過酷な少年時代を送ったアベルの物語は、こちらの記事で詳しく紹介中
僕は最初、アベルのストーリーに強く惹かれましたが、読み進めるうちにウィリアムの物語にも次第に心を奪われるようになりました。どちらの物語も甲乙つけがたい魅力があり、読者はきっと自分の好みに合わせて、どちらかに肩入れしてしまうと思います。
ここからは、ウィリアム・ケインについて詳しく紹介していきます。
ウィリアム・ケインからみた『ケインとアベル』
登場人物
- ウィリアム・ケイン:主人公
- リチャード:父。ケイン・アンド・キャボット銀行頭取
- アン:母
生い立ちと家族背景
ウィリアム・ケインは、ボストンのケイン・アンド・キャボット銀行頭取の息子として生まれ、若くして頭取となった父リチャード、美しい母アン、そして厳格な祖母のもと、何不自由なく育ちます。母アンは跡取りとなる男の子が生まれ一安心しましたが、難産だったため「これ以上子供を持つことは難しいだろう」と医師から告げられます。ウィリアムは、生まれたときから銀行家になる道筋が決まっており、進学先も既に決められていました。
ウィリアムが5歳の時、ケイン・アンド・ギャボット銀行のロンドン支店で問題が起こります。広い世界を見せる良い機会と考え、父リチャードは家族を連れてイギリスへ旅立ちました。旅行は実りあるものだったものの、帰国前日、ウィリアムは「はしか」にかかってしまいます。そのため、治るまでロンドンに滞在することになります。仕事のあるリチャードは一足先に帰国しました。しばらくすると、街中は豪華客船の事故の話題で持ちきりとなります。父リチャードはアメリカに帰るため「タイタニック号」に乗っていました。そして、この事故で帰らぬ人となってしまいます。ここでウィリアムは一気に大人になることを迫られます。莫大な遺産を受け継ぐことで祖母がさらに厳しくなり、父を超えることが彼の人生の目標となりました。こうしてウィリアムは、父リチャードと全く同じ道を歩むこととなります。
資産運用の才能
学校に通い始めたウィリアムは、常に成績トップを維持します。アベルに比べ信じられないほど穏やかな生活を送りながらも、少年期からお金をどう儲けるか、株をどう運用するかといった話が展開されます。祖母から資産運用ノートを譲り受けたウィリアムは、まずシミュレーションを行い、堅実に株取引を始めます。さらに、実際のビジネスにも興味を持ちます。
・マッチ箱収集ビジネス
9歳の頃、学校でマッチ箱のラベル収集がブームになり、高額で取引されるラベルの存在に不思議さを感じます。「みんなと交換しているだけでは儲からない」と気づいたウィリアム。小学校に流通しているマッチの種類が限られていることに着目し、マッチ製造会社の社長に「ラベルを集めている」という手紙と返信用の切手を送ります。多くの会社からマッチが送られてくるとともに、切手代まで返送されるという成功を収めました。こうしてレアなアイテムを手に入れたウィリアム。それを高値で売却し、ブームが収まる前に一気に全品を売り切ることで、本来の10倍の利益を得るという快挙を達成します。
・株式投資の失敗
先ほど儲けたお金で株を始めます。情報誌を参考に、オススメ株を購入します。ですが、半分の利益を失ってしまいます。以降、「株は自分で判断して買う」というルールを確立するのでした。
・荷物運搬ビジネス
株での損失を取り戻そうとするウィリアムは、夏休みのタイミングを見計らい、新たなビジネスアイデアを閃きます。それは、旅行者向けに、駅からホテルまでタクシーの代わりに荷物を運ぶサービスです。ウィリアムは、5ドルで簡単なリアカーを製作し、タクシー料金の20%相当の料金で運搬サービスを提供。事業は順調に進み、株で失った損失を取り戻すことに成功しました。しかし、タクシー運転手たちからは大ブーイングがあり、脅迫される事態に。そこでウィリアムは知恵を働かせ、「サービスを中止する代わりに、1人あたり50セントずつ払ってほしい」と交渉。さらに悪知恵ですが、リアカーを上級生に5ドルで売却することで、追加の利益も得ることができました。
・祖母へのプレゼント
少年時代にお金を稼ぐ術を見つけたウィリアム。中学入学と同時に「お小遣いはいらない」と祖母たちに宣言します。その際、祖母に高級箱に入ったブローチをプレゼントします。実は、外箱だけが有名なお店のもので、中身は安物でした。ウィリアムは、商品そのものよりもブランドに価値があることに気づき、この悪知恵を活かしプレゼントを贈りました。ただこのプレゼントに関しては、きっと祖母たちもその価値を十分に理解していたのだろうと感じます。とはいえ、彼の発想には感心せずにはいられませんでした。
寄宿学校への入学と生涯の出会い
登場人物
- マシュー・レスター:ウィリアムの生涯の親友
ウィリアムは12歳で、父リチャードも通った名門の寄宿学校に入学します。そこで、レスター銀行頭取の父を持つルームメイト、マシュー・レスターと出会い、彼とは生涯の親友となりました。寄宿学校では特別扱いされることなく、自由な環境で勉強に専念できました。常に優等生であり、父リチャードの記録を次々と塗り替えていきました。夏休みになると、ウィリアムはマシューの家で過ごし、レスター銀行の規模の大きさに魅了され、「将来、レスター銀行の頭取になる」と宣言するほど、その世界に強い憧れを抱くようになります。
反抗期とアンの再婚
登場人物
- アラン・ロイド:ケイン・アンド・ギャボットの銀行家、ウィリアムの後見人
- ミリー・プレストン:アンの親友、ウィリアムの後見人
- ヘンリー・オズボーン:アンの 2番目の夫
- トーマス・コーエン:ケイン家の顧問弁護士
母親のアンは、リチャードの死後、恋愛から距離を置いていたものの、周囲からは再婚をすすめられていました。アン自身はあまりピンとこない印象でしたが、そんな時、親友のミリー・プレストンからハーバード大卒のハンサムなヘンリー・オズボーンを紹介され恋に落ちました。出会ってから10ヶ月後、二人は結婚。ですが、ウィリアムはこの結婚に大反対。特にオズボーンに対し強い不信感を抱いていました。アンがオズボーンと結婚したことで、ウィリアムは家に帰ることが嫌になります。しかも自分で小遣いを稼ぐようになったため、次第に母との距離が広がっていきました。
アンの妊娠と不穏な手紙
アンは、ウィリアムとオズボーンの関係を修復しようと努力しましたが、オズボーンに弱くバランスを取ることができません。ウィリアムの心配通り、オズボーンはアンの財産に頼りきったヒモ状態。やがて妊娠が発覚しますが、医師はアンに対し「もうひとり産めば命が危険になる」と警告します。最悪なタイミングで不穏な手紙が届きます。「オズボーンが浮気をしている」。最初は気に留めなかったものの、オズボーンの不審な行動に疑念が募り、浮気調査を探偵に依頼します。
オズボーンの企み
オズボーンは病院建設のビジネスに目をつけ、業者の選定入札のために50万ドルをアンに要求します。アンにそんな大金は残っていないため、オズボーンはウィリアムの遺産に狙いを定めます。アンはウィリアムが相続したリチャードの遺産の元金には手を出してはいなかったものの、利子による利益を享受していました。法廷相続人であるアンと、ウィリアムが将来引き継ぐケイン・アボット・キャボット銀行の頭取であるアラン・ロイド、さらにアンの親友ミリー・プレストンのうち2人が了承すれば貸し出せるという条件を、オズボーンは知っていました。
一方、ウィリアムは弁護士のトーマス・コーエンにオズボーンの調査を依頼しており、オズボーンの浮気だけでなく浮気相手の名前、さらには母の財産を狙うオズボーンの不穏な動きをも知っていました。家族の友人であるアラン・ロイドに母アンを説得してほしいと頼みます。アンはウィリアムがボストンに戻ってきたことを人づてに聞き、驚くと同時に自分に会いに来てくれないことに深いショックを受けます。病院建設の件でオズボーンが銀行に融資を求めているとアラン・ロイドから相談がありました。アンを心配するものの、アラン・ロイドは強く融資を反対することができませんでした。
入札失敗
ウィリアムが予告していた通り、病院の建築業者はオズボーンの会社を選ばなかったとの連絡が入ります。
アンの悲劇
病院建築業者の正式発表の日、アンは探偵から最終報告を受け取りに行きます。最初はオズボーンを信用し、報告を聞かないと決心していたものの、不安が募り、報告を確認することに。そこで、オズボーンが友人ミリー・プレストンと浮気をしていたこと、さらにはオズボーンというのは偽名で、戦死者の戸籍を盗み、ハーバード大の経歴も虚偽、結婚詐欺だけでなく前科があることを隠していた事実が明らかになります。
その結果、アンは産気づきます。しかし、生きる気力を完全に失い、帰らぬ人となってしまい、赤ちゃんも誕生しませんでした。このシーンは「スター・ウォーズ:エピソードⅢ」のナタリー・ポートマンを思い出させます。
病院に駆けつけるウィリアムでしたが、手遅れでした。疎遠だったものの、母の死を受け入れることができません。ミリー・プレストンの家から戻ってきた何も知らないオズボーン。ウィリアムは「二度と家に近づくな」と警告し、関係を断ち切ります。結局、遺産はすべてウィリアムのものとなります。そもそも、アンとオズボーンに子供ができてもウィリアムの遺産の額は変わらないという事実を、オズボーンは理解していませんでした。それを知らず、アンに無理をさせ、死を招いたのです。
ウィリアム|新たな人生へ
アラン・ロイドは、母アンの死に対する自らの責任を痛感し、説得すらできなかった自分を責めた末、頭取を辞することを決意します。しかし、ウィリアムから、引き続き頭取として会社を守ってほしいと頼まれ、2人は互いに信頼し合う仲間へと変わっていきます。父と母の死という大きな試練を乗り越えたウィリアムは、寄宿学校で優秀な成績を収め、親友マシューとともにハーバード大学への入学が決まります。お祝いとして、ニューヨークのプラザホテルでケイン家とレスター家が合同のお祝い会を開きます。
そこでウィリアムは、美しい銀の腕輪を身につけたウェイターに目を奪われ、その腕輪には読めない文字が刻まれていることに気づきます。「アベル・ロスノフスキ」との初めてのすれ違いです。
以上、ウィリアム・ケインの生い立ちから成長、そして彼が直面する数々の試練や挑戦をお伝えしました。
それぞれ 1,000円ほどです。とにかくおもしろいので、ぜひ読んでほしいです。
エンタメ作品に関してはこちらで紹介しています。ぜひご覧ください。
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